悪い知らせのとき 日本人が気をつけたい3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(31)「NO」を伝える
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は同僚の提案が採用されなかったことを伝える場面です。
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同僚が提案したプロポーザルがどうなっているか気にしています。もしあなたが、その結果を知りえる立場であれば、いつまでも知らん顔をできません。では、どう伝えるのが正しいのでしょうか。あなたが選ぶ言葉ひとつで、同僚は断った相手に対して不快な気持ちを抱きかねません。
Did you hear anything about my proposal? 私のプロポーザルについて何か聞いていますか?
正しい訳:却下されました。
影の意味:だめっだった(あなたがダメだから)。
「断る」にもいろいろな言葉がありますが、reject はその中でも非常に強い響きのある言葉です。悪い知らせをする場合にはreject は避ける方が無難です。また主語にも注目しておきましょう。却下されたり、断らたりしたのは your proposal であり決してyou ではありません。Your proposal got rejected. であれば、比べて少し柔らかく聞こえます。
正しい訳:社長が断りました。
影の意味:社長が受け付けませんでした。
プロポーザルが受け入れられなかったとき、2つの場面が考えられます。「社長はきちんと目を通したけれど、その結果として断ってきた」。そうではなく、「社長は最初から目を通すことさえ断った(The president refused to look at it.)」 に聞こえる可能性もあります。refuseもやはり強い言葉です。
正しい訳:社長はこの申し入れを辞退しました。
影の意味:社長は(公式に)辞退しました。
「断る」の意味を持つdecline ですが、同じ「断る」でも正式な申し入れや招待を辞退する場面で使われる言葉です。この場面ではピントはずれになります。
これなら「影の意味」はない!
残念ながら受け入れられませんでした。
turn down は「拒否する」の意味を持っていますが、reject, refuseに比べれば、ソフトで客観的なニュアンスがあります。「受け入れない」という意味にもなります。相手の気持ちを慮った I'm sorry, をつけるだけで意味がぐっと変わります。
残念です。受け入れられませんでした。
acceptは「受諾する/受理する」の意味です。「断る」よりも「受け入れられない/受理されない」の方が、柔らかさが出ます。
社長は許可したかったのですが、できなかったと言っています。
… couldn't approve it には「断り」の中にも 「本当は許可したい気持ちがあったのにできなかった」というソフトなニュアンスがあります。断られた相手や話を伝えるあなたではなく、社長本人が主語になっているところもポイントです。
あなたが知らない本当の使い方 ―― approve
・We heartily approve of this policy change. この政策変更を私たちは高く評価します。
*heartily approve of:~に心から賛意を示す、~を高く評価する
・I made a mistake by giving him my knee-jerk approval. 彼に何の思慮もせず認可を与えてしまったのは間違いでした。
*knee-jerk は、足の診断をするときに、膝を叩くと反射的に足が上がることを指しています。反射的な動作であり、「何も考えずない/反射的な/思慮に欠ける」の意味で knee-jerk approval で「内容などを吟味しないままの承認」となります。
・The company got in trouble for selling non-approved drugs. その会社は非承認薬を販売したことでトラブルに見舞われました。
*approved drug:承認薬 non-approved drug 非承認薬
・The factory was not approved for sale when ABC bought it. ABC社が買ったとき、工場はまだ販売が認可されていませんでした。
*be approved for sale:販売を認可される
・This chemical is not approved for use in factories. この化学薬品は工場での使用は認可されていません。
*be approved for use:使用が認可される/認められる
・We need to talk with a court-approved mediator. 私たちは裁判所承認の調停者と話をする必要があります。
*court-approved:裁判所が承認した (形容詞として使われる)
・The project has been pre-approved by the local government. プロジェクトは地方自治体から事前承認されています。
* pre-approved:事前承認の (形容詞として使われる)
* pre:接頭辞 「前もって/あらかじめ」の意味。 例)pre-paid card 反) post
* local government:地方自治体
・My boss gave me an approving look during the meeting. 上司は打ち合わせ中に私には賛成の表情を見せました。
*an approving look:賛意を示す表情、顔つき
・The client spoke approvingly of the new product design. クライアントは新製品のデザインについて満足げに話しました。
*speak approvingly of:~を褒める
* approvingly:満足げに/賛同して (副詞)
・I strongly disapprove of this new policy. この新政策に対しては強く反対します。
*strongly disapprove of: ~に対して強く反対する
・The new design was met with disapproval from almost all our clients. 新しいデザインはほとんどすべてのクライアントからの非難に遭いました。
*meet with disapproval from: ~の非難に遭う
「断る」についてはreject, refuse, declineが思い浮かびますが、動詞を選択するときは、特に相手を受け付けないことを意味する単語であれば、個々の意味を正確に知っておく必要があります。
rejectは同じ「断る」でも「断固拒否する/棄却する」のような強いイメージがあります。My boss immediately rejected my proposal. 「上司は私の提案を直ちに拒否した」のであれば、かなり強い気持ちが見えます。refuseも「断る」ですが、一般的に広く使われます。断固たる姿勢はreject よりも軽減されます。またdeclineは同じ「断る」でも「正式な招待や申し入れを断る/辞退する」の意味になります。クライアントに飲み会に誘われて断るときには I'm sorry but I have to decline this time. と言えば「申し訳ありませんが、今回は辞退させていただきます」と言えばよいでしょう。
「断る強さ」としては reject ⇒ refuse ⇒ decline となります。
Have a nice day!
: D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は6月15日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。