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ピアニスト山口友由実 ブラームス晩年に挑む

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NIKKEI STYLE

ピアニストの山口友由実(ゆうみ)さんがブラームス晩年のピアノ曲に挑んでいる。老境の渋い世界を若い感性はどう捉えるか。最後のピアノ曲集「4つの小品(作品119)」の終曲「ラプソディー」などの演奏を交え、研ぎ澄まされた傑作群の魅力を語った。

青年期と晩年に集中するブラームスのピアノ曲集

イケメン作曲家の筆頭格としてクラシック音楽ファンが常に挙げる青年時代のヨハネス・ブラームス(1833~97年)。だがCDジャケットや本の表紙に使われるのはほとんどが晩年のブラームスの肖像だ。長いあごひげを蓄え、近寄りがたい長老の風貌をしている。

「ブラームスは初期と後期とでは作風が全然違う。同じ人間でも年月を経て考えることや感じることが変わってくる」と山口さんは語る。ブラームスはドイツ北部のハンブルクに生まれ、長じてオーストリアのウィーンで作曲家として活躍した。ウィーンゆかりのピアノといえば、ブラームスも愛用したベーゼンドルファーだ。山口さんはウィーン国立音楽大学に留学し、同大学院ピアノ室内楽科修士課程を満場一致の最優秀で修了した経歴を持つ。「ウィーン留学の理由の一つ」に挙げるほどベーゼンドルファーを愛用する。ウィーンと東京を拠点に演奏活動をしている若手ピアニストとして「ブラームスは自分の中で大事な作曲家。どんな人だったか最も気になる」と話す。ウィーンを中心にしたオーストリアの風土、ベーゼンドルファー、ブラームス晩年のピアノ曲は山口さんの中でつながっている。

ブラームスのピアノ独奏曲は30歳前後までの青年期と60歳前後の晩年に集中している。作品番号1~122の全作品のうち、30番台までに3つのピアノソナタを含め11作。中期の70番台にぽつんと2作。残りはすべて晩年の110番台で、小品集ばかり4作ある。

穏やかな雰囲気の中で過ぎ去った感情を思い出す

晩年の作品番号付きピアノ独奏曲をすべて挙げると「7つの幻想曲(作品116)」「3つの間奏曲(同117)」「6つの小品(同118)」「4つの小品(同119)」となる。曲数でいえば計20曲となるが、いずれも1曲1~6分台の小品だ。

ブラームスはその後、世を去るまでに「クラリネットソナタ第1番」「同2番」(ともに作品番号120)、歌曲集「4つの厳粛な歌」(同121)、オルガン曲集「11のコラール前奏曲」(同122)を書き上げるのみとなった。いずれも滋味あふれる枯淡の傑作群だが、「ブラームスらしさが凝縮されているのが後期のピアノ曲集」と山口さんは説明する。ウィーン留学時代から好んで弾いたのが最後から2番目のピアノ曲集「6つの小品(作品118)」。「全6曲が物語のようになっている。1曲目の『間奏曲イ短調』では心の底から喜びがあふれる。個人的には2曲目の『間奏曲イ長調』に最も思い入れがある。穏やかな雰囲気の中で、過ぎ去った感情を思い出している曲。60歳くらいのブラームスの内面がよく出ている」と指摘する。ウィーン留学時に「めったにほめない先生が演奏を絶賛してくれた」と振り返る。

今回の映像で山口さんが弾いた2曲のうち1曲はこの「6つの小品」の終曲「間奏曲変ホ短調」。遠い記憶をたどるまばらな分散和音が静かなつぶやきを続けた後、中間部で青年ブラームスの激情が突如よみがえり、あふれ出す。そんな感情表現に満ちた演奏だ。

最後のピアノ独奏曲で創作力が爆発し憂愁で終わる

さらに彼女は「4つの小品(作品119)」にも挑み始めた。「無駄のない小品だが、すごく内容が濃いものが詰まっている」と話す。映像では「4つの小品」から終曲「ラプソディー変ホ長調」も弾いている。ピアノ独奏曲としてブラームス最後の1曲となる。

「『4つの小品』は最初の3曲までが前作『6つの小品』の穏やかな追憶の雰囲気を引きずっている。しかし終曲『ラプソディー』で最後の最後ともいうべき創作力の爆発を聴かせていると思う」。特に、ベートーベンの「交響曲第3番『英雄』」の調性でもある勇壮な変ホ長調から始まり、「最後に同主調の変ホ短調に急にシフトするところがすごく面白い」と指摘する。勇ましい長調で始まっておきながら、聴き手の予想を裏切るように憂愁に満ちた短調で有終の美を飾るブラームスらしさ。「長調から短調への転換というショックを与えられた感じをピアニストとしてどう出すか、追求しがいのある曲だ」と語る。映像では明るい変ホ長調の和音が高らかに鳴り響く冒頭部分と、「急激に暗く陰りながらも、深いものがある」という終結部の両方を山口さんが練習するシーンを捉えている。

1月19日にはヤマハ銀座コンサートサロン(東京・中央)で「山口友由実ピアノサロンコンサート」を開く。そこで「4つの小品(作品119)」全曲をついに披露する。このほかツェムリンスキー「デーメルの詩による幻想曲集」やシューベルト「ピアノソナタ第13番」などウィーンと新春にちなんだ演目が並ぶ。

青春の激情や憧憬を凝縮した晩年のピアノ小品

「ブラームスは非常に独自の作曲家だと思う」と山口さんは語る。ほかの作曲家の演目と並べるとその独自性は際立つ。「ピアノの枠を超えた音楽。とても交響的だ」と指摘する。右手でメロディー、左手で伴奏といったピアノ曲とは一線を画している。

山口さんのブラームス作品の演奏を見ていると、複数の指先で同時に鍵盤を押さえるシーンがとても多い。単音のメロディーではなく、和音の塊が1音であるかのように動き回りながら、シンフォニックな音楽を生み出していく。「ピアノという楽器の可能性を高めた作曲家」と彼女は敬愛の念を示す。初期と後期にピアノ曲が集中しているのも、30代後半から50代にかけては4つの交響曲やバイオリン協奏曲など大規模な管弦楽曲に心血を注いでいたからだ。初期のブラームスはピアノ曲でも大作志向で、規模の大きなピアノソナタを書いていた。しかしベートーベンに匹敵する交響曲を書いた後は「研ぎ澄まされ凝縮された作風に変わった。そこに魅力を感じる」と話す。彼女は「ブラームスの晩年の小品群と初期の大作志向の曲の両端から迫り、作曲家の実像を捉えたい」と抱負を語る。

もっとも、ブラームスは意外にも声楽曲の比重が高い作曲家であり、特にピアノ伴奏の歌曲を生涯にわたって書き続けた。ピアノが加わる室内楽曲や器楽曲も数多くあり、こうした作品にも「ピアニストとして取り組んでいきたい」と山口さんは話す。

イケメンの青年期には大作を書く長老に憧れ、長老風情の晩年には青春の激情や憧憬を詰め込んだ小品に傾倒したブラームス。「人生をかけてすべて弾きたい」と山口さんが意気込む晩年のピアノ小品には、ブラームスの若々しいセンスが奇跡のように光っている。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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