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画像はイメージ =PIXTA

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世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。8人目は、日本の高度経済成長を分析した教材を執筆したルイス・ウェルズ名誉教授だ。

(下)過去の成功法通用しない ハーバードが見る日本の課題 >>

佐藤 日本の高度経済成長を分析した「日本:奇跡の年月(Japan: The Miracle Years)」は、ハーバードビジネススクールで最も長く教えられている教材の一つだとうかがいました。そもそもこの教材を執筆した動機は何ですか。

国家にも戦略があるという前提で各国経済を分析

ウェルズ この教材はハーバードビジネススクールのブルース・スコット名誉教授が1970年代に書いた複数の教材を2001年に私がまとめたものです。スコット名誉教授は「国家にも企業と同じように戦略があるはずだ」という前提で、「戦略」という視点から各国の経済を分析し、日本の政治・経済の歴史について合計7つの教材を書いていました。

ハーバードビジネススクール名誉教授 ルイス・ウェルズ氏

ハーバードビジネススクール名誉教授 ルイス・ウェルズ氏

これらの教材は70年代からずっと「ビジネス・政府・国際経済」というMBAプログラムの必修授業で教えられてきましたが、学生から「ケースの数が多すぎる」との意見が相次いでいました。そこで内容を高度経済成長にしぼり、一部情報をアップデートした上で、01年に「日本:奇跡の年月」を出版しました。

佐藤 なぜ「日本:奇跡の年月」というタイトルをつけたのですか。

ウェルズ 日本の高度経済成長は本当に奇跡だったのか、それとも当然のことだったのか、学生に議論してもらいたいと思いました。

日本は明治時代、近代化に成功し、その後、めざましい経済成長を遂げ、戦前にはすでに工業国となっていました。戦後、日本は「東洋の奇跡」といわれる高度経済成長を遂げますが、この成長にどれだけ政府の政策が貢献していたのか。戦争で一時中断されたとはいえ、政府の復興政策などなくとも、日本経済は順調に成長していったのではないか。こうしたことを議論するために、あえて「奇跡」という言葉を使ったのです。

佐藤 教材を販売しているハーバードビジネススクールパブリッシングのウェブサイトでこの教材は現在もベストセラーとなっています。なぜこれほど長い間、教員や学生の間で人気を集めてきたと思いますか。

ウェルズ その理由は3つあると思います。1つめは、なぜ日本が戦後、これほどの高度経済成長を遂げることができたのか、その要因を誰もが知りたいと思っていること。2つめは、「誰が何をすれば国は発展するのか」という本質的、かつ、普遍的な問題を学ぶことができること。3つめは、「本当に奇跡だったのか」というテーマが刺激的で、議論が盛り上がることです。

経済成長と政府の役割を深く考える

発展途上国の学生は特にこの授業に興味を持ちます。「自国も日本のように成長するにはどうしたらよいのか」と深く考えるきっかけになるからです。同じような政策はとれないとしても、発展途上国が日本の経済成長から学べることは多いのです。欧米人の学生は、経済成長における政府の役割が自国とかなり違っていることに特に関心を持ちます。

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