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卵なのに濃厚鶏ガラスープと肉の味 フィリピンの珍味

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NIKKEI STYLE

「あなたの国のおいしいものを教えて」。

外国人にそう聞かれたら、人はさまざまな意図を持っておススメの食べ物を教える。ある人は自分が本当においしいと思っている大好きなものを。ある人は庶民が普段から食べているB級グルメ的なものを(例:牛丼、タコ焼き)。ある人は見たとき、食べたときの相手のリアクションを期待して(例:納豆、梅干し)。

フィリピン人に冒頭の質問をしたらおそらく10人中6~7人はこう答える。

「バロット!」(タガログ語で「Balut」)

そして、そう答えた人の意図は……。全部だ!

バロットとはアヒルの有精卵を孵化する直前にゆでたもの。殻をむくと黄身と白身が……ではなく、ヒヨコちゃんになりかけのものが「こんにちは!」とばかりに姿を現わす。ハッキリいってかなりグロい。

日本でも鶏卵、特に有精卵は精がつく食べ物として知られているが、バロットもフィリピンでは滋養強壮剤的な存在だ。「庶民のバイアグラ」なんて呼ぶ人もいる。大人だけではなく育ちざかりの子どもも、栄養たっぷりなおやつとしてよく食べるらしい。

発芽しかかった「発芽玄米」や、モヤシやカイワレ大根など種子が発芽した「スプラウト」類も種子にはないビタミンやミネラルがあるという。卵もまた孵化しかけのほうが卵にない栄養素が含まれるのかもしれない。

バロットは庶民の手軽なおやつなので、レストランでは食べられない。自転車に乗って「バローーッ! バローーッ!」と言いながら売り歩くおじさんか屋台で買うことができる。日本でいうなら「石焼き芋」のようなものだろうか。

おじさんは発泡スチロールの箱にバロットを入れてやってくるのだが、バロットの殻には鉛筆やマジックでなにやら数字や記号が書いてある。

数字や記号は卵が産まれてから何日目のものかの目印。フィリピン人は「17日目のものをちょうだい」とか「私には18日目のものを」と日数をご指名で買う。だいたい16~18日目が食べごろ。

当然、日にちがたつほどにヒナの形に近くなる。なかには19日を過ぎた羽根がちょっぴりはえかけたものが好きという人も。それぞれに好みの食べごろの日数があるのだ。

私は語学留学のためにマニラに2カ月くらい住んでいたことがあるのだが、あるフードコートでバロットの屋台に遭遇したことがあった。一人で10個くらい買っている人がいたので、「家族へのお土産かなぁ」と思って見ていたら、その場で全部平らげていた。

一人10個って食いすぎだろ。精つきすぎだろ、それ。どんだけバロット好きなんだよ、フィリピン人。とはいえ、納豆嫌いな日本人がいるように当然、バロット嫌いなフィリピン人もいる。私が通っていた英語学校にもバロットが嫌いな先生がいたっけ。

そうそう、バロットの食べ方には「お作法」がある。

まずは卵の丸いほうをスプーンの背でコンコンと叩いて殻を割り、小さな穴を開ける。その穴に塩を少々入れる。そして、その穴に口をつけ、中のスープをちゅーっとすする。

決して普通のゆで卵食べるときのようにいきなりむいてはいけない。おいしいスープをのがしてしまい、まわりの人に「このド素人めが!」という視線を投げかけられる。

スープを飲んだら、普通のゆで卵のように殻を割って塩をかけながら食べるのだ。

と偉そうに説明しながら、実は留学していたときには一度もこのバロットを食べたことがなかった。もちろん存在は知っていたのだが、その見た目にチャレンジする勇気がなかったのだ。

しかし、その数年後、はからずもチャンスがやってきた。フィリピンの美しい白浜のリゾート、ボラカイ島に結婚する前の夫と一緒に旅行に行ったのだ。すると、ビーチに「バローーッ!」とバロット売りのおじさんがやってきた。過去に10年のフィリピン駐在経験のある夫は「あ、バロットだ!」と大喜び。

そして私に聞いた。「あなたも食べる?」

夫(当時の彼氏)の仕事は海外駐在が多い。未来の駐妻(私のことだ)としては環境適応能力があることをここでアピールしておかねばならぬ。

「うん!」

そう答えて勇気をふり絞って食べることにした。まずはお作法通り、卵に小さな穴を開けて口をつけ、ちゅーっとスープをすする。

「う、うめ~!」

この味は何かに似ている。

「鶏ガラスープだ!」

孵化しかかっているので骨も形成されつつあるためか、いいダシが出るのだ。次に殻をむく。

うわー、表面に赤い血管できてるよ~。確か一番おいしいといわれる18日目のバロットだったと思うが、さらに殻をむき進めるとヒナの形がくっきり。あぁ、せっかくここまで育ったのにごめんなさい、ヒヨコちゃん!

おそるおそる身も食べてみる。

「わー、濃厚!」

たとえるならば「ものすごく黄味の味が凝縮された茶碗蒸し」。鶏ガラスープと鶏肉と卵が一緒になった味なワケで(ま、茶碗蒸しはカツオだしだけど)。めちゃめちゃウマいじゃないですか。フィリピン人が10個食うのも納得だ。

むさぼり食う私に夫は言った。

「あなたもけっこう残酷なんだね」

バロット同様のものはベトナムでは「ホビロン」、カンボジアでは「ポンティアコーン」という名前で食べられている。チャンスがあればぜひ味わってほしい。

(ライター 柏木珠希)

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