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清水監督が米版『呪怨』で配ったカワイ怖い台本カバー

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NIKKEI STYLE

『呪怨』(2003年)で日本のホラー映画に新風を吹き込み、04年にはハリウッドリメーク版『The Grudge』(邦題は『THE JUON/呪怨』)で全米興行成績2週連続1位に輝き、実写映画では日本人初の快挙として脚光を浴びた清水崇監督。今も国境を越えて映画作りを行う彼の、こだわりの仕事道具、歩んだ道とは。まず『呪怨』の怨霊・伽椰子が描かれた「台本カバー」の話からスタート。この台本カバーはビジネスライクなハリウッドへの「反抗」から生まれたモノだった。

オリジナルの台本カバー、スタッフ全員にプレゼント

「これは06年に、アメリカ版『呪怨』の続編『The Grudge2』を撮るときに、スタッフ、キャストに配ろうと、オリジナルで作った台本カバーです。

アメリカには、そもそも冊子状にされた台本はないんですよ。バラバラの紙を配って、セリフが変更になったりしたら、その都度、色の違う紙に印刷して配るというスタイル。ただ、『The Grudge2』は日本での撮影も多く、スタッフ、キャストもアメリカ人と日本人が交ざっていたので、ページの片側は英語、片側は日本語という形で台本にしたんです。『これを配るなら、台本カバーがあるといいな』と思って、このカバーを作りました。

イラストも、僕が描いたんです。せっかく作るなら、かわいくて怖いものにしたいなと思って。文字は『呪怨』と『The Grudge』と日本語と英語を交ぜたデザインで描いています。この白い部分、紺の上に白を乗せるのではなく、紺から色を抜いて、白を出しているんです。線が剥がれたり、消えたりしにくいように。

中面には定規などを入れられるポケットを作り、厚い脚本にも薄い脚本にも対応できるようにマチを作るなど、工夫しています。それも自分でサイズを測り、イラストと一緒に提出して、業者に作ってもらったんです」

ハリウッドのスタッフグッズ、脇役や助手はもらえない

制作業者は、台本カバー(ブックカバー)を作る会社ではなく、清水監督が好きなファッション雑貨を作っている会社にオファーするというこだわりよう。当然、予算はかさんだという。

「これ1個作るのに、けっこうかかりましたね。しかも、スタッフ、キャスト全員に配りたかったので、何百個も作った。ハリウッド映画だから実入りも大きいだろうと見越して作ったんですけど、それにしてもずいぶんかかりました(笑)。でも、みんなの分を作りたかったんです。

アメリカでも、スタッフジャンパーやバッグを作って配るんですよ。でも、もらえるのはメインキャストやメインのスタッフだけで、脇役や助手さんの分までは作らない。『The Grudge』の撮影で、それがビジネスライクというか、日本人からすると冷たい感じがして嫌だったんです。だから続編では、チームとしてまとまってもらうためにも、みんなに配りたかった。

アメリカ人も面白がって使ってくれましたし、日本人スタッフも大事に使ってくれましたね。今でもたまに、使ってくれている人に出くわすんですよ。この前も、一緒に仕事をした録音部さんが持っていて、『何で持っているんですか?』と聞いたら、『実はカミさんが監督と仕事をしたことがあって。いいなと思って、俺が取っちゃった』(笑)。うれしいですね、そういうふうに使ってくれているのを見ると。

自分も、今でもこの台本カバーを使っています。新作『こどもつかい』(6月17日公開)の撮影でも使いました。クランクインに向けて資料を挟んだり、貼ったりしていくと、だんだん厚くなる。それを見ると、やる気になりますね。『さあ、いよいよ撮影に入るぞ!』って」

ハリウッドでの映画撮影が「初めての海外」だった

03年に公開された『呪怨』は、単館系作品としては異例の興行収入5億円のヒット。世界20カ国以上で公開された。その才能を高く評価したのが、『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』シリーズで知られるサム・ライミ監督。04年には、サム・ライミプロデュースのもと、『呪怨』のハリウッドリメーク版『The Grudge』を撮影し、清水監督は全米デビューする。しかし同じ映画作りでも日本とは全く違うビジネススタイルに戸惑ったという。

「ハリウッドに進出したいなんて考えたことはなかったです。ハリウッドリメークの話も最初は断ったんですよ。海外に行ったのも『The Grudge』の撮影のときが初めて。プロデューサーに『パスポートって、どこにいけばもらえるんですか?』と聞いたぐらいなんです。それを知ったアメリカのプロデューサーが、『お金は出すから、日本の英会話教室に行ってくれ』と。低予算とか言いながら、なんてゆとりがあるんだ、と思いました。

アメリカでは、いろんなところで、日本との文化の違いを感じました。例えばアメリカでは、プロデューサーから『一つのシーンをいろんなアングルから撮っておいてくれ』と言われるんです。それは、監督とモメて降板されたりしても、プロデューサーが好きなように編集できるようにするため。日本では、そんな撮り方はしないです。

あと、アメリカは契約社会で、俳優の拘束時間もガッツリ決まっているので、ドア to ドアで俳優の時間を計りながら撮影をしていました。スタッフも同じです。日本だと撮影が深夜におよんでも、『今日は朝になるなぁ』とか言いながら、みんながんばってくれる。でも向こうでは1時間ごとにチャリン、チャリンとオーバータイムのお金が発生するので、プロデューサーが青い顔をして打ち切ろうとするんですよ。『シミズ、今日はここまでにしてくれないかなぁ』って(笑)。

一番困ったのは、俳優がリハーサルには本気で取り組もうとしないことです。日本の俳優さんと仕事をするときは、リハーサルで気持ちを盛り上げていって、『そろそろいいな』というベストタイミングでカメラを回し、本番。でもハリウッドは湯水のようにフィルムを使ってきた人たちだから、日本人のように『フィルムがもったいない』という感覚がない。最近はフィルムではなく、データの時代だから、なおさらです。『カメラが回ってないのに、どうして本気で芝居しなきゃいけないの?』みたいな感覚がある。『何だこいつら!』と思いましたね(笑)。『アメリカではみんなこうなんだよ』ってプロデューサーに諭されながら撮影します」

そんな苦労を経ながらも完成した『The Grudge』は2週連続で全米興行成績1位を獲得。日本のニュース番組では、タキシードを着て大きなリムジンに乗り込む清水監督の姿が華々しく報道された。

「帰国したときにみんなから『すごいな!』とか言われたんですけど、『え、何が?』って感じでした。アメリカにいた自分は日本でのニュースを見てなかったので、全然、実感がなかったんです。プレミアでの本場のレッドカーペットやリムジンには感動しましたけど(笑)。

それがきっかけなのか、いまだに日本にいるとよく聞かれますね。『いつアメリカに帰るんですか?』って。いやいや、ベースは日本なんです。『日本にいますから、一緒に仕事しましょうよ』と話すんですけど、メジャーリーガーのように、向こうに住んでいると思われている。

アメリカとの仕事では、最近、スカイプを使うことが増えました。打ち合わせだけでなく、オーディションでも使うことがありますね。

オーディションは、本当は直接会って、人となりも含めて見たいんです。でも時間がないときは、一次や二次はスカイプで中継して見たり、収録したオーディション映像を送ってもらったり。そのときに、芝居の前後をカットして、短く、見やすいように編集してくれるスタッフがいるんですけど、それでは芝居の後の、素の表情が見えない。だから『前後も付けて送ってくれ』というと、『わざわざ切って見やすくしたのに、ヘンなことを言うなぁ』みたいな反応をされますね(笑)」

実はカワイイものが好き

ホラーのイメージが強く、「ポスターやチラシも、いつも黒くされてしまう」と笑う清水監督。だが台本カバーのイラストのように、本来は「カワイイもの」が好きなのだという。

「高校生の頃から『MOE』という絵本や詩の雑誌を毎月購読していて、『来月はムーミン特集か』とか、楽しみにしていました。児童書の怪談本とかも好きでしたけど、読むと夜、眠れなくなってしまう。だから子どもの頃はホラー映画なんて見たことがなかったし、見たくもなかったです。作っている大人も、見ている人も、頭がおかしいんじゃないかと思ってた(笑)。

初めてホラーを見たのは、中学2~3年のときです。友達に『ホラーにも名作があるから、見た方がいい』と言われて、みんなで『ゾンビ』や『悪魔のいけにえ』、サム・ライミ監督の『死霊のはらわた』とかを目を覆いながら見たんです。少しずつ楽しみ方を知って。そこからですね、ホラーに慣れていったのは。

そして大学で演劇を専攻し、助監督をしながら映画美学校に通っていたとき、課題で短編を作ることになったんです。まず撮りたい作品の脚本を書いて、そのなかで一番見せたいところを撮って、3分のビデオ作品として提出しなさい、という課題。

そのとき僕が書いた脚本は、サスペンスでした。ただ、それを推敲(すいこう)しているときに、『あ、この人が生きていたら面白いかも』『この人が幽霊になって出てきたら?』と考えて書き直していたら、結果的にジャンルがホラーになっていたんです(笑)。

それで幽霊が出てくる場面を撮って出したら、講師だった黒沢清監督が、『君はすぐ、何か監督した方がいい』とプロデューサーを紹介してくれて。それがきっかけでホラー映画を撮ることになり、『呪怨』につながって、気がついたら『ホラーの人』みたいになっていました(笑)」

近年はハリウッド映画も撮りながら、日本で3Dや4DXなどの最新技術を生かした意欲作を発表している清水監督。後編「清水崇監督、全米1位の秘密は個性、ユーモア、下ネタ」では、その頭脳を"カバー"している必需品、そして海外で仕事をする秘訣を教えてもらった。

清水崇
 1972年生まれ、群馬県出身。シャイカー所属。大学で演劇を専攻し、ドラマや映画の助監督を経て、2001年『富江re・birth』で劇場映画デビュー。03年に『呪怨』『呪怨2』がヒット。04年にはUSリメーク版『The Grudge』(邦題『THE JUON/呪怨』)でハリウッド進出。実写映画では日本人監督として初となる全米興行成績1位を獲得した。以降、『ラビット・ホラー3D』(11年)、初の4DX限定映画『雨女』(16年)などを手がけ話題に。近作に『魔女の宅急便』(14年)などがある。

『こどもつかい』

子どもが突如失踪した3日後、怨(うら)まれていた大人が謎の死を遂げるという事件が連続発生。取材を始めた新人記者は、恋人が子どもに怨まれていると知り、奔走する。そんな2人の前に、謎の男「こどもつかい」が現れた。監督・清水崇 脚本・ブラジリィー・アン・山田、清水崇 出演・滝沢秀明、有岡大貴、門脇麦、西田尚美 6月17日(土)全国ロードショー

(ライター 泊貴洋、写真 藤本和史)

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