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仕切り役はロボットのクマ ムダの多い会議が大変革

新日鉄住金ソリューションズ「チタン女子」(下)

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NIKKEI STYLE

社内で少数派の女性営業職(エイジョ)が長く働き続けるために取り組んだもう一つの実証実験が、「実験!会議室」。見た目もかわいいくまのロボットを使い、業務全体の6割を占める会議時間の削減を試みました。はたして、その効果は? 上編の「仮想通貨で褒め合う? 営業女性の発明で前向き職場に」に引き続き、「エイジョカレッジサミット2017」で大賞に輝いた新日鉄住金ソリューションズのエイジョ「チタン女子」の取り組みを紹介します。

一番ムダに感じるのは会議時間

白河桃子さん(以下敬称略) 前回お聞きした仮想通貨のシステムで今回の大賞を受賞されましたが、もう一つの実験も私には非常に光って見えた企画でした。商品化も視野にいれているのかなと思いましたね。くまのぬいぐるみが会議のファシリテーション(円滑な進行を促す)をする。なぜ、このかわいらしい「くまちゃん」を使った会議改革を思いついたのでしょう?

諸信慧さん(以下、敬称略) これは女性に限らずですが、営業は顧客からの提案依頼、急な障害対応、契約業務、調整ごとや会議、メールの返信とやるべき仕事が満載です。移動も頻繁にあり、とにかく忙しい。そんななか、5年後、10年後も働き続けることができるのか、という不安がありました。営業のなかで、女性は少数派ですし、上に行けば行くほど少なくなっていく。結婚し、子どもができても、今のような働き方を続けられるのか。続けるためには、どうしたらいいかというところから、スタートしました。

アウトプットの質を落とさずに業務を効率化するためにはどうしたらいいかということで、改めて仕事内容を棚卸ししてみた。すると、一番無駄な時間は会議だよね、ということになりました。客先での打ち合わせも含め、会議が業務時間全体の6割を占めていました。

白河 なるほど、まずは無駄な会議時間を減らそうということで、このくまのロボットが誕生したわけですね。

諸 はい。「営女 くま」と名付けています。一応、社員1級という設定です。市販されている、音に合わせて動くぬいぐるみに、弊社のシステムエンジニア(SE)が開発したソフトをつなげたシステムです。

主な機能として、音声案内で「終了時間、終了条件の設定・周知」「発言が多すぎる人の抑制、または少なすぎる人の発言を促す」「会議の最後にまとめを行う人をランダムに指名する」などがあります。それと見た目もかわいいので、会議の場にくまのロボットがいるだけで話のネタになるし、雰囲気が和みます。

会議に関しては大きく2つ、もったいないなと思うことがありました。1つはせっかくいい意見を持っているにもかかわらず、その場の空気で発言できない。例えば部長が隣にいるから、遠慮して発言を控えようと思ってしまう。2つめは結論のないまま終わる。長時間話し合ったのに、「あれっ、今日はなんのために集まったんだっけ?」というようなことがありました。それらがなくなるように、というのが「くまちゃん」を導入した目的です。

白河 以前の会議って、基本的には何分くらい?

諸 30分か1時間の会議が多いですが、長いと2時間続くことも。困るのは、終了時間が守られないことです。前の会議が押すと次の会議に影響が出て、みんな時間通りに集まれず、悪循環が続きます。

白河 くまのロボットは、いわゆるファシリテーターの役割を担うわけですよね。人ではなく、くまがやることの効果って?

諸 人間が言うと角が立つことも、くまのロボットが発言すると嫌な気持ちにならない。上役が話している時に、「ちょっと話が長いですよ」とは言いにくいですよね?

くまが座る場所とまとめ役を指定

黒澤恭子さん(以下敬称略) 実証実験では、くまのロボットがいる会議室を3つ用意し、実験の趣旨を説明した上で、誰でも予約できるようにしました。お客さんとの会議でも、その部屋を使ったら「くまちゃん」がいる、という状態にしました。

出席者はまず、入り口に設置したボックスから番号の書かれたカラーボールを1つ持って入室します。次に、主催者が会議の種類、参加人数、終了時間、終了条件をシステムに入力します。席のピンマイクにも番号が振ってあり、参加者は持ったボールと同じ番号の席に座ります。ランダムに席順が決まるため、部長が必ず上座に座ることもありません。番号を名前に変えて入力することもできますが、入力するかどうかは利用者の自由にしました。

白河 座る席順でも、発言のヒエラルキーがありますものね。それだけでも効果はありそうです。それで、くまのロボットがどうやって会議をファシリテートするんですか?

黒澤 会議中、一定時間間隔でくまのロボットがランダムに、「○○さん、何かコメントありませんか?」と自動的にアナウンスします。名前を入力していない場合は、番号で呼ばれます。だいたい、そのような介入が5分から10分おきにあります。ランダムに指名されると思うと、みんな緊張感を持って会議に参加してくれます。

諸 終了5分前には、くまのロボットが終了時間と終了条件をリマインドしてくれるんです。「○○さん、会議のまとめをお願いします」と指名し、指名された人が、決まったことを全員の前で確認し会議終了となります。

白河 導入してから、どんな効果がありましたか?

黒澤 あてられると、みんな意外と話すんだなあと思いました。意見があるのに、あまりアウトプットしていなかった人が多かった。全体的にポジティブな反応が予想以上に多くて、それには驚きました。

白河 逆に否定的な意見はありませんでしたか?

佐々木公佳さん(以下敬称略) 私が参加した会議では、上司が「こいつ、空気読まないな」とぼやいたケースがありました。最初のうちは5分おき、ランダムに介入していたんです。上司が話している最中に、「誰それさん、コメントお願いします」と話し出すことがあり、途中でソフトウエアをバージョンアップして修正しました。

白河 会議室を利用してくれた人も含め、協力者は234人。それで、どれくらい効率化できましたか?

秋田有美さん(以下敬称略) 実証実験の期間内では、前月比でこれくらい会議時間を削減できましたという数字を出せるところまではいかなかったのですが、1時間で終わるべき会議がきっちり時間内に終わるケースは増えました。そういう意味で、会議の質が上がったとは言えると思います。

今後の展開としては、3会議室だけだったものを増やしていきたい。それと、客先にも導入できればいいですね。最終的には人工知能(AI)化して、議事録もこのくまが取れるようにしたい。

仮想通貨もくまのロボットも、成果につながる

白河 外部に売ることも考えているわけですね。

佐々木 将来的には。今回、SEさんには仕事というよりも趣味の範囲でご協力いただいたので、商品化するとなると体制を整えていかないといけないと思っています。現時点では営業部門横断で今年度新たに立ち上げた「エイジョ分科会」と、人事企画部が引き取り、まずはトライアルから実施する方向で動いています。

田中麻優さん(以下敬称略) (上編の)仮想通貨もくまのロボットも、成果を出すという点にこだわってつくりましたが、労働時間の短縮につながることを実感しています。例えば、くまちゃんを使って会議時間のデフォルトを45分間に設定し、会議の効率化をはかるということもできる。仮想通貨に関しては、ある事業部の部長さんが、「早く帰ると5コイン」というような使い方をして、早く帰ることに罪悪感を持つ必要はなく、むしろ、褒められることなんだという、価値観の転換に使っています。

白河 達成目標とコインを連動させていけば、いろいろなことができそうですね。ところで、チーム名が「チタン女子」になっているのはなぜ?

田中 鉄は「鉄の女」に象徴されるように、すごく強いイメージがあります。社名にある新日鉄住金も、ゴリゴリのイメージ。実際の私たちはそんなに強くないけれど、私たちでもできることはある。それを、さびにくく、しなやかで、軽い「チタン」という言葉で表現しました。

諸 エイジョの活動をやってよかったのは、社内のみなさんが注目してくださるようになったこと。いつまで続けられるのだろうかという不安と闘いながら仕事をしてきましたが、今回、実証実験を通じてみなさんに興味を持ってもらい、期待もかけてもらいました。期待されると自己肯定感は上がりますし、自信にもつながります。それと、仲間もできて心強い。

田中 会社は良くも悪くも「女性だから」ということはなくて、フラットなんです。ただ、体調面では違いもあるので、フラットになれない自分を責めて苦しくなっていました。最初は「どうして女性だけが集まるの?」という気持ちもありましたが、各部署に女性が1人か2人しかいないなか、こうしてエイジョとして集まれたことで、一種の「セーフティーネット」が生まれた。同質性が担保されている集団のなかで、安心して弱い自分をさらけ出せることによる副次的な効果はあったかなと思います。

あとがき:審査員をさせていただき、第1回から取材しているエイジョカレッジ。延べ参加企業46社、参加人数444人を数え、93の実証実験が実施されました。年々進化しているのが手にとるようにわかります。

2016年と17年は特に「働き方」と「労働時間短縮」を視野にいれた「新たな顧客価値の創出」「次世代型営業モデルの創出」がテーマとなっていました。単に労働時間を短くではなく、営業としてどれだけ成果を出せるかを基本に考えられています。

毎年顧客ニーズを分析している『エイカレ白書』でも、営業に求めるものとして「先回りした情報収集・分析」「社内や協力会社とも解決策議論」が上位に挙げられました。一方で「頻繁に訪問すること」は評価されないという結果も出ています。いまは顧客も効率的な提案活動を求めています。働き方改革の未来を占う上で、エイジョカレッジの活動から目が離せません。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 曲沼美恵)

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