広がる男性向け洋服レンタル 「勝負スーツ」も借りる
特集 目指せ!「持たない」生活(中)
最近広がりを見せているシェアリングサービス。上手に利用してできるだけ身軽な生活を目指したい。シェア自転車を実際に利用してみた前回の「増えるシェア自転車 スマホで予約、通勤にも人気」に続き、今回取り上げるのは「男性向けのファッション・レンタルサービス」だ。服は部屋の中でスペースをとりがちなアイテムの上、特定の季節にしか着ない服も多い。必要な時だけレンタルすれば、部屋をより広く使えるはずだ。
増える男性向けのサービス
ファッションレンタルは、女性向けのサービスが多いイメージだが、最近は男性向けのサービスも充実している。
たとえばDMM.comが提供する「DMMいろいろレンタル」は、スーツやカジュアルファッションをはじめ、スポーツウエアやシューズ、ネクタイなどの小物まで幅広いアイテムをそろえている。スーツであれば、レンタル期間は最短2日間で5800円(税込)から借りることが可能だ。DMM.comの広報担当によると「近年はスーツでの出勤が当たり前ではなくなり、常時保有する必要性が減っていることから、不定期なイベントのときなどに都度レンタルする需要が増えている」。20~40代がメインで、具体的な数値は公表していないが「利用者は年々増えている」そうだ。
カシカリ(さいたま市)がサービスを提供している「KASHI KARI」は、ネクタイやカフス、チーフなど、ビジネスシーンで使う小物をメインに取り扱っており、ポールスミスやバーバリー、アルマーニなど有名ブランドのアイテムを取りそろえている。
3種類の月額制プランが用意されており、最も安いプランは3600円(税込)で同時に3アイテムまで借りられる。月額プランの利用期間中であれば、返却期限はなく、さらにアイテムは何度でも交換OKだ。
主な利用者は30~40代で、中でも金融機関や不動産業界の営業職、中小企業の経営者、大手企業の部・課長クラスなど、比較的高収入なビジネスパーソンの利用が多いそうだ。冠婚葬祭など不定期なイベントでの利用はもちろんだが、「営業先のお客様から信頼を得るために身なりを整えるというニーズが非常に多い」(広報担当者)。利用者数は昨年比で2倍に増えている。今後は、バッグやスーツケースなどの大きなアイテムや、ジャケット・パンツといったビジネスアパレルの拡充も検討している。
キーザンキーザン(大阪市)が運営する「leeap」では、担当のスタイリストがつき、LINEを使って一対一でコミュニケーションをとることができる。
LINEでは、身長や体形といったパーソナルデータやユーザーの希望を元にコーディネートの提案をしてくれる。ファッションの相談をすることも可能だ。利用者はコーディネートをしてほしい男性だけではなく、「旦那をオシャレにしてほしいという奥様からの依頼も多い」(広報担当者)。
プランは月額7800円(税別)の「カジュアルプラン」と、1万3800円(税別)の「ジャケパンプラン」の2つが用意されている。カジュアルプランはスタイリストがトップス3枚、ボトムス1枚を選び、2種類のコーディネートを作って自宅に送ってくれる。ジャケパンプランの場合は、ジャケット1枚の他にトップス2枚とボトムス1枚。やはり2種類のコーディネートが届く。
レンタル回数は月に1回(初月は2回)で、届いた服を返却すれば、翌月には新しいコーディネートを提案してくれる。コーディネートが気に入ったら、契約期間中であれば返却せずに月をまたいでレンタルし続けることも可能。また、それぞれの服を単品で購入することもできる。
LINEでファッションの相談をする
今回は、LINEでファッションのやりとりができるleeapを利用してみた。ファッションにはあまり自信がなく地味な服が多いので、スタイリストがどんな服を選んでくれるのか楽しみだった。せっかくなので、カジュアルプランとジャケパンプランの両方を試してみたのだが、具体的な手順はカジュアルプランを元に説明する。
最初に有料会員登録を行う。会員登録時には、身長や体重の他に体形や普段履いている靴、休日の過ごし方など、スタイリストが服を選ぶ上で参考にするパーソナルデータを入力していく。
会員登録が完了すると、画面にスタイリストが表示されてLINE@に登録するよう促される。コハルさんという方が担当のようだ。コハルさんを友達登録すると、LINEで一対一のやり取りがスタートする。ちなみにLINEの対応時間は、平日の11:30~13:00、15:00~17:00と、土曜の11:30~13:00だ。それ以外の時間にメッセージを送ると、スタイリストからは対応時間外という旨のメッセージが自動返信される。
スタイリストからは、初回登録の内容に基づいて、詳細な質問や確認がされる。筆者が返信すると、コーデを提案された。「カジュアルな雰囲気で使い勝手がよい遊び心のあるイメージ」ということで、普段自分で服を選ぶ時にはあまり考えないラインだが、プロが選ぶなら大丈夫だろうと思い、今回は全てお任せしてみた。なお、アイテムの具体的な色や柄などの指定はできないが、「遊び心は抑えめに」などといった具合にコーディネートのイメージを相談することは可能だ。コーデが決まって発送されると、スタイリストから改めて連絡が来る。
翌日段ボールが送られてきた。
中には、チェック柄と無地のシャツ、ボーダーのカットソー、ネイビーのパンツが入っていた。また、コーデのパターンと着こなし方が書かれた紙も入っていて、「上下をワントーンにまとめることで着痩せして見える」「上下のシルエット合わせたIラインのコーデは体形をきれいに見せてくれる」など、服を選ぶ上でためになるアドバイスもしてくれる。
周囲の反応はおおむね好評だ。「似合ってるよ」がどこまで本音かはわからないが、「いつもとイメージ違うね」という声も多く、これから自分で服を選ぶときにはもう少し冒険をしてもいいかなと思った。
コーデは写真を撮ってLINEで送るとサイズ感や着こなしをチェックしてくれる。こちらから次のコーデのリクエストをすることも可能だ。また、ファッションに関する質問や相談もLINEから行える。
時短やイメージアップなど目的は多様
各社に話を聞いていると、利用者の目的はスペースの節約だけではないことがわかる。
例えば、DMMいろいろレンタルでは、30日6800円(税込)で、20枚のワイシャツをまとめて借りられるプランもある。1カ月の出勤分で毎日交換でき、洗って返す必要がないので、「主に、忙しい一人暮らしの利用者が多く活用している」(広報担当者)。身だしなみを整えてイメージアップを図りたい人にとっては、KASHI KARIのように毎日使う必要のない高価なブランド小物が格安でレンタルできるサービスは重宝するだろう。
ファッションに自信がない人にとっては、プロのスタイリストに相談できるサービスは頼もしいだろう。いつも服選びに迷っている自分にとって、スタイリストのお勧めを自宅で聞けるのは便利だった。
男性向けのレンタルサービスと借りられるアイテムは、近年増え続けている。うまく使いこなせば、かなりの割合の服をレンタルサービスでまかなうことも絵空事ではなさそうだ。
(文 藤原龍矢=アバンギャルド)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。