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個性派シャンパン「RM」 地酒感覚、飲み比べ愉しむ

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皆さんは、シャンパンと聞くと何を思い浮かべるだろうか? お祝いの席の乾杯酒、彼女にプロポーズするときの強力な武器、そしてドラマのなかの小道具などなど。特別な酒で普段飲むものではない、というイメージを持っている方が多いだろう。

しかし、シャンパンを日常飲まないのはもったいない。スティルワイン(非発泡性ワイン)とは違い、どの料理にも抜群の相性を示す。そしてシャンパンの銘柄はたくさんあり、それぞれが個性的な味わいを持ち、多様な愉しみ方が可能で実に面白い。

シャンパンは、パリから東に150キロメートル、アルザス地方の西隣となるシャンパーニュ地方で、厳格に定められた基準の製法で造られたものだけに与えられた名称である。その地にブドウ栽培農家は1万5000軒程あり、その中でシャンパンを製造しているのは2000軒程。そして、比較的大規模のシャンパン製造業者はメゾン、あるいはシャンパンハウスと呼ばれ、300程ある。そのシャンパンハウスがさらに2種類に分けられている。

一つは、ブドウを栽培農家から買い付けて醸造・熟成を自社で行うネゴシアン・マニュピュラン。ボトルのラベルにはNMの記号が表記される。モエ・エ・シャンドン、ブーブクリコ、クリュッグ、ボランジェなどの大手メーカーがこれに当たる。

NMシャンパンハウスは農家から買い付けたブドウをブレンドして醸造し、数キロもある地下のトンネルで熟成させており、生産量は半端ではない。一番の巨人はモエ・エ・シャンドンだ。

生産量2位はブーブクリコ、3位がニコラ・フィアットだ。日本酒の石数に換算すると、22万~5万石と灘や伏見の大手酒造メーカーと同じくらいの生産量だ。しかし、価格が日本酒の数倍なので、売り上げでは日本酒は全くかなわない。

もう一方は、丹精込めて自家栽培したブドウを原料として醸造・貯蔵まで行う一貫生産者でレコルタン・マニュピュランと呼ばれており、シャンパンボトルのラベルにはRMの記号が記載される。家族経営の小規模なところが多い。最上のブドウは自分のところの原料に回し、残りは大手シャンパンメーカーに売っているところもある。生産量は数万~十数万本のところが多く、日本酒の石数で換算すると数百石と、地酒メーカーと同程度だが、こちらも価格は日本酒の数倍なので売り上げは比較にならないほど大きい。

さらに、日本酒業界と似ている点がある。「大手メーカー」のNMは安定して自社製品の味を出すことを品質の目標と掲げており、色々な農家が栽培したブドウをブレンドしたり、貯蔵していたヴィンテージの違うシャンパンをブレンドしたりして、安定した味わいを出す。それでシャンパンではヴィンテージを表示していないものが多い。

「地酒」のRMの方は逆にそれぞれのシャンパンハウスの個性が豊かで、しかもヴィンテージシャンパンでは収穫年による違いが顕著。なので、個性的な日本酒の地酒が好きな私にとっては、RMのシャンパンはとても面白く感じられる。

RMシャンパンを知ったのは、今から20年くらい前のこと。神楽坂の串焼きの名店だった「三田」で初めて飲んで、その芳醇で個性豊かな味わいにびっくりした。それに細かい泡が口の中を洗っていくような爽快感があり、まるで天使が口の中で踊っているようだった。それまでは、大手メーカーのNMシャンパンしか飲んだことがなかったので、新鮮な驚きと深い興味を覚えた。

そんなことがあった後、たまたまパリに出張する機会があったので、シャンパーニュを巡りシャンパンハウスを訪問する計画を立てた。三田のご主人にその話をすると、「それなら適切なアドバイスをしてくれる人を紹介しましょう」ということになって、お目にかかったのが、個人ワインインポーターの田口朝一さん。ブルゴーニュやシャンパーニュのシャンパンハウスを巡り、数々の銘酒を日本に紹介してきた方だ。その田口さんから、いくつかのRMシャンパンハウスの情報を教えてもらった。

早速、アポイントをとってシャンパーニュを数人の仲間と一緒に訪問した。現地に着くと、左右にブドウ畑が広がるのどかな美しい風景に目を奪われた。そこに大小のシャンパンハウスが点在している。数軒訪問した結果は、期待以上。どのシャンパンハウスも個性豊かで、醸造設備も違えば味も違う。シャンパンの完成度が高いシャンパンハウスとそうでないところとの差も大きい。これは日本酒の地酒にも見られる傾向だ。

アイ村にある、特級の格付けのアンリ・グートルブ(Henri Goutorbe)を訪問して試飲をしたときは、その繊細だが芳醇な味わいで、きめ細かい泡が爽快感を生んでいることに感動して、その後何度か訪問するようになった。あるときはグートルブ家のランチに招待され、マダムが手料理でもてなしてくれたこともあった。

もう一つとても気に入ったRMシャンパンハウスは、コート・デ・ブラン地区ベルチュ村にあるラルマンディエ・ベルニエ(Larmandier Bernier)。1級の格付けのベルチュ村と特級のクラマン村などに数カ所のブドウ畑を所有していて、無農薬で栽培している。とても綺麗で芳醇な味わいにびっくりして、思わず数本買って帰り、空港でそれを入れるスーツケースをわざわざ購入した想い出がある。

シャンパンの格付けはボルドーやブルゴーニュとは全く異なる。格付けは村単位で行われる。グランクリュ(特級)村のブドウの品質を100%としたとき、ほかの村のブドウの品質をパーセントで表示する。90~99%がプルミエクリュ(1級)となる。例えば、特級の100%はモンターニュ・ド・ランス地区のブージー村、バレ・ド・ラ・マルヌ地区のアイ村、コート・デ・ブラン地区のクラマン村など17村、1級の90~99%では40を超える村が獲得している。

もともと、村単位に格付けを行ったのはブドウ栽培農家の保護のため。寒い厳しい気候のシャンパーニュでブドウを安定して栽培することは難しく、ブドウ価格の暴落がたびたび起こっていたので、それを安定した価格で取引できるようにする目安としてパーセント表示の格付けを行ったのだ。現在ではブドウの取引は自由になり、必ずしも価格には反映されていないが、村の栽培品質を評価する目安にはなっている。しかし、同じ村でも畑が違えばブドウの品質は異なるので、この格付けの評価はあくまで平均的に見た場合である。

シャンパンハウス訪問を重ねることで、醸造の現場をいろいろと観ることができた。シャンパンでは原料となるブドウは3種類が主なもの。黒ブドウのピノノワール、ピノムニエ、それに白ブドウのシャルドネだ。ピノノワールはブルゴーニュの銘醸赤ワインの原料、シャルドネは同じく白ワインの原料となっているものと同じ。それらのブドウを圧搾して発酵させるまでのプロセスは、通常のスティルワインと同様。それ以降の瓶内2次発酵をさせる点がシャンパン醸造法の特徴だ。

シャンパンの醸造過程は、次のように手間暇かけたものとなるように法規制で定められている。

手摘みのブドウ収穫、丹念なブドウの選別、ゆっくりと圧力をかけてブドウの皮の影響がないようにした圧搾、不純物を沈殿させて除去してからの1次発酵、ブドウの種類、畑の違い、ヴィンテージの違いなど各種のキュベ(1次発酵したワイン)の性質を見極めた調合と続き、さらに瓶詰してから酵母を添加して2次発酵させる。

その2次発酵で発生した澱に対して、ボトルを水平に寝かした状態から徐々に逆向きに傾け、さらにボトルを回転させて澱を瓶口に集めていく。澱熟成の12カ月を含む最低15カ月の熟成が義務付けられているが、各シャンパンハウスはさらにその数倍の時間をかけて熟成させる。澱は最後に瓶口を凍らせて内部の圧力で除去する。そこに「門出のリキュール」と呼ばれる糖分をワインに少量混ぜたものをボトルに入れてコルク栓をするが、この門出のリキュールの添加量によって、辛口から甘口の度合いが調整されるのだ。

NMとRMの違いは、収穫を自社で行うかどうかということと、調合の段階などで安定した味を目指すか、個性的な味を目指すかということといえる。

ラルマンディエ・ベルニエでは、門出のリキュールを加えないか、加えても極めて少量にしている。ブドウが持っている本来の味を、そのまま出すことを目標にしているためだという。またリキュール添加を少なくすることで、熟成したときのうまみが深まる効果があることも教えられた。実際に現地で購入してきた特級畑クラマンのヴィンテージシャンパンを数年後に飲んだが、繊細な味わいはそのまま綺麗に枯れてきて、実に深みのあるうまみを感じた。

RMは、食前酒よりも食中酒として料理と合わせると楽しみが倍化する。さらに、フランス料理にはもちろん合うが、和食にもよく合う。寿司や天ぷらなど江戸前の濃い目の味わいに、RMシャンパンの芳醇なうまみがとてもよくマッチするのだ。また、RMシャンパンの繊細な泡は、焼き鳥やウナギの脂の後味をすっきりさせてくれる。中華料理にももちろん合う。

日本ではまだあまりメジャーとはいえないRM。でも、自分好みの個性豊かな銘柄を見つける楽しみを知ってしまうと、必ずやRMのとりこになってしまうだろう。

(芝浦工業大学特任教授 古川修)

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