写真賞グランプリ ミャンマーに残るロヒンギャの今
日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2018
「世界への発信を目指す写真家」の発掘を目的に創設された「日経ナショナル ジオグラフィック写真賞」。第7回の受賞作が発表された。
応募者254人、合計514点(単写真370点、組写真144点)の作品の頂点に輝いたのは、迫害を受けながらもミャンマー国内にとどまり、生きるために働くロヒンギャの人々を記録した三井昌志さんの作品だ。ロヒンギャとはミャンマー西部に暮らすイスラム教徒。ミャンマーでは不法移民とされ、国籍は与えられていない。隣国のバングラデシュで難民となるなど、国際社会が注目する問題となっている。
三井さんは一貫して「働く人の美しさ」を追求し続け、2016年にピープル部門で最優秀賞を受賞。今回、念願のグランプリ獲得となった。
受賞の一報を受け取ったとき、三井昌志さんはバングラデシュで取材中だった。「目標にしてきた賞がようやく取れた」と、うれしさ以上に安堵の気持ちが強かったという。
毎年11月になるとアジアをめぐる4カ月のバイクの旅をスタートするそうだが、受賞を知る数週間前にも、受賞作のテーマとなったロヒンギャの人々が暮らす村を訪れていた。今作は2017年の同時期に撮影されたものだが、警察と軍による監視の目が年々厳しくなっているのを感じると三井さんは話す。
村には相変わらず電気も通っておらず、医療や教育を受ける機会も閉ざされたままだ。そうした村人の「日々の労働の厳しさと、そのなかに宿る美しさを、光と影で表現したかった」と、作品への思いを語った。
審査員を務めた写真家の野町和嘉氏は、三井さんの作品を「難民キャンプではなく、ミャンマー国内に残るロヒンギャの人々の日常を淡々と記録し、逆境にめげず大地に生きる彼らを詩情豊かに描いている」と評した。同じく審査員を務めた写真家の中村征夫氏も、「正視できないような悲惨な現状を冷静な目でとらえ、訴えている。写真家としてのぶれない姿勢に感動した。先祖から受け継いだ土地を守ろうとする人々の真剣な姿は心に迫るものがある」と評価する。
三井さんには、賞金100万円が贈られるとともに、米ニューヨーク市で個展を開催する機会が与えられる。
このほかネイチャー部門の最優秀賞には、カナダの森のフクロウの子育てをとらえた大竹英洋さんの作品が、ピープル部門の最優秀賞には、石垣島の漁師に肉薄した西野嘉憲さんの作品が選ばれた。次ページでは、これら2つの最優秀賞作品を紹介する。
ネイチャー部門 最優秀賞
ネイチャー部門の最優秀賞は、大竹英洋さんの単写真「北の森に生きる」。カナダの森、厳しい大自然で生きる親子を力強い構図に収めた。
ピープル部門 最優秀賞
ピープル部門で最優秀賞を獲得したのは、西野嘉憲さんの5枚組の作品「海に生きる人」だ。バリエーション豊かに海で働く漁師の姿を表現した組写真となっている。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
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