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銀座で134年続くネクタイ店 常連客はきら星のごとく

田屋社長 梶原伸悟氏(上)

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NIKKEI STYLE

老舗の多い東京・銀座で、洋品店として最も古い歴史を持つのが「田屋」だ。銀座の中心、4丁目交差点にほど近い本店で、オリジナルデザインの高級ネクタイを取り扱っている。近代日本を代表する洋画家、黒田清輝や作家の永井荷風、吉田茂首相らも顧客だった田屋の歴史は、日本の近現代史と重なってみえる。5代目、梶原伸悟社長に聞いた。

(下)流行を追わない銀座のネクタイ 3代続く顧客に磨かれ >>




――田屋は1905年(明治38年)に現在の銀座4丁目で創業してから114年経(た)ちましたが、前史があります。もともとのスタートは134年前の1885年(明治18年)に銀座1丁目に開いた西洋小間物商でした。

「創業者の田屋常吉は山梨県の出身です。横浜港に外国船が寄港すると、シャツやステッキ、帽子、化粧品、日用品の類までを仕入れていたといいます。店内のショーケースも輸入した英国製でした」

――当時は「唐物屋(とうぶつや)」と呼ばれていました。

「服装の洋風化をいち早く取り入れた富裕層だけでなく、在留外国人もよく来店していたようです。当時の商品カタログは英文で、ページを切り離して、そのまま絵はがきに使えるという凝ったものでした。当時の銀座には自転車が3台しかなく、そのうちの1台を常吉が所有していたそうです」

「日露戦争が終わった1905年(明治38年)に義弟の梶原重蔵が銀座4丁目に支店を開きました。これが現在の店舗となりました。今年で114年間、同じ場所で営業を続けていることになります。当時は『ネクタイ』という呼称はまだなく『襟飾(えりかざり)』と呼んでいました」

――明治・大正期に、銀座は大衆消費文化の中心として大きく成長しました。この時代に足しげく通った顧客のひとりに近代画壇の巨人、黒田清輝がいました。

「1914年(大正3年)9月24日の黒田画伯の日記には『新橋ニテ人力ヲ雇ヒ銀座田屋ニ寄リ買物ヲナシ上野ノ学校ヘ赴ク』と記されています。3日後の27日にも『先ヅ国民美術ノ事務所ニ寄リ銀座田屋ヘ回リ帽子ヲ購ヒ新橋駅ニ到ル』とあり、贔屓(ひいき)にしていただいていました」

――1923年(大正12年)9月の関東大震災で店舗を焼失したものの、11月には4丁目店の営業を再開したと社史にあります。その直後に文豪、永井荷風が買い物に訪れています。

「12月14日の日記に『夜お栄を伴い銀座を歩み田屋支店にて帽子を購ふ。金弐拾七円。但し五分引の由。お栄は手巾六枚を買ふ。金八円なり」とあります。昭和期の作家では、菊池寛がネクタイをまとめ買いしていたそうです。映画監督の小津安二郎、演劇評論家で演出家の武智鉄二も来店していたと聞いています」

「吉田茂首相はシルク製の肌着を注文されていました。もっとも首相本人の来店はなく、秘書の方がみえていたようです。歌舞伎座が近くにあるためか、17代目中村勘三郎をはじめ歌舞伎界の方々からも多くの注文を受けていました」

――輸入品だけでなく、現在のような独自のネクタイを扱うようになったのはいつごろからですか。

「1932年(昭和7年)に店主となった養子で常吉に女婿でもあった市太郎のころです。旧制第一高校、東京帝国大学卒という経歴で、もともとは文学者になりたかったようです。洋書を参考にしてデザインを練り、京都の機屋を往復しました。今でいうOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けたのです。30年代後半には、ネクタイは帽子と並ぶ主力商品になりました」

「太平洋戦争中も配給キップ制のもとで、シャツや下着などとともにネクタイを売っていました。1944年(昭和19年)12月にはネクタイ販売が禁止となりましたが終戦を経て、戦後復興期からの主力はネクタイです。現在まで常に100柄以上をそろえています」

――銀座4丁目に本店を構えるだけあって建築の意匠にも凝っていますね。

「1966年(昭和41年)に隣接する銀座三越と共同で再開発しました。田屋の部分は外装を漆仕上げにしました。商店建築では初めてだそうです。3階より上は三越さんの店舗という変則的な設計となりました」

「2010年(平成22年)の改装時には雑誌で公開コンペを実施しました。改装後は若者や女性など顧客層が広がりました」

――ネクタイについては現在、自社工場で手がけています。

「1989年(平成元年)、山形県米沢市で織物工場を設けました。デザインから生産、販売までを一貫して手掛けているからこそ、顧客のニーズを直接把握して、スピーディーな商品企画に反映することができます」

「米沢市は江戸時代から染織の技術が蓄積されており、熟練した職人も多い地域です。約1年かけて生産技術を確立して、高密度なシルク生地を製作できるようになりました。通常のネクタイ生地は表面に5色が3層になるように編み上げますが、米沢工場では12色、6層の多色織りを可能にしました。表も裏も見えない部分も織り込んでいます」

――ネクタイの色に深みが出るのは分かりますが、生地が厚くなって絞めにくくなりませんか。

「1寸(約3.03センチメートル)間に700本以上を打ち込める極細糸を使用しています。素晴らしい風合いと締め心地を両立していると自負しています」

――最近のインバウンド(訪日外国人)需要増大の影響はいかがですか。

「事前にガイドブックで調べてからではなく、ネクタイ店と知らずに、店構えを見てふらりと立ち寄られる中国人客が多いです。無地やレジメンタルといった一般的な柄よりも銀座通りなどをデザインしたオリジナルタイが人気です。先日も1回で50万円ほど購入された中国人客がいました」

(聞き手は松本治人)

(下)流行を追わない銀座のネクタイ 3代続く顧客に磨かれ >>

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