人生観が変わりそう カニざんまい、冬のごちそう温泉
キレイになれる温泉の秘密
冬の味覚の王様といえば「越前ガニ」。11月の解禁のころに注目を浴びますが、実は食通がカニを食べるのはこれから。寒くなるほどに「脂がのって」おいしくなるのです。カニにも脂がのるの? と不思議に感じるかもしれませんが、実際に口に入れてみると、とろりと広がる濃厚な甘み。この独特のうまみは、寒さのピークである2月に向かって増していくそうです。
体の芯まで温まる温泉と、とびきりおいしい旬のものは、寒さを乗り切る心と体の栄養になります。人生観が変わるほどの究極の美食を求めて冬のごちそう温泉へ出かけましょう。
目利きが選ぶ飛びきりのカニ
福井県の三国港、越前港、敦賀港、小浜港などの越前ガニ。黄色いタグ付きは極めて上質なカニの証しです。三国温泉の料理旅館「望洋楼」では、ご主人が自らセリに出掛けて確かめた、ずっしり重くて色つやがよく、うまみの凝縮したえりすぐりのカニしか出さないというだけあって、全国から食通が集まってきます。
特に三国漁港のカニの最大の特徴は、漁に出た船が夕方に港へ帰ってきて、セリは当日の夕方6時から。つまり捕ったばかりのカニが元気なうちに「夜のセリ」にかかり、すぐに宿へと運ばれてくるのです。
カニ刺しは、そのまま食べればつるりとした食感。氷水に放てば、ぱっと花開きシコシコの歯ごたえ。これは現地でとれたてのカニでないと味わえない、旅ならではの醍醐味です。かんばしい甘みが際立つ焼きガニは、カニ味噌をたっぷりとつけてぱくり。目の前で仲居さんが鮮やかな手つきでさばいてくれる熱々のゆでガニは「脂がのる」2月から3月になると、甘みとうまみがとろけるように口いっぱいに広がります。これまで食べていたカニの概念を覆す、人生観が変わるほどの美味です。
日本海の波間に漂うような露天風呂
紺ぺきの海に砕け散る真っ白な波。ダイナミックな日本海の断崖に立つ望洋楼。この宿にいると、まるで海に浮かんでいるような気分になります。10室ある部屋のうち6室が露天風呂付き。すっぽりと首まで温泉につかって、この景色を眺めていると、自分自身が海の波間に漂っているよう。
晴れた日は日本海に沈む夕日を宿から眺められます。男女別の大浴場の露天風呂はたっぷり深さがあるので、温泉で温まりながら感動のサンセットを堪能。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉。濃いめの塩がベールのように肌を覆い、身体の芯まで温めてぽかぽかが持続するので、寒い冬を乗り切るにもぴったり。
温泉から部屋へ戻った後、水平線に太陽が沈んでいく情景は、海と空が黄金色からオレンジ、あかね、紫紺へ刻々と変化し、一瞬たりとも目が離せない美しさ。うっとりと見とれているうちに、部屋には美食の膳が整えられていきます。なんともいえず幸せな旅の時間です。
料理旅館のつやつや朝ご飯
料理旅館・望洋楼のこだわりは、カニだけではありません。福井県は「コシヒカリ」発祥の地。ご主人はその中でも最高の米を求めて農家を回り、出合ったのが福井県・大野市の阿難祖(あどそ)地区で作られている「あどそ米」。福井の中でも豪雪地域である山間の土壌が育てた米を、特別にあつらえた釜で炊き、美しいツヤを放つふっくらぴかぴかのご飯で登場します。平飼いのニワトリの卵、契約農場で育てられたベビーリーフ。食の国・福井を感じる地元の幸が並びます。
温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト。日本の温泉・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅の研究家。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。
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