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ペルーで猛威、コロナのラムダ株 今わかっていること

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ナショナルジオグラフィック日本版

新型コロナウイルスのラムダ株は、過去9カ月間、大部分が見逃されてきた。しかし現在、ペルーでは、新たに感染する新型コロナのほぼ全てがラムダ株になっている。ペルーは新型コロナによる人口あたりの死者数が世界最悪で、すでに人口の約0.54%が新型コロナで死亡した。

ラムダ株(C.37系統)は2020年8月にペルーで初めて確認され、ラテンアメリカを中心とする29カ国に広がっている(編注:厚生労働相は21年8月6日、ラムダ株を国内で確認したと明らかにした)。ペルーでは新型コロナの新規感染におけるラムダ株の割合が、20年12月には0.5%未満だった。ペルーのウガルテ保健相は、21年3月末から4月にかけて感染の「第2波」が起きたことについて、ラムダ株が原因だった可能性が高いと記者会見で述べている。

隣国のチリでは、ウイルス情報のデータベースであるGISAIDのデータによると、過去60日間に調べられた症例の25%がラムダ株によるものだった。チリでは人口の58.6%が2回のワクチン接種を終え、さらに10%が1回目の接種を済ませているにもかかわらず、多数の感染者が出ていた。主に中国科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製の新型コロナワクチン「コロナバック」が接種されているが、ワクチンの効果が十分でないことも原因の一つかもしれない。チリ大学の研究によると、コロナバックの1回目の接種後の効果はわずか3%だったが、2回接種した場合は56.5%に上昇したという。

「チリの感染率が高い理由はまだわかりませんが、いくつかの要因が考えられます。チリはワクチン接種率が高く、規制の緩和が少し早すぎたため、感染者が増えたのではないでしょうか」とペルー、ペルアナ・カジェタノ・エレディア大学の微生物学者パブロ・ツカヤマ氏は述べる。氏は21年1~3月に寄託されたサンプルの塩基配列を調べていたとき、チリでのラムダ株の広がりに最初に気づいた。「とはいえ、現在主に流行しているガンマ株(ブラジルで初確認)とラムダ株に、ワクチンによる保護効果を低下させる免疫逃避の能力がある可能性もあります」

免疫を逃れる可能性があることから、世界保健機関(WHO)は6月14日にラムダ株を「注目すべき変異株(VOI)」に指定した。VOIに指定されるのは、ウイルス遺伝子の大きな変化によって、広まりやすさ(伝ぱ性)、重症度、免疫逃避、診断、治療に影響を与える可能性があり、地域社会で急速に広がっている変異株だ。

ラテンアメリカの人口は世界の8%にすぎないが、21年6月までの累計で、新型コロナ感染者数は全世界の20%以上、死者数は32%を占めている。現時点での死者数の割合でも、ラテンアメリカは世界の半分を超えているものの、ワクチン接種を完全に終えたのは10人に1人だけだ。ホンジュラスやグアテマラなどでは、接種完了率は1%にも満たない。

「ラテンアメリカは、今後数週間で再び危機的な状況に陥ると思います」と、コロンビア感染症学会の副会長を務める疫学者のアルフォンソ・ロドリゲス・モラレス氏は言う。各国はワクチン接種を進めているものの、一部の国ではまだ人口の5~10%程度しか接種が完了しておらず「非常に危機的」な状況なのだ。

ラムダ株はどこが違う?

ラムダ株の検出数が何カ月も少ないままだったのは、ペルー国立衛生研究所の調査能力が限られていたせいで、ガンマ株と間違えられることが多かったからだ。

「この地域ではゲノム調査を実施する能力が非常に限られているため、ラムダ株の割合を正確に推定することは困難です。また、どの変異株が優勢になるかを予測するのは容易ではありません。ですから、欧米だけでなくあらゆる地域でウイルスの塩基配列を調べる能力を高めることが重要なのです」とツカヤマ氏は言う。

ラムダ株と他の変異株では、ウイルスのスパイクたんぱく質の変わり方が大きく違っている。スパイクたんぱく質の一端(N末端ドメイン:NTD)にアミノ酸7つの長い欠失があるなど、14カ所に変異がある。また、スパイクたんぱく質の遺伝子のすぐ上流にあり、大きなたんぱく質を作るORF1ab遺伝子にも、「懸念される変異株(VOC)」であるアルファ株(英国で初報告)、ベータ株(南アフリカで初報告)、ガンマ株と同様の変異がある。

ORF1abたんぱく質の一部はウイルスの複製やヒトの免疫反応の抑制を助ける。その重要性から、科学者たちはすでにORF1abたんぱく質を標的とする抗ウイルス療法の開発に取りかかっている。

スパイクたんぱく質のNTDで欠失している7つのアミノ酸は、体内の強力な抗体の多くが攻撃する「NTDスーパーサイト」に属している。アルファ株、ベータ株、ガンマ株を含む多くの変異株がこの領域に変異をもつことは、この領域がウイルスの進化にとって重要であることを示唆している。

「NTDは、ウイルスにとって不可欠な領域というわけではないため、ここが変異してもウイルスは生き続け、既存の抗体反応を回避できるのです」とシンガポール国立大学の感染症学者シーメイ・ロック氏は説明する。

体内で自然に作られる抗NTD抗体は、ウイルスが細胞表面に結合した後も中に侵入するのを阻止する可能性があるため、ワクチン開発者に注目されている。

スパイクたんぱく質の452番目のアミノ酸

ラムダ株の変異の中で特徴的なのは、スパイクたんぱく質の452番目のアミノ酸の変異だ。このアミノ酸は、デルタ株(インドで初確認)、デルタ株がさらに変異したデルタプラス株、イプシロン株(米国で初報告)、カッパ株(インドで初報告)など、他の広まりやすい変異株でも変化している。ラムダ株のL452Q変異(452番目のロイシンがグルタミンに置き換わったもの)は、これまで見られなかった変異だが、科学者たちは、452番目のアミノ酸の変異は新型コロナウイルスが細胞に感染する能力を高めると予測している。

新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質は、ヒトの肺などの細胞にあるACE2受容体たんぱく質に結合して体内に侵入するが、452番目のアミノ酸は、両たんぱく質が直接相互作用する部位にある。「452番目のアミノ酸は、多くの中和抗体によって認識されます。この部位に変異があると、中和抗体が結合しにくくなり、もともとワクチンの効果が出にくい人では保護効果が下がる可能性があります」と、米ワシントン大学医科大学院の免疫学者マイケル・ダイアモンド氏は説明する。

ワシントン大学の微生物学者エフゲニー・ソクレンコ氏は、452番目のたった1つのアミノ酸の変異が、最近の新型コロナ変異株の急激な拡大を引き起こした可能性があることを、査読前の論文を公開するサーバー「bioRxiv」に3月11日付で発表していた。L452R(ロイシンがアルギニンに置き換わったもの)という似た変異をもつイプシロン株も、感染力や増殖能力が高く、多くの抗体の中和活性を低下させる。

米ニューヨーク大学グロスマン医科大学院の微生物学者ナサニエル・ランドー氏は、実験室で作製したラムダ株に似たウイルスを用い、L452Q変異があるだけでウイルスの感染力が2倍になることを示した。ラムダ株がもつその他の変異は、感染力に大きな影響は与えなかったという。論文は「bioRxiv」に7月3日付で発表された。

7月1日付で「medRxiv」に発表された別の査読前の論文でも、ラムダ株がガンマ株やアルファ株よりも感染力が強い可能性が確認されている。

ワクチンとラムダ株についてわかっていること

現時点ではラムダ株に関する研究は非常に少ないが、予備的な研究によると、現在のワクチンはまだ有効だが、もとのウイルスに対する効果に比べるとおそらく低いだろうと示唆される。

「少なくとも米モデルナや米ファイザーのmRNAワクチンは、デルタ株と同様、ラムダ株に対しても高い効果があると考えています。たとえ一部の抗体が変異株に効かなくなっても、残りの抗体でウイルスを排除することができるでしょう」とランドー氏は請け合う。

前述の「medRxiv」の論文では、ラムダ株がコロナバックの接種でできた中和抗体から逃れられることが示されたが、論文の筆頭著者であるチリ生命医科学研究所のウイルス学者リカルド・ソト・リフォ氏は、「ラムダ株の伝ぱ性が高いという証拠も、ラムダ株はブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)しやすいという証拠も、ラムダ株に感染した人の重症化率や死亡率が高いという証拠もまだありません」とくぎを刺す。

ラテンアメリカの多くの国で使われているコロナバックは不活化ワクチンで、mRNAワクチンよりも効果が低いとされているが、2回接種すれば重症化や死亡は十分防ぐことができる。

新しい変異株に対するコロナバックの有効性には懐疑的な見方もあるものの、自分の居住地域で入手できる認可ワクチンが何であれ、誰もが接種を受けるべきだと、米科学アカデミー会員で米Virバイオテクノロジーの最高科学責任者(CSO)である免疫学者のハーバート・バージン氏は訴える。「ワクチン接種を受けなければ、ウイルスは進化します」

遠くの国でラムダ株のような新しい変異株が流行していることを心配するのは、行き過ぎのように思われるかもしれない。だが、警戒心を持ち、予防措置をとることは重要だ。「ラムダ株がデルタ株より恐ろしいわけではありませんが、どちらも広まりやすい変異株です。しかしワクチン接種を受けていれば、ほとんどの場合、予防効果はあります」とランドー氏は言う。「ワクチン接種が進んでいる地域では、これらの変異株の感染率は下がるでしょう」

(文 SANJAY MISHRA、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年7月16日付]

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