2度目からのタイ 「特別な体験」をバンコクで楽しむ
タイは、2016年の年間外国人旅行者数が3259万人。日本からも約144万人と過去2番目に多い人数が訪れ、人気の旅先だ(2016年、タイ国政府観光庁調べ)。中でもリピーターが多いのが首都バンコク。アジア屈指のグルメトレンド、従来の観光に満足できない顧客に向けた特別な旅行体験など、新しいバンコクの魅力をピックアップした。
年末にはミシュランガイド バンコク版も
バンコクには、成田・羽田・関西・新千歳・中部・福岡・那覇から、フルサービスおよびLCC(格安航空会社)のエアラインが直行便を運航している。2度目からのタイ旅行は、リゾート地であるプーケットやサムイ島、ホアヒンや世界文化遺産のあるアユタヤへ足を延ばすという人も多い。だがバンコクには、リピーターも飽きさせない多様な魅力があるのだ。
800万人を超える人口を有するアジア有数の大都市圏は50もの区に分かれ、定番の観光スポットだけでも1度の訪問で回りきるのは難しい。南北を走るチャオプラヤ川のほとりにたたずむ暁の寺(ワット・アルン)、黄金の涅槃(ねはん)仏で有名なワット・ポー、王宮やエメラルド寺院(ワット・プラ・ケオ)などの美しい寺院の数々。いったいいくつの店舗が並ぶのかと驚くチャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットなどのローカルな市場もあれば、ショッピングモールに高級デパートが立ち並ぶエリアも。
そして、リピーターにも探求しがいのあるのがバンコクのグルメだ。2017年の「アジアのベストレストラン50」アワードでは、バンコクのインド料理レストラン「ガガン」が3年連続でトップを獲得。他にも8軒のレストランがランクインし、バンコクの食のレベルの高さを見せつけた。
しかし、ガガンは次なるステップに向けて、20年に閉店するとオーナーがアナウンスしており、スタイリッシュでクリエーティブな料理を味わうのは今のうちだ。さらに、17年12月には初の「ミシュランガイド バンコク版」の刊行が予定されており、どんなレストランが星を獲得するのか楽しみ。バンコクのグルメ事情は要チェックなのだ。
バンコク最大の老舗ホテルが変身、体験提供に注力
旅行者数の増加を背景にホテルも増えている。米不動産大手ジョーンズ・ラング・ラサールの予測によると、バンコクのホテルの客室数は、17年から19年にかけて、さらに7400室も増加するという。
数あるバンコクのホテルの中でも、37階建て、1360室と最大の客室数を誇るのが5つ星カテゴリーのバンコク・マリオット・マーキス・クイーンズパーク。老舗のインペリアル・クイーンズパークが2年の歳月をかけて改築、16年12月にアジア初の「マリオット・マーキス」ブランドとして生まれ変わった。
最大1100人が収容可能な大宴会場をはじめ、35もの会議スペースがあり、MICE(マイス:国際会議や企業の報奨旅行、展示会など)需要に対してバンコクならではの提案をしている。例えば、ウエルカム・レセプション・パーティーでは2つあるプールのうち1つを貸し切り、タイの水上マーケットのようにココナツを載せた小さなボートが水上を漂う。プールサイドにはタイの屋台が並び、中には昆虫食の屋台や、ココナツミルクのプディングを行商スタイルでサービスする屋台もある。まるでタイのローカルエリアで過ごしているような演出だ。同ホテルでは、このようなタイならではの特別な体験の提供に力を入れている。
また、宿泊回数などに応じてポイントを付与し、特典が得られる「リワードプログラム」で、部屋のアップグレードや無料宿泊サービスなどに加えて、ユニークな体験プログラムを提供している。
マリオットは、さまざまな分野のトップが講演を行うTEDと16年から提携。アジアでは初めてのTEDサロンをここバンコクで開催した。また、米ユニバーサル・ミュージック・グループとも提携、グラミー賞にノミネートされた人気ロックバンド「イマジン・ドラゴンズ」を17年9月、バンコクに呼び、同ホテル内の特設会場で400人限定のライブを行った。どちらも、リワードプログラムのポイントを使って応募する顧客向け(一部、一般応募枠もあり)のサービスだ。
宿泊施設としてだけでなく、タイの伝統・文化や他では得られない特別な体験の提供の場となっているこうしたホテルの登場が、アジアの誇る観光最先端都市バンコクにまた一つ、魅力を付け加えているように思えた。
ムエタイ体験や、タイシルクを知るミュージアムも
他にも、タイの伝統を実感できるユニークなアクティビティーは多く、リピーターにはおすすめだ。例えば今回、ホテルでムエタイジムの協力によるムエタイ体験に参加した。ムエタイを観戦したことはあっても、実際にミットをはめて取り組むというのはなかなかない機会だろう。筆者も生まれて初めて試してみたが、最後にはスパーリングらしきものまでやって、爽快そのもの。キックやパンチで思いきりストレス解消できる。バンコクには、こうした体験のできるムエタイジムが数多い。
タイといえば美しいシルクのテキスタイルを思い浮かべる人も多いだろう。その代表的ブランドがジム・トンプソン。バンコクに本店を置き、スワンナプーム国際空港をはじめ、高級デパート内に数多くの支店がある。スカーフやネクタイ、小物雑貨などもあり、しゃれたお土産として重宝されている。
そんなタイ伝統のテキスタイルをより深く知ることができるのが、「ジムトンプソン・ハウス」(Jim Thompson's House)だ。
ブランドの創設者ジム・トンプソン氏は、元はアメリカの情報将校(いわゆるスパイ)で、タイに移住してからシルクに魅せられ、タイシルクを復興させた人物。1967年にマレーシアで謎の失踪を遂げる直前まで住んでいた家は、タイの伝統建築様式で、彼が収集したアユタヤの仏像などすばらしい古美術品がそのままに置かれている。自由見学ではなくガイドと一緒に25分間のツアーで回る形式。今までテキスタイル製品に触れることは多かったが、シルクの美しい発色や独特なセンスの原点を見た思いでたいへん興味深かった。
まだまだ、グルメもホテルも進化しそうなバンコク。2度目には、タイの伝統・文化にちょっと踏み込んだ旅が面白い。
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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