マネー研究所

わたしの投資論

投資銀行OBでも投資は簡単じゃない(保田隆明)

2014/8/21

 昭和女子大准教授の保田隆明氏は、投資銀行で企業の事業再編やM&Aのアドバイスをしてきた経験を持つ。ファイナンスの基本を分かりやすく伝える著書もある保田氏が、いざ自分で投資をしてみて気づいたこととは。

 投資銀行に就職したのは、株の世界に興味があったからではないんです。大学生のころにバブルが崩壊して世の中が暗くなっていたので、日本経済を復活させなくてはと思っていました。そのためには、体力が弱った企業の手術が必要です。手術というのは、不採算の事業を整理してほかの企業に託し、成長しそうな新規産業を買ってくること、要するにM&A(合併・買収)ですね。そのお手伝いができるのが投資銀行だったというわけです。

■まったく違う心理状態に

保田隆明(ほうだ・たかあき)氏 1974年、兵庫県生まれ。米リーマン・ブラザーズ、UBS証券を経て独立。2014年から昭和女子大准教授

 職務上の制約で個人的な株の売買はできなかったので、初めて自分で株を買ったのは金融業界を離れたあとです。投資銀行で働いていたなら当然うまくいくだろうと思われるかもしれませんが、これがジョークみたいな話で、仕事で株価を見るのと自分の資産を運用するのでは心理状態が全然違うんですよ。

 投資銀行での仕事は、株価が割安なまま放置されている企業に戦略の転換を提案することだったので、株価を判断するときには収益性や成長性をしっかり分析していました。ところが、いざ自分で投資してみると山師みたいになっていました(笑)。当時はITバブル全盛で、ようやく株を買える立場になった解放感もあって、ついつい自分も一山当てたいと思ってしまったんです。狙いは新興株。分析できるデータが少ないので、せいぜい株価のトレンドを見るくらいで名前を知っている企業にどんと「張る」ことになります。その上、うまくいけばリターンが2倍、3倍になるからと、信用取引もしていました。

 そこで起きたのが2006年のライブドア・ショックです。いざ株価の急落に遭遇すると、非合理的な判断をしてしまうんだなと痛感しましたね。まず、損切りどころか、根拠もなく「また上がるはずだ」と考えて買い増しました。一方で、信用取引の追い証(追加の委託保証金)が発生するのは避けなくてはいけないとも思っていて、いろいろ考えているうちににっちもさっちもいかなくなり……。これではいけないと、そこですっぱり全部売りました。それ以来、株には手を出していません。

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