残業代減り老後不安 働く女子のお金相談、プロが回答
毎日一生懸命働いても、給料はなかなか上がらない。今の給料でいつまで働けるのかも分からない上に、年老いていく家族の問題、自分自身の老後の生活など、お金にまつわる不安の波は次々と押し寄せてくる。でも大丈夫 プロのアドバイスをもらい、今から対策を立てましょう。
勤め先は小さな会社で、産休制度も退職金制度もない。社長に何かあったら会社自体がなくなってしまう恐れもあり、ずっと働ける場所ではないと感じます。(神奈川県・39歳・広告・事務)
産休・育休は国で定められた権利 大企業でも"ずっと働ける"は難しい
「退職金支給は任意ですが、産休・育休は、法律で定められた権利。就業規則に記載がなくても取得できる(育休取得は諸条件あり)ので、まずは会社に伝え、ムリなら労働局に相談を」(佐佐木さん)。「産休・育休中は、基本的に無給ですが、健康保険から出産手当金が、育休中は雇用保険から育児休業給付金が出ます。ただし勤め先が個人事業主の場合、社会保険は任意なので確認を」(井戸さん)。また、「今は大企業でも倒産する時代。企業の大小問わず、"ずっと働ける"という意識は捨てて」(佐佐木さん)。
「働き方改革」のために、全社的に残業禁止に。残業代がほとんどつかなくなったら、手取り額が2割ほど減る見込み。なんとかならないでしょうか……。(東京都・40歳・IT・財務・会計)
空いた時間を有効活用し パラレルキャリアを目指そう
「残業削減は時代の流れ。残業代ありきの家計設計は即見直しを。残業減をデメリットと捉えず、空いた時間で、パラレルキャリアを目指す方向を考えましょう」(井戸さん)。「今の時代は、会社員なら、その立場を維持しながらの副業が賢い。雇用保険の教育訓練給付金制度などを活用してスキルを身に付けて。ただし副業をする場合、現状では多くの会社は許可制。継続的な売り上げがある場合や、アルバイトなどで他の企業に雇用される場合は、今の勤務先に申告したほうがいいでしょう」(佐佐木さん)
親と同居のひとりっ子なので、両親が介護状態になったとき、私は今の働き方を続けられるのか……。介護で仕事を辞めざるを得なくなったらどうなるのか、不安です。(北海道・46歳・建設・秘書)
介護離職は絶対に避けるべき 支援態勢を整え、働き続ける
「介護は子供が担うものと思い込んでいる人が多いですが、子の役割は介護サービスによる支援態勢を整えること。離職すると将来の年金も減るので、仕事は絶対に続けましょう。介護費用は親の年金などから捻出するのが原則。親が元気なうちに、本人の希望や通帳などの管理場所の確認を」(井戸さん)。「昨年から、通算93日の介護休業が3回まで分割取得可能になるなど、介護しながら働くための環境整備も進んでいます。介護休業中は、雇用保険から介護休業給付金(平均賃金の67パーセント)が出ます」(佐佐木さん)
実家にほぼ引きこもり状態の弟がいます。今は仕事もしていないので、両親が亡くなった後、弟はどうやって食べていくのか心配です。(福岡県・46歳・保険・事務)
本人の年金の支払い状況を確認 家でできる仕事を探す道も
「仮に持ち家の場合でも、生活していくお金は必要。特に無年金だと老後は大変です。まずは、本人の年金の納付状況を確認しましょう。収入がない場合、毎年申請を行うことで国民年金保険料が全額もしくは一定額免除され(諸条件あり)、免除期間が年金の受給資格期間に算入される。全額免除なら老後は保険料を納めた場合の2分の1の額が支給されます」(井戸さん)。「最近は家にこもったままPCでできる仕事も多いので、職探しを支援しては。働いた経験があるなら、教育訓練給付金制度を使って学べる可能性もあります。一度話し合って」(佐佐木さん)
65歳まで仕事を続けたいと思っていますが、60歳以降は現在の月収の6割の手取りになるので、生活できるかどうか不安です。(和歌山県・51歳・福祉・介護)
「高年齢雇用継続給付」で 減った分を多少カバーできる
現状、多くの企業では60歳で定年となり、継続雇用後の収入は以前の5~7割程度にダウンする場合が多い。「60~65歳時の収入減は、雇用保険の『高年齢雇用継続給付』制度で多少カバーできます。60歳以後の賃金がそれまでの75パーセント未満に下がると、低下率に応じた額が支給されます。例えば40万円から24万円に減ったら、給付金は15パーセントの3万6000円」(佐佐木さん)。ただ、根本解決にはならないので、「50代から徐々に生活をミニマムにし、収入が減ってもやりくりできる生活習慣を身に付けましょう」(井戸さん)。
ストレスの大きい職場で、辞めたいのが本音ですが、夫の収入だけでは生活できないし、年齢的に再就職は難しいので、仕方なく続けています。(石川県・39歳・教育)
教育訓練給付金制度の拡充で スキルアップのチャンス
「人生100年時代。アラフォーで再就職は無理との考えは、今どきナンセンス。40代、50代からでも新しいキャリアに挑戦するのが、今後は当たり前になります」(井戸さん)。雇用保険の制度を使えば、少額の自己負担で専門スキルが学べる。「今年1月から『専門実践教育訓練給付金』が拡充され、支給率が40パーセントから50パーセントにアップ。資格を取得した場合は、支払った教育訓練経費の70パーセントが支給されます。支給対象者の要件も緩和され、今は専業主婦の方でも対象になる可能性が広がっています」(佐佐木さん)
(ライター 西尾英子)
FP、社会保険労務士、キャリアカウンセラー。身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門。社会保障審議会企業年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。著書は『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる!』(集英社)ほか。
社会保険労務士、人事労務コンサルタント。グレース・パートナーズ社労士事務所代表。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年に独立し、事務所を開設。女性の雇用問題に力を注ぎ、働く女性のための情報共有サロン「グレース・プロジェクト」を主宰。
[日経ウーマン 2018年4月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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