小谷実可子さん 翌日に疲れを残さない5分ストレッチ
元シンクロ五輪メダリストに聞く(中)
1988年のソウル五輪のシンクロナイズドスイミング(2018年4月からアーティスティックスイミングに競技名が変更)でソロ・デュエットともに銅メダルを獲得し、日本のシンクロ界を世界のトップレベルに一気に押し上げた小谷実可子さん。51歳の今もシンクロナイズドスイミングのショーに出演し、観客を魅了する演技を披露する。「50歳から身も心もV字回復してきた」と話す、彼女の食生活や疲労回復法について教えてもらった。
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シンクロナイズドスイミングショー(前回記事「小谷実可子さん 50歳で心身がV字回復した秘密」)に出演するため、2015年、48歳のときから本格的にトレーニングを始め、食生活に対する意識も変わってきました。以前は、おいしいものを食べることが好きで、それが元気の源でした。でも、大勢の観客の前で演技を披露するという目標ができたので、体づくりのために節制する習慣が身につきました。
普段は45分間ぶっ通しで、筋トレを含めた体を動かし続ける激しいトレーニングをしているので、当然、筋肉疲労を起こします。トレーナーさんからは「肉をもっと食べなさい!」と言われることが多く、最近はたんぱく質を意識して摂取するようにしています。
夜は炭水化物を控えめにして、特にショーの直前はそれを日によって朝昼も行い、余計なぜい肉を取って体を絞っています。例えば、ショーが近づいてくると、週2回「プチトマトデー」を設け、朝昼晩とプチトマトだけで過ごすんです。
栄養素などを考えてプチトマトを選んだのではなく、純粋においしくて大好きなんですよ。小さくてかわいいし、いろんな種類の色があって、眺めているだけで何となく気分が上がるんです。おなかがすいているときは、特に味覚が敏感になっているのか、トマトの味が体に染みわたり、味の違いがよく分かります。「ああ、この色のプチトマトはこんな味なんだぁ」と。
ショーに出始めた1年目はプチトマトでしたが、次の年は、サキイカにしました(笑)。たくさんかむので、空腹が紛れるのです。3年目はミックスナッツです。これもサキイカと同様、ほかの食品よりかむ回数が多くなり、満腹感が得られます。良質な脂肪や食物繊維なども得られるし、何よりいろんな食感や味があって飽きないですよね。
どこに行くにも水素水タンブラー
娘もシンクロを習っていますが、スポーツ選手の奥様のような、栄養士の資格を取って、栄養素を考えて食事を作るということは、一切やっていなくて……。ただ、母が子供の頃の私にしてくれたように、海のもの、山のものをバランスよく摂取し、色も白と茶色ばかりにならないように、さまざまな色の食材を取り入れるように意識しています。季節のおいしい野菜を食べるとか。あまり神経質になりすぎるのはよくないと思うんですよね。続かないと意味がないですから。
あと、私自身、水素水を飲むようにしています。最初は水素水の効能がよく分からず半信半疑でしたが、野菜を水素水に入れるとしんなりしていた葉っぱがシャキッとしたのを見たことがあって、「スゴイ!」と思ったんです。これは、人間にも何か効能があるんじゃないかなと。早速、水素を生成するタンブラーを購入して持ち歩き、カフェで出された水などもタンブラーに移し替えて飲んでいます。
水素水のおかげで、肌つやがよくなったとか、野菜みたいにシャキッとして若々しくなったとかは、自分ではよく分かりません(笑)。でも、無理なく続けられているし、健康のバロメーターにしている血液検査の結果も悪くない。体も引き締まってきて、いい方向に進んでいます。もちろん運動を含め、要因は色々あるでしょうが、健康グッズの一つとしては、役立っているのではないかなと思います。
何より、水素水が生成されるとき、タンブラーがきらきら光ってかわいいんですよ。こうした気持ちが上がるアイテムを使うのも、続けるコツかもしれません。
首のストレッチで頭と視界がスッキリ
ショーに出演するようになってから激しいトレーニングを続けているので、できるだけ疲労を翌日に残さないようにしています。疲れを取るには、やはり、ぐっすりと質のいい睡眠を取ることが一番だと思っていて、6時間は睡眠時間を確保するようにしていますね。そして、寝る前にストレッチや柔軟体操を欠かさず続けています。1秒でも長く寝たいのですが、そこはぐっと我慢して5分間やるんです。
例えば、長時間立ち続けていると、腰が痛くなるので、腰を前後左右しっかり伸ばします。また、立ち続けると太ももの裏側の筋肉が硬くなるので、前屈してぐーっとハムストリングを伸ばします。座りながらでも立ちながらでもどちらでも構いません。また、太ももの前の足の付け根部分をゆっくり伸ばすのも、腰がラクになるように思います。
あと首をゆっくりと前に倒して、肩甲骨回りの筋肉をしっかり伸ばしてあげます。すると、気の流れがよくなって頭がスッキリします。首のストレッチをしっかりやると、疲労によりぼやっと見えていた景色が、明るくはっきり見えるような気がするんですよね。呼吸も深くなります。はっきり見えることを目安にして、首や肩甲骨回りを伸ばすようにしていますね。
ささいなことなのですが、毎晩この5分間ストレッチをするだけで、睡眠が深くなりますし、翌日に疲れが残りにくいですね。
ただ今年は酷暑と言われ、皆さんも寝苦しいと思います。暑いと目が覚めて寝不足になりがち。それを防止するため、暑がりばかりの我が家は家族全員、「おやすみ~」と言いながら、それぞれの冷却枕を持って寝室に行きます。薄いタオルを冷却枕に巻いて寝ると、それほど寝苦さは感じないですね。
私が"ストレス知らず"な理由
これらが私の日々の健康法です。よく「ストレス解消法は何ですか?」という質問を受けますが、実は私、昔から「胃もたれ」と「ストレス」がどんな症状か分からないのです。肩こりも分からなかったのですが、それはこの年齢になってやっと分かるようになりました。
瞬間的にイライラしたり、カチンとしたりする感情はありますが、それを一切引きずることはありません。ムカッときたら泳ぎながら水の中で「ウワー!」と叫んで発散することはありますが、それで終わり。だからストレスという症状が分からないのです。
周囲から私は常にポジティブに見えるようですが、"ストレス知らず"も含め、それは私の思考法によるものだと思っています。私が選手時代に学んだ、「起こることには、必ず意味がある」という考え方です。うまくいかないことがあっても、それは自分にとって意味があることなんだと思ってしまうのです。するとマイナスな状況に悲観したり、悩んだりすることなく、解決方法を考えたりして前を向くことができる。
実際に、今までの自分を振り返ると、すべてその通りなのです。マイナスなことがあったときこそ、自分で進むべき道を選んで、最終的に実になったりしている。それを最初に悟ったのは、20歳のときでした。
(次回に続く)
(ライター 高島三幸、カメラマン 鈴木愛子、ヘアメイク 住本由香)
1966年東京都生まれ。幼少の頃からシンクロナイズドスイミングの才能を開花させ、高校のときに単身米国にシンクロで留学。88年のソウル五輪でソロ・デュエットともに銅メダルを獲得。休養中に長野五輪招致に携わる。92年のバルセロナ五輪日本代表になるが、出場の機会を得ず引退。現在はスポーツコメンテーターや、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致アンバサダー」を務めるなど国際的に活動する一方、指導者として、スポーツクラブや大学などでシンクロの魅力を伝える。
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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