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ソプラノ幸田浩子さん「ばらの騎士」を語る

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NIKKEI STYLE

ソプラノの幸田浩子さんが9年ぶりにリヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」に出演する。英グラインドボーン音楽祭との提携による二期会創立65周年・財団設立40周年記念公演で。通算3度目となる富豪ファーニナルの一人娘ゾフィー役だ。5月にはCDデビュー10周年を記念し初のベストアルバムも出した。日本を代表するソプラノがベストな今の歌手活動を語った。

今だからこそできる3度目のゾフィー役

「もう足が青タン(青あざ)だらけ。テーブルの上にドンと載せられて、降りて、また載って。練習するうちにこんなになっちゃって」。幸田さんは柔らかい声で歌うように立ち稽古の様子を語る。7月26~27日と同29~30日に東京文化会館大ホールで開かれる二期会のオペラ「ばらの騎士」東京公演。幸田さんが演じるゾフィーは、父親の政略結婚の企てによってオックス男爵の婚約者にされながら、ばらの騎士として現れた青年貴族オクタヴィアンと恋仲になる。始まったばかりの稽古だが、ゾフィー役の演技はかなりの運動量のようだ。

幸田さんがこの心揺れ動く若い娘を演じるのは今回が3度目。最初は2003年に催されたギュンター・クレーマー演出の二期会公演。次はびわ湖ホールなどでの08年公演。「またかと思って『今回もゾフィー役なんですね』と関係者に念押ししてしまった。まだこの役を任されてもいいのかなと。でも前回から10年近くたってもこの役をできる喜びがある」と話す。

彼女がいま最高と考える歌手の活躍にも励まされた。「先日たまたま米メトロポリタン歌劇場(MET)のライブビューイングで『ばらの騎士』を見たら、メゾソプラノのエリーナ・ガランチャが、劇中のオクタヴィアンとちょうど同い年の17年2カ月、オクタヴィアン役を演じてきたと言っていた」。17歳の青年を17年かけて演じてきた歌手に触発され、「私も今だからこそできるゾフィー役を発見し、表現しようと思った」と意気込む。

幸田さんがいま考えるゾフィーとはどんな役なのか。作品中では題名役でありズボン役と呼ばれる「ばらの騎士」ことオクタヴィアンこそが、メゾソプラノにとって憧れの役ではある。これに対しゾフィーは「ばらの騎士に恋をし、初めて愛を知る。初恋ゆえのもろさや弱さが出る一方で、初めて人に愛されたところからくる強さもある。このオペラは女性がいちばん成長するショッキングな瞬間を切り取っている。少女が女性になる瞬間を表現する役どころだ」と語る。

リヒャルト・シュトラウスの管弦楽と歌の魅力

「リヒャルト・シュトラウスは大好きな作曲家」と幸田さんは言う。マーラーとともに「世紀末ウィーン」の代名詞であり、後期ロマン派を代表する作曲家。「ツァラトゥストラはかく語りき」「英雄の生涯」などの交響詩を次々に作曲した後、オペラに軸足を移し、「サロメ」「エレクトラ」「影のない女」などドイツ語オペラの傑作を生み出した。「『ばらの騎士』は彼と(台本を書いた劇作家で詩人の)ホフマンスタールがタッグを組んで作り上げた夢のような作品。芝居を愛してやまない2人が作ったこのオペラには舞台作品のいいところが全部詰まっている」と幸田さんは指摘する。

彼女がこのオペラの魅力としてまず挙げるのはオーケストレーションだ。「リヒャルト・シュトラウスが生み出した管弦楽には官能美のようなうねりがある」。幸田さんは宮本亜門氏が演出したオペラ「魔笛」でパミーナ役を演じるなど、モーツァルト作品を得意とし、「もともとモーツァルトが大好き」な人だ。「モーツァルトが年を取ったらこんな人になったのではないかと思うくらい、リヒャルト・シュトラウスの音楽にはモーツァルトが持っていた透明な光みたいなきらめきがある」と説明する。

加えて「こんなに歌手を理解している人はいないと思われるほど、歌うほどに声もパフォーマンスもどんどん乗ってくる作品になっている」と歌の魅力も指摘する。幸田さんは東京芸術大学声楽科を首席で卒業し、同大学院を修了。伊ボローニャに留学するとともに、ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約を結ぶなど、ウィーンに住んだこともある。「自分が暮らしたウィーンの街を思い出す。古き良き、美しいウィーンがこのオペラには凝縮されている」と話す。

今回の「ばらの騎士」は、英国屈指のオペラ音楽祭「グラインドボーン音楽祭」との提携公演。演出は英国生まれの世界的演出家リチャード・ジョーンズ氏。管弦楽はセバスティアン・ヴァイグレ氏の指揮による読売日本交響楽団。演出の特徴について幸田さんは「香り」を挙げる。「ゾフィーがオクタヴィアンから銀のばらを渡される場面があり、台本には本当に香りがすると書いてある。ゾフィーはびっくりして『本物のばらのように香りがするのね』と言う。オクタヴィアンは『これはペルシャの香水で、本当のばらのオイルを1滴垂らしてあるんだ』と答える」と幸田さんは香りをめぐる情景を説明する。「この作品はいろんな香りにあふれている。第1幕は古き良き匂い。第2幕は新車の革の香り。第3幕はお化け屋敷みたいな場末のキャバレーの感じ。舞台から香りを本当に嗅ぐことはできないが、視覚や聴覚に加えて臭覚の表現も楽しめる演出になっている」と語る。

今回の映像は6月29日、二期会による立ち稽古の様子を捉えている。体育館を転用した稽古場の真ん中には、大きすぎるベッドがでんと横たわっている。「ばらの騎士」の第1幕は、不倫関係にある元帥夫人とオクタヴィアンとのベッドシーンから始まるのだ。

CDデビュー10周年のベスト盤に込めた思い

この日の稽古は第3幕。場末の居酒屋か宿屋のような場所が舞台なのだが、稽古場には巨大なベッドが部屋そのもののように置かれたままだ。ゾフィーは目が悪いという設定で、幸田さんはメガネを掛けている。「私もすごく目が悪いけれど、今はコンタクトレンズ。これはダテメガネ。夜はいつもメガネを掛けているので、慌てて連れてこられたらメガネをかけたままという場面の設定はよく分かる」。日本オペラ界のヒロインがメガネを掛けている様子は貴重な光景だ。「ゾフィーが恋人のオクタヴィアンを見るとき、彼女はさっとメガネを外す。女心だなあと思う。そうやってメガネをしまう場面があるので、見つけてくださいね」と幸田さんは話す。

久しぶりにゾフィーを演じる幸田さんだが、今年は彼女のCDデビュー10周年でもある。5月24日には10周年記念として初のベスト盤「マイ・ベスト・セレクション」(発売元:日本コロムビア)を出した。これまでリリースした7枚のアルバムから彼女自身が15曲を選んで組んだ。「7枚のCDごとに思いが込められているので、各曲がそれぞれのCDを聴いてもらえる扉になればいいなと思う」。プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」やモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」などオペラから「アメイジング・グレイス」や「花は咲く」まで様々な歌が、リリックソプラノと呼ばれる彼女の表情豊かな声で聴ける。

もちろん彼女はオペラ歌手として実際の舞台を大切にしている。「お客さんと生で共感するのは私にとって最も重要なこと」と話す。しかし一方で「10年前に初めてCDを出したときには全然分からなかったけれど、今にして思えば、入院していたり、仕事が忙しかったり、劇場に来られないお客さんもたくさんいる」。劇場に足を運べない人たちが音楽と共にありたいときに「私のCDが何かの役に立てればうれしい」。舞台で、そしてレコーディングで、人々が音楽と共にあるために歌手として何をすればいいか、円熟味を増すベストな時期にそう考えられるようになった。「音楽っていいですよね、歌っていとおしいですよね、という気持ちを伝えられたらいいな」。話し言葉も歌に劣らず美声である。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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