コンビニ・スーパーで入門 クラフトビール最初の5本
ここ数年、クラフトビールの人気が非常に高くなっている。東京商工リサーチによると、日本の小規模醸造所は、2010年以来、毎年、前年比で出荷量を増やしている。また、クラフトビールの本場アメリカからの輸入量も、16年は前年比22.6%増となった。人気の背景は、なんといっても味わいが多彩で、かつ品質が高いことだ。
クラフトビール人気の盛り上がりを受けて、今ではコンビニやスーパーでも高品質なクラフトビールが気軽に買えるようになった。
ただ、「クラフトビールってよく分からないし、本当に美味しいの?」と思っている人もいるだろう。そこで今回は、クラフトビールのサイトを運営する筆者が、コンビニやスーパーで購入可能な23種類のクラフトビールから、これぞクラフトビールというビールを5種類紹介する。まずは、ここで紹介する5種類のビールを飲んでクラフトビールの世界を味わってほしい。
個別のビールを紹介する前に、少しだけ基礎知識を説明しておこう。
ビールには細かく分けると約100種類ほどもある。ビールの種類のことを「ビアスタイル」という。例えば、日本の大手メーカーが造っているビールの多くのビアスタイルは、「ピルスナー」だ。今回は5つのビアスタイルごとに1つのビールを紹介する。こういったビアスタイル名を覚えるのが、クラフトビールを理解する近道だ。
おなじみの「ピルスナー」も一味違う
最初に紹介するビアスタイルは「ピルスナー」。ピルスナーは、チェコ生まれで低温で発酵するラガー酵母を使う。大手ビールメーカーのビールに代表される透明感のある黄金色で、真っ白な泡と爽快な苦み、そして喉越しの良さが特徴のビールだ。しかし、ビアスタイルこそ大手メーカーと同じであっても、クラフトビールのピルスナーの味わいはかなり違う。その代表が、Mikkeller(ミッケラー)のMikkel's Dream(ミッケルズドリーム)だ。
ミッケルズドリームは、大量のホップが詰まった米国流のピルスナー。香りをかいでみると、ホップ由来のグレープフルーツやオレンジを思わせるかんきつ香が、まるでボクシングの連打のように襲いかかる。口に含むと、シャープな苦みがボディーブローのように効き、苦みが引いた後には爽快感がやってくる。喉越しの良さ、飲んだあとのキレの良さはピルスナーならでは。ミッケルズドリームを飲むと、いままでのピルスナーとはまったく違っていて、クラフトビールの醍醐味が実感できる。
ビール名:Mikkel's Dream(ミッケルズドリーム)
ブルワリー名:Mikkeller(ミッケラー)
アルコール分:4.6%
原材料:麦芽・ホップ
ビアスタイル:アメリカンピルスナー
購入場所できるコンビニ、スーパーの例:成城石井
ホップの爽やかな香り豊かな「ペールエール」
ペールエールはイギリス生まれ。赤銅色で、ホップの爽やかな香りとエール酵母が作り出すフルーティーなアロマが楽しめるビールだ。ピルスナーが好きな人なら、次のステップとして、ペールエールを飲んでみるのが、クラフトビールへの入門として王道かもしれない。
ヤッホーブルーイングのよなよなエールは、2017年9月、発売開始20周年記念でレシピをリニューアル。クラフトビールで最も良く使われるかんきつ系の香りが印象的な「Cascade(カスケード)」というホップの特徴が良く出ている。
「よなよなエール」をグラスに静かに注ぎ、ゆっくり鼻をグラスに近づけると、グレープフルーツやオレンジを搾ったときのようなフレッシュなかんきつ香を感じる。口に入れたら、ほんの少し口内にとどめてから飲み込んでみよう。口の中にもいっぱいに爽やかなかんきつ香が広がるはずだ。クラフトビールのスタンダードならこのビールだ。
ブルワリー名:ヤッホーブルーイング
ビール名:よなよなエール
アルコール分:5.5%
原材料:麦芽・ホップ
ビアスタイル:アメリカンペールエール
購入場所できるコンビニ、スーパーの例:ローソン、スーパー・ライフ、成城石井
クラフトビールで1番人気の「IPA」
IPA(インディア・ペールエール)は英国生まれ。米国で新たな進化を遂げて、クラフトビールで最も人気のあるスタイルとなった。一説には、米国のクラフトビールの出荷量の半分は、IPA関連のビールであるともいわれている。
グレープフルーツやオレンジなどかんきつ系の香りを持つホップが大量に使われ、香りのインパクトが強く、苦みもかなりある。この苦みが癖になるのだ。アルコール度数も総じて高く、飲み応えもある。
「FLYING IPA」は日本の地ビール第1号のエチゴビールが作るIPA。缶のタブをプシュっとした瞬間にあふれ出るかんきつ香。鼻を近づけるとレッドグレープフルーツの果実を感じる爽やかさが力強くぐいぐい押してくる。口に含むと、レモンの皮をかじったかのようなシャープな苦味。アフターは長く、鼻に抜けていくかんきつと、舌を心地よく刺激し続ける苦味が、スーッと引いていく。これは癖になるビールだ。
クラフトビールがなぜ人気があるのか知りたいときに飲みたい1本。
ブルワリー名:エチゴビール
ビール名:FLYING IPA
アルコール分:5.5%
原材料:麦芽・ホップ
ビアスタイル:IPA
購入場所できるコンビニ、スーパーの例:成城石井
華やかでスッキリした後味「セゾン」
セゾンはベルギー生まれのビアスタイル。セゾンスタイルの幅は広いのだが、一般的にはベルギー由来の酵母を使って醸造したビールのことをいう。酵母由来の華やかさとスパイシーさを感じる香りと、ドライでスッキリした後味が特徴だ。
ヤッホーブルーイングの「僕ビール、君ビール。」は、セゾンスタイルの特徴に加えて、ホップを効果的に使って、酵母の香りとホップの香りを重層的に仕上げている。なお、缶のデザインから、愛称「カエル君」とも呼ばれている。
色は淡いオレンジ色。香りはレモンの皮やミントを思わせる爽やかさだ。口に入れると、ほのかな酸味としっかりした苦味が実に心地いい刺激を与える。飲み終わったあとは、口の中が洗い流され、きれいになったかのような爽快感を感じる。アフターには、スーっと苦味が戻ってきて、2度楽しめる。
ピルスナーとは、ひと味違う爽快感が味わえる。
ブルワリー名:ヤッホーブルーイング
ビール名:僕ビール、君ビール。
アルコール分:5%
原材料:大麦麦芽・小麦麦芽・ホップ
ビアスタイル:セゾン
購入場所できるコンビニ、スーパーの例:ローソン、ナチュラルローソン、成城石井
苦みが苦手な人に飲んでほしい「ベルジャンホワイトエール」
ベルジャンホワイトエールはベルギー生まれ。通常の麦芽以外に麦芽に加工していない麦と、コリアンダー、オレンジピール(オレンジの皮)を加えて発酵させる。加工していない麦の影響でやや濁りが見られる。スパイスとオレンジの香りが特徴的で、苦みはほとんど感じられず、飲み口の良さが素晴らしいビールだ。
常陸野ネストは、世界50カ国以上に輸出されている海外でもっとも有名な日本のクラフトビール。なかでも「ホワイトエール」は、ビールのオリンピックともいわれる「ワールドビアカップ」で2度も金メダルを受賞している。
色は少し濁りのある薄いミカン色。香りはコリアンダーのスパイシーさをまとったオレンジ。口に入れると、苦みはほとんど感じず、ほのかな酸味が心地いい。アフターは、鼻に抜けていくオレンジのフレーバーが特徴的だ。スイスイ飲めて、後味が良く、食事にも合わせやすい。白ワインの代わりとして飲んでもいい感じだ。
ビールの苦みが苦手だという方に、飲んでほしいビールだ。
ブルワリー名:常陸野ネスト
ビール名:ホワイトエール
アルコール分:5.5%
原材料:麦芽・麦・ホップ・コリアンダー・ナツメグ・オレンジピール・オレンジジュース
ビアスタイル:ベルジャンホワイトエール
購入場所できるコンビニ、スーパーの例:ローソン、ナチュラルローソン、成城石井
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コンビニやスーパーで買える特徴的なクラフトビールを5種類紹介した。気になるビールはあっただろうか。
今回、紹介した5種類のビール以外にも、20種類以上のクラフトビールがコンビニやスーパーで購入できる。是非、いろいろなクラフトビールを試してみてほしい。読者のお気に入りのビールが見つかることを祈っている。
2011年5月にクラフトビールのおいしさに目覚める。それを多くの人に伝えたいとWebサイト「クラフトビール東京」を開設。東京近郊のクラフトビールの店を紹介し続けている。
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