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男性育休1カ月にデメリットなし 積水ハウス仲井社長

仲井嘉浩積水ハウス社長(上)

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NIKKEI STYLE

積水ハウスは男性社員が1カ月以上の育児休業を取得することを目指し、2018年9月に「イクメン休業」制度を導入、対象社員すべてが取得しているという。制度導入の狙い、社内に生じた変化、今後の課題などについて仲井嘉浩社長に聞いた。

きっかけはスウェーデンで見た光景

白河桃子さん(以下敬称略) 「内閣府の専門調査会『選択する未来2.0』の報告書に『男性育休の義務化』の文言が明記され、政府も『男性産休』(妻の出産直後の夫を対象とした休業制度)の新設に向けて本格的に動き出すなど、男性の育児参加への追い風が強まっています」

「こういった流れが加速した背景には、企業の先行事例が増えてきたことが非常に効いていると思います。その中でも御社は、独自の『イクメン休業』制度を開始し、3歳未満のお子さんを持つ男性社員の育休取得100%目標を宣言。その目標は初年度で達成され、取得に向けて夫婦間の話し合いを促進する『家族ミーティングシート』や、業務引き継ぎをスムーズに行うための『イクメン休業取得計画書』といったツールを導入した点も、話題になりましたね」

仲井嘉浩社長(以下敬称略) 「はい。ありがたいことに世間からもご注目をいただきまして、制度スタートから1年たった19年9月時点で取得期限を迎えた対象者全員が休業取得を完了しました。休業期間は1カ月間ですが、家庭や業務の事情に応じて4分割までできる設計にしています」

白河 「住宅メーカーはお客様と接する営業職が事業を支える業態なので、男性育休導入にあたっては強い決意があったものだと想像します。『イクメン休業』を発想したきっかけは何だったのでしょうか」

仲井 「きっかけは、私が出張先のスウェーデンで見た『ある光景』です。18年6月に、投資家向けのIRミーティングのためにヨーロッパを回り、最終日にストックホルムで先進的なスマートシティーを視察したんです。スマートシティーも素晴らしかったのですが、それ以上に目を奪われたのが近隣の公園の様子で。そこには、ベビーカーを押して歩く人が何人もいたのですが、全員が男性だったんです。

日本では見たことがない光景に衝撃を受けた私は、その日の夜にスウェーデンの官僚の方々と会食した際に、昼間の驚きについて話してみました。すると、『スウェーデンでは、男性が少なくとも3カ月は育休を取るのが普通ですよ』と返されて、さらに驚きまして。帰って調べてみると、確かにそのとおりで、育休期間は16カ月まで延長でき、夫婦が交互で取得する原則になっているなど、非常に充実した制度が整っていることが分かりました。あまりに感動し、帰国後すぐに人事とダイバーシティー(多様性)の担当者に『うちでも何とかならないか』と相談しました」

まずは1カ月で始めてみよう

白河 「本当に帰国後の出社初日に動き始めたそうですね」

仲井 「はい。さっそく調べてきてくれまして、『グループ従業員約2万5000人のうち、3歳未満の子どもがいる男性社員は1500人ほどです。1500人が一気に3カ月休むと、決算が危ぶまれます』と。いきなり3カ月は難しいと分かったので『じゃあ、まずは1カ月から始めてみよう』と思い切りました」

白河 「公園でご覧になった風景がよほどのインパクトだったんですね。経営的な観点から考えることはとても重要です」

仲井 「とにかく、街中で育児を堂々としているスウェーデンの男性たちの姿がカッコよかったんですよ。刺激を受けました。『この光景を日本でも実現したい』という気持ちが湧いてきたんです」

白河 「街をつくる事業をやっていらっしゃるから、映像からインスピレーションを受けるのでしょうね。それも、投資家向けのミーティングの後だったという点が象徴的だと感じます。ヨーロッパの投資家は特にESG(環境・社会・企業統治)投資に敏感ですし、ダイバーシティーやワークライフバランスに対する仲井社長の課題意識も刺激されていたのではないでしょうか」

仲井 「たしかに、ヨーロッパの中でもスウェーデンの会議ではESG投資に対する議論に多くの時間を割いた記憶がありますね。当社は環境面ではゼロエネルギー住宅を世界一売っているという実績があるのですが、ダイバーシティーや女性活躍の面では『グローバル基準と比較するとまだまだですね』とご指摘を受けることも多かったので、余計に『イクメン』がまぶしく映ったのかもしれません」

白河 「御社が本社を置く関西は、首都圏と比べて共働き率も低く、男性の育児参加への理解や意識浸透はまだまだこれからだとよく聞きます。その中で非常に先進的な取り組みに舵(かじ)を切られましたね。しかも、決定から実行までのスピードがとても速かった」

仲井 「衝撃の光景を見た出張が18年6月でしたが、制度設立のリリースは7月、運用を始めたのは9月。その間、3カ月でしたね」

白河 「素晴らしいですね。メディアで取り上げられるほか、政府の委員会にも招へいされていましたよね。100%の目標も達成され、非常にうまくいっている事例のように見えますが、制度化する当初は社内に反対意見はあったのでしょうか」

仲井 「幹部の1人、2人から反対意見は出ましたよ。『そんなぬるい制度をつくってどうするんだ』と。しかし、大多数は賛成でしたので、経営判断として決議しました」

休業計画には奥さんの署名が必要

白河 「運用面で取得しやすくなるための工夫が重要になります。御社の場合は、まず、休業期間の1カ月を4分割までOKと柔軟に設定した点が工夫でしょうか」

仲井 「そうですね。私がどうしてもこだわりたかったのは100%取得で、そのための運用方法は優秀な現場の担当者に考えてもらいました。4分割でやってみるのは、当社としても実験なんです。ひと口に育休といっても、奥さんが働いているかどうか、近隣に頼れるご両親や親族がいるのか、きょうだいはいるのかといった様々なケースによって取り方のニーズは違うはずです。どのような取得方法だと浸透しやすいのかを測る実験でした。結果としては、1カ月の休業をまとめて一度に取ったのは25%程度で、残りの75%は分割を選んでいます。一番多かったのは4分割でした」

白河 「取りやすさにこだわったのですね。そして、もう一点、『家族ミーティングシート』など書類の整備も、取得を強力に後押しするポイントになっています。政府も公務員の育休推進をする上で参考にしているようです」

仲井 「奥さんの署名を求めるというのがミソです。要は、パートナーとちゃんと話し合っていただきたいという思いです。しかしながら、会社がそんな心配をしなくても、最近の若い世代は普段からしっかり夫婦で話し合いをしているようですね。『奥さんと話すのを嫌がる声が出てくるかもしれないな』というのは杞憂(きゆう)で、違和感なく受け止めてくれた社員が多かった。私たちの世代とは違うなぁと感心しました」

白河 「むしろ仕事の延長のような感覚で書き込めるシートが介在するほうがやりやすいのかもしれないですね。実際にイクメン休業を取得した社員の方々からはどんな反応が上がっていますか」

仲井 「育休を取得した社員にはアンケートを実施していまして、その回答には全部目を通しています。私が一番うれしかったのは、『部内の女性社員が産育休を取るときに、快く送り出せるようになった』という声があったことです。自分が実際に育休を体験し、当事者になったことでダイバーシティーの感覚を磨くきっかけになるのだと、男性育休の意義を再認識できました」

顧客からも好意的な反応

白河 「おっしゃるとおり、経験するかしないかで周囲への働きかけも大きく変わってくるのでしょうね。逆にデメリットはありましたか」

仲井 「デメリットは特に見当たりませんね。課題は見つけられましたが」

白河 「どういう課題でしょうか」

仲井 「やはり育休に入る前の業務の棚卸しと引き継ぎがしっかりできる人とできない人の差が見えてきました。引き継ぎが不十分なままだと、せっかく休みに入っても会社からの連絡が途切れず、ご家族からも不満が出てしまう。対策としては、事前に上司との面談に使える『イクメン休業取得計画書』のフォーマットを作成しています」

白河 「計画書を埋める作業を通じて、上司との会話が増える効果もあったそうですね」

仲井 「そこが一番の狙いでした。育休に入るにあたって、今取り組んでいる業務を棚卸しした上で、『この期間に休みたい』『この週末はイベントがあるから、もし可能なら数日ずらせない?』といった調整や交渉が生まれる。コミュニケーション量が増えることが、後々にも効いてくるメリットだと感じていました」

白河 「お客さんからの反応はいかがですか。おそらく、ほとんどの業界の経営者が気になるポイントが『顧客から不満が出るのでは?』という点だと思うのですが」

仲井 「それが意外なほどに、非常に好意的に応援くださるお客様が多くいらっしゃいました。新築の住宅をお求めになるお客様がちょうど子育て世代ということもあるのかもしれません。『図面の打ち合わせは2週間後でも間に合うでしょう。それで大丈夫だから、しっかり育休を取ってきてくださいね』と送り出してくださった。『私生活のためにお客様に予定の変更をお願いするのはご迷惑では』と気をもんでいた社員もいたようですが、蓋を開けてみると不満どころか応援してくれる。ありがたいですね」

(来週公開の後編では新卒採用への影響、有休の取得促進など働き方の見直し、女性活躍に向けての取り組みなどを仲井社長に引き続きお聞きします。)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大特任教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:稲垣純也)

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