右半身がオス、左半身がメスの鳥を目撃 なぜ?
米メジャーリーグのセントルイス・カージナルスや、NFLのアリゾナ・カージナルスのように、米国では球団の名前になるほど親しまれている鳥がショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥)だ。今回、右半身がオス、左半身がメスというショウジョウコウカンチョウが撮影された。さっそく動画でご紹介しよう。
ペンシルベニア州エリー在住のコールドウェル夫妻は、25年前から裏庭に鳥の餌台を置いて観察している。それでも、体の右半分が真紅で、左半分が灰褐色のショウジョウコウカンチョウを目撃したのは初めてだ。
ショウジョウコウカンチョウは、オスが赤い色で、メスは褐色だ。だからこの鳥は、右半身がオスで左半身がメスということになる。このように、オスとメスの特徴を両方あわせもつことを、専門的には雌雄モザイクという。米コーネル大学鳥類学研究所の博士研究員であるダニエル・フーパー氏は、メールでの問い合わせに対し、「本物の雌雄キメラです」と答えた(キメラは2種類の異なる遺伝情報の細胞をあわせもつ生物)。
雌雄モザイクは鳥類学者の間では「ハーフサイダー」として知られ、珍しいが、ほとんどいないというほどでもない。おそらく雌雄モザイクはあらゆる種の鳥で起こるが、成鳥のオスとメスの外見が大きく異なる「性的二形」の種でしか気づかれないのだろう、とフーパー氏は説明する。「性的二形の鳥のなかでも、ショウジョウコウカンチョウは北米の人々に広く親しまれています。特に深紅のオスはよく目立つので、変わった個体は一般の人に気づかれやすいのです」
フーパー氏によると、鳥の性決定のしくみは哺乳類とは少し違っているという。哺乳類の性染色体にはXとYの2種類があり、オスはX染色体とY染色体を細胞核にそれぞれ1つずつもち(XY)、メスはX染色体を2つもっている(XX)。
一方、鳥の性染色体はZとWの2種類で、オスはZ染色体を2つもち(ZZ)、メスはZ染色体とW染色体を1つずつもっている(ZW)。そして、精子や卵子などの生殖細胞は、通常はどちらかの性染色体を1つしかもたないため、オスの精子はZ染色体だけだが、メスの卵子にはZ染色体をもつものとW染色体をもつものがある。
今回目撃されたショウジョウコウカンチョウのような鳥の雌雄モザイクは、何らかの理由により、ZとWという2つの染色体をもった卵子が、2個の精子によって同時に受精したときに生じると考えられている。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年2月4日付記事を再構成]
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