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ついで買い促し商品告知で収入 定額コーヒー店奮闘中

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日経クロストレンド

日本初の月額定額制コーヒースタンドとして話題を呼んでいる「coffee mafia」は、2016年10月に1号店の西新宿店、18年1月には2号店となる飯田橋店がオープン。周辺オフィスのビジネスパーソンを中心に、それぞれ数百名程度の会員を抱えており、「毎月数十人ずつ会員が増えている状態」(運営するfavyの高梨巧社長)という人気ぶり。会員のニーズや嗜好を常に分析し、新たなドリンクやランチメニューを開発するのもcoffee mafiaの強みだ。

コーヒーだけなら赤字

coffee mafiaの月3000円会員は、ラージサイズコーヒー(1杯300円)が1日何度訪れても無料で飲めるほか、バル業態に転換する夜間は通常1杯400円のビールやハイボールが280円で楽しめる。これに加えて月6500円の上級会員になると、カフェオレ(同450円)やチョコレートオレ(同550円)なども無料になる。

コーヒーは単一の豆を使うシングルオリジンの本格派で、丁寧にハンドドリップしたもの。コーヒーだけで考えても、月3000円の会員なら1カ月に10回以上(週2.5回程度)利用すれば月額費用の元を取れる計算になり、非常にお得感が高いプランだ。そのため、多くの会員が足しげく通い、直近の平均来店数は実に月22回に上る。「当初の想定は月12~13回くらいだったが、それの2倍近く来てもらっているのは正直誤算だった。コーヒー豆の原価を考えると赤字になるレベル」(高梨氏)という。

しかし一方で、高梨氏は「coffee mafiaは1店当たり数百万円の月商を上げており、まだ金額は少ないが、黒字化はしている。このノウハウを生かして、19年以降にフランチャイズなどで多店舗展開する計画」と余裕を見せる。

では、なぜ想定以上に「タダ飲み」が多いのに、ガッチリ儲かるのか。

「ついで買い」をどう増やすか

定額制という側面だけを捉えると、「完全会員制で高まる人気 肉料理店『29ON』の魅力」で紹介した同じfavyが運営する「29ON」と同じビジネスモデルだと考える人が多いかもしれない。しかし、会員の年会費を売り上げの柱とする29ONと、coffee mafiaの定額モデルとは似て非なるもの。coffee mafiaでは、必ずしも月会費を収益源として見ていない。コーヒーだけでは赤字であってもサンドイッチやドーナツなど、他のアイテムをついで買いしてもらえればいいという考えだ。

また、食品・飲料メーカーなどが店頭で新商品の告知やサンプリングを行うケースもあり、coffee mafiaは月会費、飲食代に続く「第3の収入」として広告費を得ている。

ここで重要となるのは、会員の購買データをいかに正確に把握するかだ。coffee mafiaは非会員でも利用できるので、会員を識別するためにスマートフォンの画面に表示した会員証(QRコードやバーコード)をレジで読み込むシステムを導入。これにより、肝となる会員の購買データをトラッキングして、彼らの満足度を高めながら収益を最大化することにチャレンジしている。

例えば、coffee mafiaでは、ついで買いアイテムとしてコーヒーと相性のいいサンドイッチや米粉ドーナツなどをそろえている。ところが、会員の来店時間と購買データを掛け合わせて分析すると、最も来店客数が多い朝の時間帯に、ついで買いがあまり発生していないことが分かった。忙しい朝は、コーヒーだけをもらってサッと会社に出勤する人が多かったのだ。

そこで、同店は朝用にドリンクの新メニューを追加した。ダイエット効果や集中力が高まるといわれて米国でブームを呼んだ「バターコーヒー」だ。腹持ちが良く、1杯で朝食代わりになるから、忙しいビジネスパーソンには一石二鳥のメニュー。これを通常700円のところ、月3000円会員は240円引きの460円を追加で払って飲めるようにした。無料のコーヒーからアップグレードしてもらうことで、客単価を増やす狙いだ。また、もともと月6500円会員は無料で飲めるので、バターコーヒーにハマった人が上級会員に移行するケースも多く、その利益貢献は大きい。

また、昼の時間帯は他の店でランチを食べてからコーヒーだけを受け取りに来る会員が多かった。「これは発想を変えると、ランチメニューの貴重な販促機会を得ているということ。魅力的なランチを用意すれば、次は買いに来てもらえる」(高梨氏)。そこでcoffee mafiaでは、「ローストビーフ弁当」や「マフィアのカレー丼」(いずれも通常700円、会員は500円)など、テークアウト可能でお得感のあるメニューを増やしていった。「何人の会員がランチメニューを見る機会があって、そのうち何%が購入に至ったか、売れ筋をデータで把握し、常にメニューの改廃をしている」(高梨氏)という。

こうした工夫によって、ついで買いをする会員の比率は当初全体の1~2割だったものが、現在は3~4割程度にまで引き上げられている。また、「朝から昼間の時間帯の平均客単価は500~1000円程度。月会費を除いても、会員の客単価は非会員より150円以上高い状態になっている」(高梨氏)と話す。

定額飲み放題モデルは夜には不向き

一方、誤算があったのはバル業態に変わる夜間だ。夜間の客単価は最大6000円ほどになるので、一度来てもらえれば昼間の来店5回前後に相当する収益インパクトがある。しかし、非会員の利用が好調な一方で、会員の来店回数は期待ほど伸びていないという。いくらビールやハイボールが割引価格で飲めるといっても、毎日のように同じ店でちょい飲みするのは抵抗がある人が多いようだ。

つまり、高頻度の来店を生かすcoffee mafiaの月額モデルは夜業態にはあまりフィットしていないことがわかってきたのだ。「オフィス街や駅近の立地で日中の需要を刈り取るにはcoffee mafiaのような月額制モデル、利用頻度がそれほど多くなく、嗜好性が高まる夜の業態は家賃の安い二等立地で29ONのような年会費制モデルと、時間帯×立地の最適なフォーマットが分かってきた」(高梨氏)と話す。coffee mafiaに組み合わせる夜業態については、ひとまず非会員向けに振り切った形へのリニューアルを検討しており、多店舗化に向けて試行錯誤が続く。

(日経クロストレンド 勝俣哲生)

[日経クロストレンド 2018年7月2日の記事を再構成]

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