インスタ映えカフェ、隣はお墓 築地本願寺が終活支援
東京・銀座のすぐ隣、築地のシンボルともいえる築地本願寺。浄土真宗本願寺派の直轄寺院であり、外国人観光客も多く訪れる都心のこのお寺が大きく変わろうとしています。「ひらかれたお寺」を目指して、10年間で40億円を投じるプロジェクトを進行中。「終活」のスタイルが大きく変わりそうな施設が11月にオープンしたと聞いて、訪問してきました。
「仏教的」朝食がおすすめのカフェ
築地本願寺は、前身である江戸・浅草御堂の創建から数えると400年の歴史があります。本堂は、インドの古代仏教建築様式を取り入れた独特の外観で有名です。その本堂の横に「築地本願寺インフォメーションセンター」なる施設がオープンしました。
1階に入っているのが「築地本願寺カフェ Tsumugi(ツムギ)」。運営元はプロントコーポレーションです。片面ガラス張りで光が差し込む明るい空間は、座席数82と広々。朝8時から11時までは朝食メニューもそろえます。阿弥陀如来の四十八願の根本の願い「第18願(本願)」にかけて、16種類のおかずとおかゆ、味噌汁の全18品がつく「18品目の朝ごはん」(税込み1944円)は、色とりどりのおかずがいかにもインスタ映えしそうです。
「京都産あられと宇治抹茶の和グラノーラ~カプチーノ風~」(税込み918円)は泡立てたホットミルク添え。グラノーラにかけたホットミルクが、食べ進むうちに抹茶ホットミルクになって二度楽しめるメニュー。他にも、親鸞聖人が好んだという小豆を使った限定商品やスイーツも充実。仏教女子は特に楽しめそうです。夜は午後9時まで営業。アルコールメニューもあるので会社帰りにも立ち寄りたくなります。
カフェ横の「オフィシャルショップ」には仏事関連商品のほか、匂い袋、らくがんなど築地本願寺オリジナル商品30種類がそろいます。女性が日常使いしたくなるおしゃれな雑貨も多く、外国人観光客ならお土産にもよさそうです。
2階フロアにあるのが「築地本願寺ブックセンター」。仏教書を中心に約3000冊がそろいます。しかも無料Wi-Fiが用意されていて、本願寺出版社の電子図書(現時点では50点ほど)を、手持ちのパソコンやスマートフォンから無料で読むことができます。
カフェにショップにブックセンターと、ついつい長居しそうな空間ですが、忘れてはなりません。ここはお寺です。今回のプロジェクトで注目すべきは、「築地本願寺合同墓」の開設です。
都心の合同墓と「ひらかれた」会員組織
カフェの大きなガラス窓から望める、美しい芝生の上の小高いオブジェのような施設。それが新しくできた「合同墓」です。自分の死後にお墓の管理を頼める人がいない人や、子どもはいても面倒をかけたくない人、諸事情で家族とは別の墓に入りたい人などの需要を想定した、個人単位で生前申し込みが可能な永代墓です。「永代使用冥加金」は30万円から(年間管理費不要)。宗教や宗派を問わず、誰でも申し込むことができるといいます。
最近話題の安価な合同墓では、他の人のお骨と混ぜられてしまうことがありますが、ここではそれぞれお骨袋に入れて合同区画に収蔵されます。「個別保管」というサービスを選べば、最大32年間は個別に保管されます。合同墓は、礼拝堂がある1階が101平方メートル。全部で4万8000基のお骨が収蔵可能だそうです。
築地本願寺は同時に、門信徒以外にも対象を広げた会員組織を発足。一般的な「菩提寺-檀家」という硬直的な制度とは異なる、ゆるやかな組織です。会員を対象に、仏事だけでなく相続や遺言作成などの相談も受け、ワンストップで専門家を紹介する「人生サポート」サービスも開始しています。
都市部で暮らす人の多くが、お墓が遠い、管理が大変、維持費がかかるといった悩みを抱えています。特に女性は、既婚未婚にかかわらず最後は「おひとりさま」になる可能性が高く、お墓についてリアルに考える人が多いよう。築地本願寺でも、都心の合同墓へのニーズが高いのは都市部で暮らす女性であるとみているそうです。
いきなり終活というのは敷居が高い。ならば取りあえず早起きをして、お寺のカフェで朝ご飯を食べてから出勤しましょうか。広々とした境内を散歩して、朝日や夕日を浴びるだけでも気持ちよさそうです。
(ライター 大崎百紀)
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