ファッションも防災に役立つ 重要性増す女性の役割
東日本大震災から7年。2018年は、防災における女性の意識や役割の重要度が大きく変わる年になりそうです。「防災と女性」に焦点を当てた東京都の取り組みを取材しました。
ファッションに「防災で使えるか」の視点
3月3日、都の主催による「東京の女性が一歩踏み出す日『防災ひな祭り』」が東京ミッドタウン(東京・港)で開催されました。「女性の防災人材の育成」に向けたプロジェクトのキックオフとなるイベントです。当日は約300人が参加。会場には赤ちゃんや子ども連れの女性、年配の方や男性の姿もありました。
イベント参加者のドレスコードは「サムシングピンク(何かピンク色の物を身に付けて参加すること)」。パッと目を引く会場の特設ステージや、配布された女性視点の防災ブック「東京くらし防災」の表紙など、至る所であざやかなピンクが目に付きました。
オープニングはファッションショー。登場した5人のモデルはいずれもおしゃれな街着として違和感のない装いながら、テーマは防災です。防水・防寒性の高いブルゾンは、子ども用のウエアとファスナー同士を接続すれば親子をすっぽり包めて、避難所での授乳の際などの目隠しになります。ガーリーファッションとハードなトレッキングブーツの組み合わせは流行の甘辛ミックスですが、トレッキングブーツは危険物から足を守れて、足がむくんだら靴ひもで調整できるなど防災の観点からもメリットがあります。
大判のストールは風呂敷代わりに物を包んで運んだり、三角巾や包帯代わり、日よけや目隠し用など使い道が多く便利。薄手ならかさばらないので冬は防寒用、夏はオフィスの冷房対策用にバッグに入れておけそうです。
この日のスペシャルゲストはモデルの松島花さんと、SNS(交流サイト)コンサルタントの石井リナさん。松島さんは東日本大震災の日にヒールをはいていて苦労した経験から、いつもバッグの中に折りたためるフラットシューズを入れているそうです。防災ファッションをチェックしながら「日常も着られるおしゃれなアウトドアブランドが増えているので、楽しみながらできる防災ファッションを考えたい」とコメントしました。
その後のトークで松島さんは、東日本大震災のときにお母さんが備蓄品を寄付した話を紹介し、「自分ができることを発信していくことが重要だと思います」とコメント。石井リナさんは自身の専門分野から「災害時にスマホやSNSをどう使ったらいいか知っておくことが大事。フェイクニュースが流れやすいので安易にリツイートしないなど、情報を自分で見極めることが重要です」と話しました。
クイズ形式で防災知識を再確認したり、避難所生活による運動不足やストレス解消に役立つヨガの指導なども。忙しいと日々薄れがちな防災意識を刺激するイベントでした。
災害時に活動できる女性人材を育成
一方、女性の防災人材を育成する取り組みが18年から始まります。
都は、避難所などこれまで女性の声が届かなかった災害の現場に女性の視点を生かし、男女双方の視点に配慮した防災対策を推進するプロジェクトを進めてきました。「女性の視点からみる防災人材の育成検討会議」を17年5月に発足し、防災活動を担う女性の人材を育成するカリキュラムを検討してきました。
今年3月11日を皮切りに、女性防災人材の育成のためのセミナー(基礎編「防災ウーマンセミナー」と応用編「防災コーディネーター育成研修会」)を随時、開催していく予定です。
「防災ウーマンセミナー」の第1回を担当するのは、減災と男女共同参画 研修推進センター共同代表の浅野幸子さん。地域防災について15年間活動を続け、阪神・淡路大震災では現地で4年間、復興の支援を行いました。
浅野さんは、避難所でストレスから体調を崩す人や、盗難や暴力といった問題を目の当たりにしてきました。必要最小限のものしかなく厳しい現場の状況を見るにつけ、「もっと女性が防災の世界に入ってくればいいのに」とずっと思ってきたといいます。
「いつ災害が起きても命と健康を守るための安全な行動を取れるようにしてほしい。大きな災害のときには周囲と助け合うことが大事です。防災は、特別なスキルがなくてもできることがたくさんあり、これを皆さんと共有したいのです」(浅野さん)
セミナーの基礎編では職場および地域生活での防災の基礎知識を学びます。応用編では、職場や地域で災害時に発生する多様なニーズを解決するための知識や行動を習得するといいます。
災害が起きたときに女性は、子どもを抱えている、生理があるなどで困ったり弱い立場に置かれたりしがち。女性が自ら知識を増やし、防災の中心となって活動することの重要さをあらためて考えたいものです。
(ライター 大崎百紀、コンテンツ編集部 秋山知子)
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