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和歌山の地域施設 手作りの魅力で観光客を呼び込む

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日経トレンディネット

世界文化遺産の熊野古道に近い和歌山県田辺市のグリーンツーリズム施設「秋津野ガルテン」が、国内外から注目を集めている。

熊野古道を歩く参拝者や旅行者の拠点として利用されており、年間利用者数は約6万人に上る。

大阪、関西国際空港からJRで約2時間、霊験あらたかな和歌山の山村に、多くの人が足を運ぶ理由を聞いた。

世界遺産「熊野古道」の分岐点

紀伊半島の南西部に位置し、県の4分の1の面積を占める和歌山県田辺市。2004年に世界遺産に登録された熊野古道の主要ルートである中辺路(なかへち)は、市内を東西に横断。JR紀伊田辺駅を降り、市街地から山中へと分け入り、熊野本宮大社へとたどるコースが一般的だ。そのため、2003年に262万人だった観光客が2015年には381万人を超えた。

2016年10月には、市内の闘鶏神社と熊野古道の4箇所が世界文化遺産に追加登録された。さかのぼって2015年12月には、梅産地の「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定。ふたつの世界遺産がある街として、田辺市への注目度は高まっている。

秋津野ガルテンは、そんな観光資源に恵まれた地域にある。

運営するのは、田辺市上秋津地区の農家と住民489人が出資して設立した農業法人「株式会社秋津野」。関連会社には、農産物直売所を運営する「株式会社きてら」があり、同じく住民31人がひとり10万円を出して1999年に立ち上げた。

約1億円で古い木造校舎を購入

秋津野ガルテンは2008年11月に開業。敷地内には、地産地消のスローフードレストラン「みかん畑」と宿泊施設、菓子作り体験工房「バレンシア畑」などがある。その中心にあるのが、旧上秋津小学校の木造2階建て校舎だ。

校舎は1953年に建てられ、2006年まで利用されたが、小学校の移転計画と同時に更地にし、宅地分譲することが決まっていた。上秋津は地域資源活用策のひとつとして、それを買取り、地域で運営する方針を固め、行政を説得した。校舎と土地の購入金額は約1億円。失敗すれば、それまで築いてきた地域の絆まで失ってしまいかねない。

地域づくりでもっとも難しいのは、いかに住民の合意を得るかという点にある。そのため、上秋津では、いまから20年前、地域の全組織からなる地域づくりの団体「秋津野塾」を発足。さらに2000年から2年半をかけて、住民の声を基に10年先を見据えた地域づくりの基本計画を作成した。マスタープランは一冊の本にまとめられ、住民に配布。「秋津野塾 未来への挑戦」と題した本のなかには木造校舎再活用への思いもつづられ、秋津野ガルテン実現の大きな原動力となった。

10坪の直売所が始まり

秋津野ガルテン立ち上げのモデルとなったのが、農業法人「きてら」だ。全国各地に直売所が登場し始めたころ、地元住民の声がきっかけとなり、10坪弱のプレハブ小屋から出発した。地域初の直売所で、31人の出資者には、農家だけでなく、商売人や職人、他地域から移住してきたサラリーマンなども名を連ねた。

当初は赤字経営が続いたが、危機を救ったのが、みかんや特産品を箱詰めにして宅配便で届ける「きてらセット」。この地域では80種類ものかんきつ類を生産し、年中収穫できる。「その強みを生かしたい」という農家の声から生まれた商品は、歳暮、中元などの贈答用として人気を博し、ドル箱商品になった。毎年1500~2500個の注文があり、直売所の売上げは3年後4500万円を達成。2003年には20坪の直売所を新築し、地元女性が活躍できる加工施設も併設した。

加工施設で作った生搾りのみかんジュースが好評だったことから、2004年には31人が50万円ずつ出し合ってジュースの加工販売事業に参入。完全無添加・無調整のみかんジュースは、「俺ん家ジュース」として秋津野ガルテンでも販売。レストランでは1人1杯に限定されるほど人気がある。

創業から18年。きてらの顧客は9万人近くに上り、年商は1億5000万円に増えた。玉井社長はいう。「自分たちがつけた値段で売れて、きちんと利益も出る。いままで引き出しにしまっていたものを1個ずつ出しながら売るための仕組みを作り、ネットワーク化していったことが、いまにつながっている」

年間4万人が訪れる農家レストラン

山間の自然に溶け込む古い木造校舎と中庭の緑に心癒やされる「秋津野ガルテン」。校舎内には、机と椅子が並ぶ教室や、キュッキュッと床がきしむ廊下がそのまま残り、昭和時代にタイムスリップした感覚を味わえる。

お昼近くになるとどこからともなく客が集まりはじめるのが、農家レストラン「みかん畑」だ。バイキングスタイルのランチは、1日100人限定。平日でも12時を過ぎると満席になる。

明るく開放的な店内には、秋津野ガルテン農園部や地元農家がつくる新鮮野菜を使った料理約30品目が並ぶ。肉じゃが、筑前煮、切り干し大根、ポテトサラダ、カレーなど家庭料理のほか、手作り刺身こんにゃくや茶がゆなどの郷土料理も。調理をするのは地元の主婦たちで、素朴な味が人気だ。

地産地消と女性の活躍の場を実現した同店。当初の計画では、年間来店客数を9700人と見込んでいたが、予想をはるかに超える約4万人が訪れる。

敷地内のお菓子体験工房「バレンシア畑」では、地元のかんきつ類を使ったスイーツやジャムを販売。菓子づくりを体験できるのも好評だ。「運営はきてらに任せ、ジュースに加工しないみかんを生かす方法を考えた。加工体験では修学旅行生も訪れる。雇用にもつながり、現在、季節労働者を含め約30人が働いている」(玉井社長)。

外国人修学旅行生にも人気の農家民泊

秋津野ガルテンの年間利用者数は約6万人。7室の和室を有する「農ある宿舎」は年間約2300人が利用する。外国人観光客の宿泊は2015年の約200人から2016年は約500人に増えた。夏休み中の家族連れや熊野古道を巡る欧米人観光客のほか、最近では地域づくり研修で訪れる人も多い。

とくに外国人にとっては、日本の農業を体験できるのも魅力だ。近隣農家14戸と協力する農家民泊では、約2時間の農業体験付き。2016年はマレーシア、2017年はオーストラリアからの修学旅行生も受け入れた。また休日を利用して農作業を手伝う「農村ワーキングホリデー」にも取り組み、梅やみかんの収穫期には大学生やサラリーマンに混じって外国人も収穫や加工体験を楽しんでいるという。

17年は、江戸後期から明治にかけて使われていた「熊野早駆道」を再現。上秋津地区から世界文化遺産に追加登録された熊野古道「潮見峠」をめざすコースで、世界農業遺産の「みなべ・田辺の梅システム」も結ぶ。熊野古道の新たなルートとして、観光客の誘客につなげたいと期待する。

農業をコミュニティービジネスの視点で再生し、地域の活性化に結実させた「秋津野ガルテン」は、地域づくりが一朝一夕にはいかないことを教えてくれる。それでも全国から視察が絶えないのは、玉井社長ら中心メンバーのリーダーシップや農業法人を支える地元住民たちの思い、現場で働く主婦たちと触れ合うことで地域再生のヒントをつかみたいからだろう。

「秋津野は地域が人をつくり、人が地域をつくってきた」と玉井社長。その言葉通り、住民が参画意識を持ち、行動を起こすことが、地域づくりにいま一番求められている。

(ライター 橋長初代)

[日経トレンディネット 2017年5月8日付の記事を再構成]

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