夫の外見が不満です
作家、石田衣良さん
結婚して16年。夫の外見が不満です。当初は飾り気のなさが魅力的でした。しかし外見を気にしない夫に次第に腹立たしさを感じるように。おしゃれな旦那さまを連れている奥さんを見ると羨ましい。毎日モヤモヤしています。(静岡県・女性・40代)
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ストレートなお悩み、どうもありがとう。ぼくも男性のモテの半分以上はファッションが占めるということに、大人になってから気がつきました。イケメンであるかどうかがなにより重要なのはせいぜい10代まで。それ以降は顔やスタイルよりも、ファッションや会話や文化的なバックグラウンドのよしあしのほうが、はるかに重要なのです。
あなたの悩みも夫の顔形ではなく、まったく気をつかわない服装について集中しているようですね。今は40代だからまだ見られるかもしれない。でも彼にはこの先長く続くルックスの下り坂と老年期が待っています。今のうちに夫のファッション改造に手をつけましょう。だって小汚いものを身のまわりにおいておきたくないですものね。
まずあなたのセンスでこれは素敵だなというファッション小物(手袋、帽子、マフラーなど)をプレゼントしましょう。夫がそれを使ったら、相手は鈍感なおバカさんだと自分にいいきかせ、しつこいくらいにほめまくらなければなりません。つらいですが、ここはガマンです。
そうしたら、つぎはその小物にマッチする別なアイテムを贈る。まだバーゲンの残り品なんかがあるので、今がチャンスです。そうやってすこしずつ敵の領土を削りとり、あなたのセンスで染めていくのです。支配されていると気づかぬうちに、敵のファッションを実効支配する。これが戦わずして、敵を攻略する秘訣です。
そのファッションアイテムが3つ4つと増えていくと、夫の反応もまんざらではなくなっているはずです。会社の同僚や若いOLからほめられることが増えているので、身なりを整えるたのしさに目覚めてきているのです。
注意点はふたつ。この変化には2、3年はかかるので、潜入捜査員にでもなったつもりで、じっくりとさりげなく実行すること。それと敵のセンスはあなたが想像するよりずっと悪いので、あなたが素敵と考える水準の2段階したくらいからスタートすること。くれぐれもイタリア男が巻いているようなシルクスカーフなどを贈ってはいけません。
この先40年、残念な夫を連れ歩くかどうかの瀬戸際です。気合をいれてがんばってください。作戦の成功を祈ります。
[NIKKEIプラス1 2018年2月17日付]
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