短時間でも会社は変わる、再生で実感 秋池玲子さん
ボストン・コンサルティング・グループ(折れないキャリア)
外資系コンサルティング会社で数多くの企業の事業再生や組織再編に取り組んできた。社外では経済同友会の副代表幹事や財務省参与を務め、政府の委員も歴任する。キャリアを支えてきたのは「相手に喜んでほしい」という仕事への思いだ。
早大大学院でバイオを学んだ後、キリンビールに就職。技術者として入社したが、研究職ではなく「技術に関する『経営』ができる仕事を希望した」。市場が認めなければどんなに良い研究でも企業では採用されない。一方で市場が求めるものだけではイノベーションは生まれない。技術をどう生かしていくか、経営の視点で考えたいと思った。
製造部の企画担当として設備投資計画や技術系人材の育成に携わるうち「もっと経営の勉強がしたい」との思いが芽生え、米マサチューセッツ工科大学へ留学。経営学修士号(MBA)を得てマッキンゼー・アンド・カンパニーに移った。その後は一貫して経営のプロとして企業を支援してきた。
「短い間でも、変えられる」。大きな経験となったのが、産業再生機構時代に担当した熊本県の九州産業交通の案件だ。機構が支援する1号案件として注目を集め、その後の地方バス会社の再生モデルとなった。
地方のバス会社の多くは地域の生活インフラであるため、過疎化などで業績悪化に苦しみつつも撤退できず塩漬けとなっていた。周囲からは「うまくいくはずがない」と言われた。逆に「絶対にできる」と思った。地方のバス会社は、地域の存続に不可欠な存在だからだ。
各部門の社員とは毎週1時間以上、議論を重ねた。赤字路線の運行量の見直しなどに取り組み、約半年で成果が出た。「お互いの考えがわからなかったところから、時間をかけた議論でみんなが納得できる形に落とし込むことができた」と振り返る。ボストン・コンサルティング・グループに移籍後も、産業再生機構での経験は生きている。
自分が顧客や同僚の役に立てることを実感すれば、大きな課題やハードな仕事にやりがいと手応えを得られる。後輩たちには「小さいことでも、積み重ねるなかで喜びは感じられる。意義あるものに取り組み、自分が成長する面白さを感じてほしい」と助言している。(聞き手は佐藤史佳)
[日本経済新聞朝刊2019年5月27日付]
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