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公的年金、受給額知るには 「定期便」でざっくり試算 公的年金 丸わかり(2)

2017/6/4

 筧家では夕食のたびに公的年金制度が話題に上ります。年金を受給できるのは原則、65歳から。ただ、その額は働き方や世帯の構成によって、かなり大きく変わってきます。自分の受給額をざっくりでも把握しておけば、老後資金づくりなど将来設計に役立ちます。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 良男の妻。ファイナンシャルプランナー資格を持ち、家計について相談業務を手掛ける。 筧良男(かけい・よしお、52=中) 機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。最近、親の相続が気になり始めた。 筧恵(かけい・めぐみ、25) 娘。旅行会社に勤める社会人3年目。自分磨きと"コスパ"にはかなりこだわっている。

 良男 年金ってだいたいどれくらいもらえるのかな。

 幸子 厚生労働省がモデル世帯の金額を公表しているわ。モデル世帯というのは、夫が会社員などを対象とした厚生年金に平均的な収入で40年間加入し、40年間専業主婦の妻がいる世帯のこと。5年に1度の財政検証があった2014年度の例でみると、モデル世帯の合計額は21.8万円だったわ。

 良男 内訳は国民共通の基礎年金が1人6.4万円、夫婦だと12.8万円だね。会社員の夫には収入に応じて変わる厚生年金が9万円乗っかるのか。

  ずっと専業主婦の女性は減っていると思う。

 幸子 そうね。財政検証のデータをもとに、単身の女性会社員についても平均的な収入で試算してみると、厚生年金は6.1万円、基礎年金と合わせて12.5万円になるわ。

  平均的な収入の男性と女性との共働き夫婦だと合計額が27.9万円にもなるのね。共働きだと、現役時代に収入が多いだけでなく、老後の安心感も増すわ。私、結婚してからもずっと、働き続けようっと。

 良男 相手はいるのか?

  いるけど教えない。

 良男 なんだって!

 幸子 あなた、落ち着いて。老後資金で特に注意が必要なのは自営業の人たち。基礎年金だけだから、40年間加入したとしても夫婦で12.8万円。老後も働き続けやすい面はあるけれど、老後資金の準備は一層、大事になるわ。

 良男 実際にも、これだけもらえるのかい?

 幸子 これはあくまで一定の前提で計算した額。総務省の家計調査によると、高齢夫婦の無職世帯の平均年金収入は14年は19万円前後。モデル世帯の年金額より少ないの。モデル世帯とは働き方が必ずしも同じじゃないし、昔は専業主婦や学生の年金加入が任意だったので、満額の基礎年金を受けられない人が多いことなども要因よ。

  自分がもらえる金額はどうすればわかるの?

 幸子 毎年送られてくる「ねんきん定期便」に年金の見込み額が記載されているわ。ただ定期便は50歳未満と50歳以上で分かれていて、ちょっと難しいのが50歳未満。記載されている見込み額は、それまでの加入実績だけに基づいた金額なの。例えば45歳で見込み額が年100万円だと「少ない」とがっかりするかもね。でも実際にはその後も加入を続ければ、基礎年金も厚生年金も増えていくの。

  どれくらい増えるかなんて、わかるのかしら?

 幸子 ざっくり計算する方法を知っておきましょう。まず基礎年金。ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんは「60歳になるまでの年数に2万円をかければいい」と教えてくれたわ。例えば今45歳で、あと15年加入するなら、2万円×15年で年に30万円増えるってこと。

  2万円の根拠は?

 幸子 基礎年金は40年間払った場合に給付が年に80万円弱。ざっくりだけど、1年多く払うと約2万円増えるの。

  厚生年金も知りたいわ。

 幸子 山中さんは「一般的な収入の人なら、60歳になるまでの年数×年収×0.0055の金額で増える」と解説してくれたわ。説明は複雑なので省くけど、普通の収入の人の場合、厚生年金の計算式からだいたいこうなるの。例えば今後15年間、平均年収500万円で働き続けると、41万円強増えるわ。さっきの基礎年金と合わせると、定期便での見込み額より年に71万円強増える計算ね。

  がんばって年収を上げれば年金も増えるのね。50歳以上は?

 幸子 定期便には現状のまま60歳になるまで加入した場合の見込み額が記載されているので、だいたいその金額だと思えばいいわ。ただし給与が下がる転職をしたり途中で退職したりすると実際の額は下がるの。

 良男 収入が変わりそうな場合、受給額を調べるには?

 幸子 日本年金機構の「ねんきんネット」というウェブサイトに基礎年金番号などを入力して登録して、今後の収入の見込みなどを入力すれば、細かな試算もできるので便利よ。

  ところで、年金ってみんな65歳からもらえるの?

 幸子 以前はもっと早い年齢から厚生年金をもらえたので、経過措置として生年月日などによっては60歳代前半の人にも年金を一部支給しているわ。ただし、原則1961年4月2日以降に生まれた男性、66年4月2日以降に生まれた女性はこうした一部支給もなく、65歳からしかもらえないの。

  私たちがもらうころには受給開始がもっと遅くなりそうだわ。

 幸子 すでに検討は始まっているわ。他の国では67歳以降に引き上げが決まっている例もあるの。今度話すけど、受給額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」の仕組みも導入されたので、現役世代の平均手取り額に対する年金収入の比率も今後、下がっていくわ。公的年金が老後の最大の支えであることは変わらないけれど、自分で備えることも一層、重要になるわね。

■給付水準、低下の見通し
 社会保険労務士 井戸美枝さん
 公的年金は老後に老齢年金がもらえるだけではなく、死亡時に遺族に支給される遺族年金、大きなけがや病気をしたときにもらえる障害年金もあります。総合的な保障があるお得な仕組みです。
 今後、現役世代の平均手取りに対する年金額の比率は低下します。それでも厚生労働省が実質経済成長率年0.4%と堅めの前提で2015年に実施した試算によると、例えば15年に45歳の人が60歳時点での平均余命まで生きると、厚生年金では自分が払った保険料の2.6倍、基礎年金では1.7倍の給付が見込まれます。同30歳でも2.3倍と1.5倍です。厚生年金では保険料の半分を事業主が、基礎年金では半分を税金で負担してくれているからです。
(聞き手は編集委員 田村正之)

[日本経済新聞夕刊2017年5月31日付]

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