Surfaceにモバイルノート 使いやすく意外と安価
マイクロソフトは2017年5月26日、Surfaceの新製品を一挙に3シリーズ発表した。人気Windowsタブレットの新モデルとなる「Surface Pro」のほか、全くの新機種となる13.5型タッチ対応モバイルノート「Surface Laptop」と、28型液晶一体型デスクトップ「Surface Studio」だ。
今回発表された3シリーズに、17年4月に新モデルを追加した13.5型2イン1デバイス「Surface Book」を合わせて、タブレットからデスクトップまで4シリーズがそろうことになる。種類が増えてややこしくなってきたが、どんなモデルがあるのか、どんな人に向いているのか。ここではモバイルノートのSurface Laptopと液晶一体型デスクトップのSurface Studioを紹介する。
新OSと価格に注目の「Surface Laptop」
「Surface Laptop」は13.5型のノートパソコンだ。ディスプレーはタッチ対応でペン入力にも対応するが、タブレット型に変形するわけではない。2イン1ではなく、普通のクラムシェル型モバイルノートだ。高級感のあるデザイン、14.5時間の長いバッテリー駆動時間、OSにWindows 10Sを搭載することなどが特徴だ。4色のカラーバリエーションがある。17年6月15日に予約開始で7月20日に発売する。
一般向けモデルの価格は、Core i5、4GBメモリー、128GBのSSDを搭載するモデルで12万6800円から。13型クラスのモバイルノートとしては価格が安いのも魅力となっている。
教育市場に向く「Windows 10S」
Surface Laptopは、OSにWindows 10の新しいエディションである「Windows 10S」を搭載しているのが大きな特徴だ。これはWindows 10の上位エディションであるWindows 10 Proをベースに、Windowsストアに登録されているWindows 10S対応アプリ以外はインストールして使えないように制限をつけたOSだ。
主な目的は教育市場への売り込みだ。欧米ではGoogleのChrome OSを搭載したChromebookと呼ばれるパソコンが、価格の安さや管理のしやすさ、起動の早さなどから人気を集めている。これに対抗するためのOSがWindows 10Sだ。アプリのインストールを管理することで、学校向けのパソコンとしてセキュリティーを確保しやすくなる。また起動も高速化されている。Surface Laptopだけでなく、他のメーカーからもWindows 10Sを搭載した、Chromebook対抗の安価なパソコンが登場してきそうだ。
ではSurface Laptopは学生にしか魅力がないのかというと、そうではない。Windows 10SはWindows 10 Proにアップグレードでき、そうすればWindows 10 Pro搭載モバイルノートとして使える。本来は有料のアップグレードだが、2017年内は無料でできるので、購入したらアップグレードするのがおすすめだ。ちなみに、Windows 10 ProからWindows 10Sには戻れない。
普通のモバイルノートが欲しい人向け
Surface Laptopをモバイルノートとして見ると、バッテリー駆動時間が動画再生時で最大14.5時間となっているのが魅力だ。重さは1252g(Core i5搭載機)で、1kg前後が多い13型クラスのモバイルノートとしてはやや重い。
ディスプレーの解像度は2256×1504ドットで比率が3:2なのも魅力と言える。13型モバイルノートはフルHD(1920×1080ドット、比率は16:9)液晶搭載のものが多く、それに比べて解像度が高い。また横長な16:9のディスプレーよりも、3:2の方が使いやすいと感じる人もいるだろう。このほかWindows 10の生体認証機能「Windows Hello」に対応したカメラを搭載し、顔認証でサインインなどができる。屋外で使い紛失などの恐れもあるモバイルノートでは、生体認証によるセキュリティー機能は重要だ。
注意したいのは拡張性で、拡張端子は標準サイズのUSB3.0、Mini DisplayPortのみとなっている。Surface ProからmicroSDカードスロットを省略した形で拡張性は低いが、Surface Proシリーズ用の拡張ドック「Surfaceドック」を利用できる。
Surface Laptopをタブレット型のSurface Proと比べると、画面サイズが大きく見やすいこと、膝の上に安定して置いて使えるなど、モバイルパソコンとして使いやすいことが魅力と言える。タブレットより普通のノートパソコンの形がいいという人は、こちらを選ぶべきだ。そして同じノートパソコン型の「Surface Book」と比べると、こちらの方が薄型軽量で持ち歩きやすいこと、価格が安いことが魅力と言える。
クリエーター向けの「Surface Studio」
「Surface Studio」は28型の液晶一体型デスクトップパソコンだ。台座部分とディスプレーはヒンジでつながっていて、ディスプレーを浅い角度で寝かせた状態からほぼ垂直の状態まで動かせる。17年6月15日発売で、一般向けモデルの価格は38万4800円からと、かなりの高級機だ。
最大の特徴は大型ディスプレーだ。解像度は4500×3000ドットで4Kを上回り、非常に精細だ。ペンも付属し、ディスプレーは1024段階の筆圧検知に対応する。寝かせたディスプレーをキャンバスにして、ペンでイラストなどを描きたい人に向いている。
液晶一体型デスクトップは日本のNECや富士通が得意とする分野だが、主に録画再生ができるテレビチューナーや音質にこだわったスピーカーなどを搭載するAV機器寄りのパソコンとして販売しており、Surface Studioとは全く方向性が異なる。画面サイズも24型が中心だ。アップルのiMacも液晶一体型デスクトップだが、ペン入力には対応していないしディスプレーを寝かせることもできない。
Surface Studioのライバルは、高性能なデスクトップパソコンと液晶ペンタブレット(液晶ディスプレーにペンで手書き入力できる機能を加えた機器)の組み合わせだろう。たとえば27型のiMac(17万8800円から)にワコムの27型液晶ペンタブレット(26万円前後から)を組み合わせると、Surface Studioぐらいの価格になる。そうした組み合わせの購入を考えている人向けのパソコンと言えるだろう。
(IT・家電ジャーナリスト 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2017年6月1日付の記事を再構成]
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