かたやトップ、こなた最下位 アパホテル満足度の怪
調査結果の落とし穴(上)
自社で調査したデータやランキングを公表する企業が増えている。同じものを調べているのに相反する結果が出てくることもある。それらをどう受け止めたらいいのだろうか。結果を見る側も、調査データを見る目を養う必要がある。3回に分けて、事例から調査を考えてみよう。
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ビジネスホテルチェーン国内最大手のアパホテルの宿泊満足度をめぐって、ビジネス誌2誌のアンケート調査結果が真っ二つに割れる珍現象が起きた。『週刊ダイヤモンド』2017年11月4日号の特集「1万人が選んだ ベストホテル&エアライン」では、同ホテルの満足度は20ホテル中トップ。その1週間前に発行された『日経ビジネス』2017年10月23日号特集「ビジネスパーソンに聞く 後悔しない航空&ホテル 5000人満足度ランキング」では、同ホテルの満足度は35ホテル中最下位だった。
なぜアパホテルの満足度で正反対の結果が出たのか。その原因を探るには、ホテルの評価方法に目を向ける必要がある。
まず評価方法について。ダイヤモンドでは、直近2年間に宿泊したビジネスホテルについて、満足したホテルを上位3つ、不満だったホテルを1つ挙げる形だった。そして満足したホテルには1位5点、2位3点、3位1点を付与し、その総計でランキングしている。一方、日経ビジネスでは、「客室」「共用部」「接客サービス」「コストパフォーマンス」の4項目について、「非常に満足」100点、「満足」50点、「普通」0点、「不満」-50点、「非常に不満」-100点の5段階で評価してもらい、各項目の平均を算出。4項目の合計値でランキングしている。
トランスコスモスアナリティクス副社長の萩原雅之氏は、「ダイヤモンドの評価方法では、店舗数や宿泊経験者数の多いホテルの数字が高く出やすい。店舗数が多いアパホテルと東横インは宿泊経験者も多く、結果的に高得点になったのではないか。仮に1店舗当たりの得点を計算すると順位が大きく逆転し、アパホテルはワーストに近くなる」と指摘する。
なお本誌がダイヤモンドの調査結果について各ホテルの店舗数と得点を回帰分析したところ、決定係数(R2)は0.748と非常に強い関係を示す値が出た。ホテルの満足度は店舗数で7割方決まるイメージだ。
ダイヤモンド編集部は次のように説明する。「このアンケート調査では、出張で利用して良かったホテルを自由記述で挙げてもらっている。確かに全国展開している店舗数(部屋数)の多いホテルが上位にきやすい傾向はあるが、不満に感じたホテルが『泊まって良かったホテル』として挙がることはない。従って得票を集めたホテルは、それなりの評価が集まっていると考える」
ここでは、正誤のジャッジはしない。日経ビジネス調査も、「立地」という項目があれば、アパホテルはもしかしたら最下位を免れていたかもしれない。お伝えしたいのは、一見、真っ当そうな設計に見える2つの満足度調査で、正反対の数字が出てしまう衝撃である。調査を見る立場でも、数字を左右する別要因などに目を光らせる必要がある。
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(日経デジタルマーケティング 小林直樹)
[日経デジタルマーケティング 2018年1月号記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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