救命ドラマに新機軸 『9-1-1』男女を取り込み1位
2018年11月 海外ドラマ月間レンタルランキング
海外ドラマで人気の高いジャンルが救命もの。医療や消防の現場を舞台にする作品が多く作られてきたが、最新作『9-1-1 LA救命最前線』は事件発生の通報を受ける指令室を起点に、救命隊・消防隊、警察の連携にスポットを当てるという新しい切り口を打ち出してヒット。TSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキング11月度で1位となった。
『9-1-1 LA救命最前線』は、ロサンゼルスの911番(緊急通報ダイヤル)に通報される様々な事件を1話完結で描く。911番の第1応答者であるアビー(コニー・ブリットン)が電話を受け、警察官のアシーナ(アンジェラ・バセット)、救命隊のボビー(ピーター・クラウス)やバック(オリヴァー・スターク)らと連絡をとりながら解決していく。
例えば、「バスルームの壁の中から泣き声がする」との通報を受け、救命隊を現場へ急行させると、排水管に生まれたばかりの赤ん坊が挟まっていた。警察は、溺死を避けるため上の階の住民にトイレを流さないよう警告しつつ、出産した赤ん坊を流した可能性がある若い女性を探す。一方、救命隊は壁をはがして赤ん坊を救出するという具合だ。
扱う事件は、ペットの巨大蛇に首を絞められている飼い主の救助といったトラブルから、海上に墜落した航空機の事故現場での救助まで多岐にわたる。1話ごとに複数の事件や事故が進行し、手に汗握るシーンが繰り広げられる。
企画・製作総指揮・脚本を手がけているのは、『glee/グリー』『アメリカン・ホラー・ストーリー』などのヒットメーカー、ライアン・マーフィー。自身の息子が救急救命士に助けられた際に感銘を受けた経験から、本作の企画を思いついたという。キャラクターを際立たせるのが得意なライアンの作品らしく、登場人物のそれぞれがプライベートに悩みや心の傷を抱えているのも見どころ。それと向き合いながら、組織の壁を越えて人命救助に立ち向かう姿が共感を呼ぶ。全米では2018年1月からFOXで放送が始まり、今秋にはシーズン2が放送された人気シリーズとなっている。
TSUTAYA レンタルユニット 映像チーム海外ドラマ担当の中山知美氏によると、レンタルユーザーの中心は40代以上で、男女の偏りなく借りられている。「通常のドラマは警察や医療などそれぞれの舞台が限られるところを、『9-1-1 LA救命最前線』では通報を受ける指令室、救命隊・消防隊、警官の連携にスポットを当てた群像劇なのが特徴。救命現場の実態をトータルとして捉えたレスキューアクションは他に類がなく、その斬新な設定が支持されています。視聴層も、警察ものだと男性、医療ものだと女性のユーザーが多い傾向がありますが、『9-1-1 LA救命最前線』はどちらにもまんべんなく見られています。1つの作品に複数の職種を取り扱うことで、うまく幅広い層を取り込んでいるようです」
中山氏は、1話完結の見やすさも人気の要因とみている。「1話でひとつの事件が完結する形式は、シーズンの途中から見ても視聴者が後追いしやすいため人気を得やすく、古くは『CSI:科学捜査班』など、多くのヒットドラマが生まれています。その1話完結スタイルであることも強みです」
人気ジャンルの救命もので新機軸を打ち出した点と1話完結のスタイルが当たり、日本でも新たなヒットシリーズとして定着しそうだ。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
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