市場拡大する甘酒 女性に人気のパッケージはどっち?
甘酒の人気が高まっている。特に、麹(こうじ)を使ったノンアルコールの甘酒は栄養価の高さから「飲む点滴」とも呼ばれており、疲労回復や便秘改善などの効果を期待して飲む人が増えている。今回は手軽に飲める麹甘酒2製品のパッケージを比較調査した。
調査対象は、「麹だけでつくったあまさけ 118g」(A)と、「黄桜 甘酒カップ 170g」(B)。AとBの「どちらの商品を買いたいか」(Q1)と聞くと、Aが54.7%、Bが45.3%。Aが9.4ポイント上回った。
Aは、日本酒「八海山」で知られる新潟県魚沼市の醸造会社、八海醸造が2009年に発売した。825g、410g、118gの3サイズで展開している。ノンアルコールであり、老若男女すべての層がターゲット。後味がすっきりしている。
パッケージでは、醸造技術をアピールするため、「本格仕込み」「伝統飲料」などのテキストを掲載。レトロなイメージの赤いキャップが印象的だ。発売から右肩上がりで売り上げを伸ばしたことから生産設備を次々に拡大してきた。
八海醸造の販売会社、八海山の商品開発・営業企画室長、勝又沙智子氏は「酒蔵の隅で甘酒を造っていたが、注文に生産が追いつかず、甘酒専用工場を立ち上げた。そこも手狭になり、17年からはさらに規模の大きな工場で製造している」と語る。
Bは、京都府伏見区の醸造会社、黄桜が17年9月に発売した。パッケージには桜のグラフィックをプリントし、和風で上品な印象に仕上げた。「これまでの甘酒市場の最大ボリューム層は60~70代だったが、直近ではこの層の購入数がやや減少していると感じていた。そこで、40代以下の世代に訴求するため米麹の甘酒を販売し、甘酒市場の裾野を拡大したいと考えた」(黄桜営業統括部)
同商品では、「若い世代にカジュアルに甘酒を飲んでもらいたい」という狙いから蓋付き紙カップにストローをセットにした。仕事の合間などにスタイリッシュに甘酒を飲むスタイルを提案している。
Aは女性、Bは若い男性に人気
Q1の結果を男女別で見ると、男性全体ではAが46.7%でBが53.3%、女性全体ではAが62.7%、Bが37.3%だった。女性が圧倒的にAを支持している。一方、男性はBをやや好むことが分かる。中でもAは女性40~60代、Bは男性20~30代の人気が高く、支持層が分かれる形になった。Bで打ち出した「仕事の合間に飲む」というイメージを、働く男性が支持しているのかもしれない。
「パッケージから感じるイメージ」(Q2)を聞くと、Aは「健康に良さそう」が77.7%、「麹の風味が良さそう」が74.0%、「美容に良さそう」が68.0%で特に高い。健康や美容への効果を期待しながら手に取る人が多そうだ。
Bの場合は、「高級感がある」が72.0%、「デザインが好き」が55.7%「品質が良さそう」が52.7%と続く。コーヒーや紅茶のように、おしゃれに飲めるイメージを獲得している。
「通常の甘酒が190円だった場合、Q1で選んだ商品がいくらまでなら買うか」(Q3)と聞くと、Aは+14.4円、Bは+15.6円だった。高級なイメージが強いBのデザイン価値が、わずかではあるが上回った。
「どこを見て買いたいと思ったか」(Q4)を聞いた。Aは、「『麹だけでつくったあまさけ』のロゴ」が56.7%、「ボトルの形状」が11.6%、「キャップの赤色」が7.3%と続いた。男女問わず、全体の半数以上がロゴのデザインを評価している。
実はこの「麹だけでつくったあまさけ」のロゴ表記は、八海醸造がこだわった箇所でもある。「"あまざけ"を"あまさけ"と表すことで、同商品の特徴であるすっきりとした味わいを表現した」(勝又氏)という。濁点を取るという小さな工夫だが、多くの人に好印象を与えることに成功している。
Bの場合は、「背景の桜のグラフィック」が25.0%、「『黄桜』のロゴ」が23.5%、「『甘酒』のロゴ」が17.7%。舞い落ちるような桜の雰囲気や、にじんだような甘酒の書体に美しさを見いだす人が多かったようだ。一方で、Aに比べると、パッケージの評価のポイントが分散している分、存在感が希薄な印象だ。
2018年10月中旬、インターネットを介してアンケート調査を実施。有効回答数は男性150人、女性150人の合計300人。20代、30代、40代、50代、60代の各世代とも男女30人ずつ。
調査協力:クリエイティブサーベイ
https://creativesurvey.com
(ライター 近藤彩音)
[日経クロストレンド 2018年12月12日掲載]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界