ライフコラム

子どもの学び

虫を食べちゃう植物、どうつかまえるの?

2017/6/16 日本経済新聞 夕刊

スーちゃん この前、テレビを見ていたら、葉や茎(くき)にとまったハエやガを上手(じょうず)に食べる植物が紹介されていたよ。「食虫植物(しょくちゅうしょくぶつ)」と呼んでいたけど、どんな植物なのかな。動物でもないのに、どうやって虫をつかまえるのかな。

■ネバネバ、落とし穴…葉ではさむのもあるよ

森羅万象博士より 小さな生き物をとらえて栄養にする能力がある植物を食虫植物というよ。「食肉(しょくにく)植物」ともいう。日本のほか、東南アジアや南米、オーストラリアなど、温暖な地域に多い。世界に500種類以上あるそうだよ。

 日本では、尾瀬(おぜ)(福島・群馬・新潟県)の湿原などにモウセンゴケという食虫植物がいる。わき水からできる池の周辺などにはタヌキモの仲間が生えていて、ムシトリスミレもいる。

 食虫植物にはいろいろな種類があるけど、自然界では虫をつかまえて栄養にしないと枯れてしまう。だから、虫をどうやってとろうか、とてもよく考えたんだ。驚くような戦略がいくつもあるよ。

 1つが「ねばりつき式」だ。葉の表面がネバネバし、その部分にとまった虫が動けなくなる。モウセンゴケやムシトリスミレがこの方式で虫をつかまえるんだ。葉や茎から接着剤のような液体を出す。とまった虫を葉で巻き込み、動けなくする食虫植物もある。液体には、虫を溶かす消化(しょうか)の働きがあるよ。

 ごはんを食べると、しばらくするとおなかがすいてくるよね。胃の中でごはんを小さく分解し、栄養分を吸収しやすくしているんだ。食虫植物も同じように時間をかけて虫を溶かし、栄養にしてしまうよ。

 別の戦略に「落とし穴式」があるよ。ウツボカズラやサラセニアなどだ。

 葉が筒の形になっていて、甘い香りを出したり、フタのようになった部分から蜜(みつ)を出したりするんだ。引き寄せられたハエなどが筒の内側に落ちると、脱出(だっしゅつ)するのが難しい。

 葉の内側にワックスのような物質がついていて、ツルツルすべるんだ。筒の中には液体が入っている。ハエの体を溶かして、栄養分を吸い取る。

 「はさみ込み式」もおもしろいよ。北米原産のハエトリグサ(ハエトリソウ)が有名だ。

 はさむ葉の内側にはトゲのような毛があって、虫が触れると葉がピタリと閉じて逃がさない。虫が一度だけ触った時には開いたままで、もう一度触れるとようやく閉じるんだ。虫が確実にいると思ったときにつかまえるんだね。まるで「間違い防止」機能だね。閉じた葉は、時間がたつとまた開くんだよ。

 このほかに、タヌキモのように袋状の部分に触れるとフタが開いて吸い込む方式もある。

 食虫植物が虫とりに使う道具は葉や茎だよ。花には葉のように虫をとる構造がないから、虫は自由に動き回れるよ。花には花粉を運んでくれる虫がやってくるから、食べちゃうわけにはいかないんだ。感心しちゃうね。

 食虫植物がつかまえるのは、ハエやガなどの虫が多い。ただ、栄養分さえとれれば虫である必要はないんだ。大きなつぼのような形をしているウツボカズラなどには、小さなネズミなどがつかまることもあるそうだよ。

 虫が少ない場所では、葉に落ちた動物のふんや落ち葉を溶かして栄養分にする食虫植物もいるよ。葉から出した蜜でネズミに似た小動物をおびき寄せ、ふんをしてもらうんだって。

 それにしても、なんで虫をつかまえるようになったのだろうね。植物は、生きるのに必要な糖分を太陽エネルギーを使う光合成(こうごうせい)でつくるよ。でも、それだけでは足りないから、土の中の栄養分を根から吸っている。

 食虫植物は栄養分が少ない場所で生きてきたんだ。食虫植物にも根はあるけど、栄養分が不足してしまうから、進化して虫をとる能力を手に入れたと考えられているんだよ。

 たとえば熱帯の土は窒素やリンなど植物の体をつくるための栄養分がとぼしい。他の植物は暮らせないけど、食虫植物ならば生きていけるよ。気温が低すぎなければ育つから、食虫植物は世界中で見かけるよ。

 野生の食虫植物は環境破壊(はかい)や地球温暖化(おんだんか)などによって大きく数を減らしているよ。食虫植物が生えている場所は特別な環境だから、みんなが関心を持って大切に守れるといいね。

■自宅で育てられる種類も

博士からひとこと 食虫植物は自宅でも簡単に育てられる種類がある。代表的なのはサラセニアやハエトリグサ(ハエトリソウ)、モウセンゴケなどで愛好家は多い。園芸店やホームセンター、通信販売などで買える。
 多くは多湿を好む。土が乾き過ぎないよう注意しないといけない。受け皿に2センチメートルほど水をためて鉢を置く「腰水(こしみず)」という手法が効果的だ。空気の乾燥を嫌う種類も多いようだ。
 一般に食虫植物は寒さに弱いので、部屋の中でも窓のそばなどなるべく日当たりの良い場所で育てたり、寒すぎることがないよう部屋の温度を調節したりしよう。
 食虫植物だからといって、必ずしも虫だけが栄養分というわけではない。チーズなどを食べる種類がある。ただし与えるものによっては植物が枯れてしまうので、おすすめできない。葉を閉じる種類は、手で触れて何度も開閉を繰り返すと弱って枯れてしまうので注意が必要だ。

(取材協力=奥山雄大・国立科学博物館植物研究部研究員)

[日本経済新聞夕刊2017年6月10日付]

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