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「スーパーカーを手に入れたい」という幼い頃の夢を、段ボールで実現した大人がいる。宮城県石巻市の梱包資材メーカー、今野梱包の今野英樹社長だ。家業を継ぎ、3代目社長に就任して間もない2011年3月、地元・石巻市を東日本大震災が襲った。今野氏を奮い立たせたのは、子どもの頃に憧れた高級スーパーカーをつくること。夢の車「ダンボルギーニ」に託した思いと、その原点を聞いた。

◇   ◇   ◇

小学生の頃、100円玉を握りしめて駄菓子屋へ通いました。「ガチャガチャ」を回して、カプセルに入ったスーパーカー消しゴムを集めるのが楽しみでした。一番好きだったのは「カウンタックLP400」。ドアが縦方向に開く近未来的なデザインは、ガキの頃の私には十分な破壊力でした。

地元にスーパーカーがやってくるという話を聞きつけ、見に行きたかったけれど、行けなかった。「いつか本物に乗りたいな」「でも、難しいだろうな」という思いは、心の中にずっとくすぶっていました。専門学校を卒業してすぐ国産車のディーラーに勤めたのも、車好きが高じてのことです。

新規事業を探し求めて試行錯誤した

長男ですから、家業を継ぐのかなという思いはあっても、大人になればなるほど事業の将来に夢を抱けなくなってもいたんです。当時は主に物流で使う木製のパレットを作っていましたが、1社との取引が全体の99%を占める状態で、相手が「安くしてくれ」と言えば、値段を下げざるを得ない状況でした。

先代社長のおやじは根っからの職人肌で、いわゆる「守り」は得意でも、「攻める」ことには腰が引けていた。私は反対に「攻める」ことしか考えない性格ですから、おやじとは反りが合いませんでした。

それでいったんはディーラーに勤めましたが、創業者である祖父が他界したのをきっかけに22歳で実家へ戻り、家業を手伝うことに。間もなく、売り上げがガタ落ちする出来事があり、「このまま1社だけに依存していたら将来はない」と危機感を覚えました。

新規事業を開拓するにあたり、最初は木炭に着目しました。パレットをつくるのに木材を扱っていましたから、製材で出る木片を原料に木炭をつくれば、水質改善や土壌改良など環境資材としても使えると思ったのです。ところが原材料は入手できても、いい売り先が見つからない。ならば社名にもある「梱包」の世界で何か新しい挑戦はできないかと発想を切り替え、探したあげくたどり着いたのが、「トライウォール」という強化段ボールでした。

工場を見学し、その場で直談判した

トライウォールは1952年、米国で開発されました。3層構造から成る、非常に強度のある強化段ボールで、日本では74年から各地の代理店が製造販売を請け負っています。

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