友達との旅行 直前にイヤになります
著述家、湯山玲子
友だちと遊ぶのは楽しいし、声をかけてもらえてうれしいのですが、旅行など直前になると嫌で仕方なくなります。行くと楽しんで帰ってくるのですが、直前になると嫌な気持ちが募り、ドタキャンしてくれないかと思ってしまいます。せっかくなので行く前も楽しく過ごしたいのですが、どうしたらいいでしょう。(北海道・女性・30代)
◇
期待していたコトが、やってみたらつまらなかった。期待していないことを嫌々やったら超面白かった。と、人生を振り返ったときにどっちの経験が圧倒的に実になったかといえば、断然後者でした。
私は人から行動的だと言われ、実際50代半ばを過ぎてクラブでのDJプレイにオールナイト参加してもいるのですが、実は行動において直前の気持ちは「行きたくない」と落ち込むタイプ。しかしながら考えてみるとこの心持ちは、経験が編み出した「期待しなければ、現実に感謝できる」というひとつの人生訓である、と思うのです。
若い女性の定番の愚痴に「合コンに出席してもロクな男がいない」というものがあります。それは「王子様がいるかも」と期待する気持ちがあるから。しかし「どうせロクな男はいない」とブルーな気持ちで出向けば、期待していなかっただけに、その場の男性のひそやかな魅力が見えてきたりするわけです。
相談者は旅行前に特にブルーになると言っていますが、行けば楽しめてもいる。ということは、実は私と同じく「期待しなければ、現実に感謝できる」といういぶし銀の処世術をすでに実行しているのでは!?
注意しなければならないのはその嫌な気持ちの中に、「面倒くさい」という、行動にブレーキをかける呪いの言葉が含まれている点。人間、年をとるに従ってブレーキが発動しがちになって、結果引きこもり状態になり、人生を損ねてしまう可能性が大いにある。相談者は友人の誘いありきで出かけていますが、お誘いがなくても出られるような力を、心の中に蓄えた方がいいですね。
とはいえ、今原稿を書いている私も、2時間後にはサップという、サーフボードの上に立って海を楽しむアクティビティーに挑みます。海は冷たいだろうし加齢による筋力低下に加えて肥満なので、いったいそんなモノの上に立てるのか!?
というマイナス要素しか浮かんでこないので、ブルーな気持ちはマックス。でも、やる! 「やってみて、現実に落とし込まなければ、何も始まらない」。と、これは確かに生きる思想のひとつですね。
[NIKKEIプラス1 2017年5月20日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。