おしゃれ動画のプロが新入生に贈る「変身の極意」
大学デビュー(下)
大学入学を機に「なりたい自分」「見せたい自分」にイメチェンする「大学デビュー」に極意はあるのか。現役大学生の先輩たちの体験談を聞くと、化粧や服装は「まず動画を参考にした」という声が少なくなかった。ならば、その道のプロにアドバイスしてもらおう。美容系ユーチューバーの第一人者、佐々木あさひさんと、女性向け動画配信サイト、C Channelでディレクターを務める奈良理緒さんに聞いた。
顔の印象決めるのは眉の形
佐々木あさひ さん
私がユーチューブを始めたのは、大学生のみなさんの年齢に近い20代前半。そのころの私は、おしゃれにまったく自信がありませんでした。でも、当時つきあっていた彼に、もっとすてきな自分を見せたかった。それで自分なりに納得できた表情のメーク術などの動画を公開し始めたんです。すると、コメント欄に「このメーク法、いいですね!」「すごくかわいい」などと、肯定的なコメントをいただけた。驚きました。あ、私はこれでいいんだって、初めて思えました。おしゃれをあきらめなくてよかったな、って。
大学に入ったらイメチェンしたいと思っている若い人に意識してほしいことがあるとしたら、まず「形と色」ですね。形は髪形とか眉の形。色は着ている服やリップ、アイシャドー、ネイルなどの色彩です。とくに色は「変化」「違い」をすごくはっきりと出せるでしょう? いつもとは違う色のリップを使ったり、ネイルを変えたりしてみるだけで、気持ちが盛り上がります。スタートは自分の気分が一番上がりそうな色がいいかな。
形がとても大事だと思うのが眉です。顔の印象が大きく左右されるので、アイラインはやらなくても、眉は意識したいですね。ただ、似合う眉の形がトレンドと一致しているかどうかわかりません。例えば韓国発の「平行眉」は根強い人気がありますが、丸顔だと横幅が余計に強調されてしまう。似合う眉の形は人それぞれなので、プロに一度教えてもらうといいかもしれない。美容院に行ったときに、眉のカットをお願いしてみるのもおすすめです。
似合う色がわからないという人も多いかもしれないけれど、個人的な意見では、似合わない色なんてない。10~20代の肌って、まるで真っ白なキャンバスと同じなんです。どんな色も映えるので、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。
メークするときは呼吸を忘れないでくださいね。細かい作業の連続なので、呼吸が止まりがちなんです。そうすると手に無駄な力が入って、細かいところで色がつきすぎたり、はみ出したりしてしまうことがよくあるんです。だから私は「シュッシュッ」って声に出しながらメークするようにしています。
イメチェンしたいと考えたとき、だれだって「失敗したらどうしよう?」って心配になりますよね。その心配をやわらげてくれるのは「おうちファッションショー」です。新しいリップを買ったなら、リップだけ試し塗りするんじゃなくて、きちんとお化粧して、洋服も組み合わせをいろいろ変えて、鏡の前に立ってみるんです。髪形もきちんとして、靴も履いてみるのがおすすめです。
いったんイメチェンに踏み出したら、もう一つ大切なことがあります。それは、自分自身が不安にならないということ。新しいリップ、初めて着る洋服で出かけるとき、似合っているか気になって、何度も触ったり隠したりした経験はありませんか? 不安な思いって、気づかないうちに外に伝わってしまうものなんですよね。
じゃあどうするか。自分が鏡の中の新しい自分に慣れることかな。こういう自分もいいな、って。動画撮影してみるのもいいと思います。私はユーチューブに動画をアップしているので、自分のしぐさや表情が、横からはこう見える、というところまで把握しています。意外にこの表情がかわいいなとか、気づくことがあるはずです。
「大学デビュー」という言葉には、少しネガティブな響きが含まれる気がしませんか。でもね、私は素晴らしいことだと思っています。自分に関心をもって、ワクワクして一歩踏み出しているということだから。いろんなことに興味をもって、どんどん新しい自分に気づいてほしいなと思っています。
おしゃれの盲点は髪の毛先
奈良 理緒 さん
実は私自身も大学デビューしました。ところが、私の大学には雑誌の読者モデルとかグラビアに出ているような子が何人もいたんです。みんなきれいで「私どうしよう」ってほんと焦りました。高校時代は制服のおかげで雰囲気を作れていたんだなって。だから、自分が大学デビューしたことって知られたくなくて、いろいろなファッションを試していることは周りにいわず、ひたすら平常心で振る舞っていました。
大学生になったんだから、高校のような細かい校則もないし、メークにちゃんと挑戦したくなる気持ち、わかります。大学時代にはぜひいろいろ試してみて、自分に合うものを選んでほしいです。社会人になると、仕事の内容や職場のルールなどでおしゃれにも制限がかかることが多くなりますから、学生の間に自分のスタイルをみつけられたらいいですね。
今のファッションのトレンドは、全般にカジュアルだなと思います。特に韓国発のスタイルが人気を集めていますね。ゆったりとしたトップスに、ごついデザインのスニーカーを合わせるスタイルが多い。ボーイッシュかつ顔が小さく見えるんですよ。メークは長いこと韓国のスタイルが人気を集めていましたが、ここにきて中国風メークの「チャイボーグ」が注目されるようになっています。
そうしたトレンドはありますが、やっぱり大切なのは自分に似合うかどうか、ですよね。おしゃれ上手な先輩や友達から直接聞いてしまうのが本当はいいんですが、なかなか相談できない女の子が多いみたいです。その証拠に、C Channelの動画はリツイートがあまり多くありません。おしゃれ初心者の子たちは、自分たちがファッションやメークを頑張っていることを周囲の友達に知られたくないためらしいのです。
それならば、プロに聞いてみてはいかがでしょう。メークならぜひ化粧品売り場のカウンターに行ってみてください。「いろいろ勧められて、予算オーバーしそう」「気に入らなくて買わずに帰ってきても大丈夫?」と心配になると思いますが、全く心配いりません。買えないアイテムは断ってしまっていいんですよ。
なぜ化粧品売り場のカウンターに行ったらいいのかというと、販売員の方は似合う色をさがしてほめてくれます。やっぱりね、おしゃれもメークもほめられないと「私、これでいいんだ」って思えないでしょう?
もう一つ、おしゃれの意外な盲点をお伝えします。髪です。どれだけおしゃれな洋服を着て、メークが上手にできていても、髪の毛先がぱさぱさだと、雰囲気が台なしです。化粧品も服も、最近は手ごろな価格でいいものがたくさんありますから、それよりも髪にお金をかけるといいかもしれません。
大学生になると、とりあえず髪をカラーリングしたいという人も多いと思いますが、髪は色よりも、うるおいと曲線。ストレートでもちゃんと毛先がまとまっているか、気にかけてみてください。ほんとうにあなたの雰囲気を完成させるのは、実は髪形かもしれません。
(取材・構成 藤原仁美、安田亜紀代)
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