週末レシピ アヒージョ、魚焼きグリルで時短カンタン
週末レシピ、今週の料理は「アヒージョ」である。今やちょっとしたカフェや居酒屋などでも提供される、大人気メニューだ。アヒージョの缶詰などもう珍しくはないし、どこかの学校給食メニューにもなったとも聞く。また飲み会の料理を相談しているときに、店側から「女子会ならアヒージョを組み込みましょう」と提案されたこともある。老若男女問わず、あの手の味はとにかく「ウケる」のだ。ここらでレシピを覚え、自分のレパートリーにしておこう。いざという時に必ず、強い味方となる。
先週紹介したボンゴレを作った人は、家にまだオリーブオイルとニンニクとトウガラシが残ってないだろうか? 今回はそれを使ってしまおう。具材は王道とも言える、マッシュルームとエビを使う。
【材料(1~2人前)】
マッシュルーム 大3個 / エビ 3尾 / ニンニク ひとかけら / トウガラシ 1本 / オリーブオイル 大さじ6 / 塩 小さじ3分の1 / パセリ / 好みでパプリカ
【手順】
(1)油、塩、ニンニクを熱する
(2)マッシュルームに火を入れる
(3)エビを入れ仕上げる
まず分量についてだが、完全に「目安」として欲しい。というのも家にある耐熱皿の大きさによって、具材もオイルの量もまったく違ってくるからだ。今回の分量は、使用した直径12センチ×高さ4センチのオーブンウエアにちょうど収まる量である。
我が家にはそれより小さなココットタイプの耐熱皿はごまんとあるのだが、これより大きなものは30センチ×18センチの大型サイズしかない。客を呼んだ時に一度そのサイズで作ったことがあるが、一瞬でオリーブオイルが一瓶なくなってしまった。レシピの分量は、今自宅にある耐熱皿次第なのである。アヒージョ専用の鍋「カスエラ」や、1人前のグラタン皿ならかなり近い数値になるかと思われるが、最後は目の前の耐熱皿と相談して欲しい。
カスエラは陶器製であり、私自身も陶器のオーブンウエアを使うのが好きだ。最近は陶芸家の個展や陶器市などで、和風テイストのアヒージョ鍋を見ることも増えてきた。しかし100円ショップなどで買ったスキレットがあるなら、それを使ってもいい。グッとカフェ感が増す。
本来は直火にかけて調理するものだが、今回は魚焼きグリルを使う。 実は私は、大の魚焼きグリル好きなのだ。魚はもちろんのこと、パンもモチも肉もキノコも、気がつくとすぐ魚焼きグリルで焼いてしまう。名古屋で経営していた飲食店を取材に来た人はみんな「そんなものまで魚焼きグリルで焼いちゃうんですか!?」と驚き、それを記事にしていたほどだ。
グリルはオーブンと思うと火が強くて使いづらいし、ものすごく汚れやすいという欠点があるため、使ってない、使いたくないという人も多い。しかし逆に見れば「オーブンと違って庫内がすぐ熱くなる」「上火がきくのでおいしそうな焦げ目をつけやすい」「高熱で素早く料理できる」などのメリットもある。比較的汚れにくいアヒージョは、魚焼きグリル入門料理としてうってつけとも言える。
魚焼きグリルがついてないキッチンの場合は、オーブントースターであれば同じようにできる。もちろん従来通り、直火で作りたい人はそれでも構わない。では作っていこう。
はじめに耐熱皿にオリーブオイルを入れる。アヒージョの主役は、オイルである。加える具材は、オイルをおいしくするための「だしの素」だと思って欲しい。つまりオイルはたっぷり、最低でも底から1センチは欲しいが、どこまで入れるかはお好みといったところ。
実際スペイン語のサイトで「GAMBAS AL AJILLO(エビのアヒージョ)」を検索してみたが、ほとんどオイルが見えないドライなタイプから、「オリーブオイルは飲み物です!」と言わんばかりにたぷたぷとオイルの海になっているものまで、レシピは様々だった。ただし初めてであれば、ちょっと多いかな?くらいが失敗が少ないかもしれない。今回は、半分にカットし包丁で叩いて潰したニンニクが隠れるくらいで約1センチだった。参考にして欲しい。
ニンニクは薄切りやみじん切りにすると焦げやすくなるため、私のようにぼーっとしがちな人は叩いて潰すくらいが危険がない。好きな大きさに切って油に沈めたら、塩も入れる。塩の量は多めを意識しよう。塩は油に溶けないため、アヒージョは塩気が効きにくい料理だからだ。
この段階でいったん、グリルへ入れて熱していく。ゆっくり加熱してニンニクの香りを油へ移していくため、火は弱め。とはいえグリルは熱が上がりやすいので、こまめにのぞいて焦げないかどうか確認する。ニンニクはすりおろしたものを使う人も多いと思うが、熱い油にこれを入れると、バチバチと跳ねて大変危険である。できるだけ生のニンニクを使って欲しい。どうしてもすりおろしたニンニクを使う場合は、マッシュルームと同時に入れるといいだろう。
ニンニク全体にいいこんがり感が出るまで熱したら、お好みでトウガラシを入れ、次はマッシュルームだ。マッシュルームは小さければそのまま。大きいものであれば、半分や4分の1の大きさにカットしておく。くつくつと震えるオイルの中へ入れたら、すぐ全体に油が回るように何度かひっくり返す。そして再度、グリルで温める。
ここから出来上がりまでは、もうすぐだ。
再度グリルへ入れて、早ければ1分。マッシュルームがしんなりし始めたらエビを入れる。オイルの海があれば中へ沈める。海というより浅瀬程度であれば、エビ全体にオイルがまとわりつくようにからめ、マッシュルーム共々よく混ぜ返す。マッシュルームはオイルをよく吸うので、油が足りなければここで適宜足しておこう。
そしてまたグリルへ戻す。数分たったら取り出し、エビの火入れを確認しつつ全体を混ぜ返す。もう一度グリルへ戻す。おそらくこのあたりで、エビにもマッシュルームにも火が入った頃合いだろう。
エビが全体に、均等に赤くなったら出来上がり。あまりいつまでもグダグダ煮ていると、硬くなるので気をつけよう。パセリのみじん切りと、お好みでパプリカの粉末をかけたら完成だ。
アヒージョの主役はオイルである。そして影の主役は、そのオイルを食べるためのパンである。パンはたっぷり用意しておくこと。バゲットの1本くらいぺろりと食べてしまうはずだ。
今回はアヒージョ界の二大巨頭、マッシュルームとエビを使ったが、ほかにもいろいろなものが合う。キノコなんてどんな種類でももってこいだし、白身魚に青魚、イカ、タコ、貝類も全部イケる。まだ試してはいないが、ゲンゲやゴッコなどもめちゃくちゃおいしそうな予感がする。
肉だってお手の物だ。鶏肉や砂肝は王道だし、豚や牛などの赤身肉もうまい。焼き鳥のハツが好きな人ならぜひ、ハツアヒージョをお試しいただきたい。地味だがめちゃくちゃうまい、私のイチオシである。オイルに入れる前に赤ワインと塩をちょっとからめておくと、よりおいしくなる。
野菜だけ、もしくは野菜と何かを組み合わせたアヒージョもおいしい。以前どこかの店で食べた「トマトとシラスのアヒージョ」はうちの定番だし、ゆっくりじっくり火を通した長ネギのアヒージョも最高だ。街を歩けば「韓国風アヒージョ」や「塩昆布入りアヒージョ」など、アレンジものも数多い。コンビニに「レンチンするだけアヒージョ」が現れる日もそう遠くはないだろう。
かつてスペインにはウナギの稚魚のアヒージョがあったが、絶滅の懸念もあるため、今では「ウナギの稚魚味のカマボコ」が代替品として人気だそうだ。つまりカニカマや、「ほぼホタテ」などの練り製品もイケるということだ。ニンニクオイルが合わない食材など探す方が難しい。今度房総へ帰省したら、マンボウのアヒージョでも試してみようか。間違いなく飲みすぎるに違いない。
(食ライター じろまるいずみ)
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