検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

ここ一番で襲ってくる腹痛 過敏性腸症候群の対処法

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

ストレス過多の現代ならではの病気、過敏性腸症候群。通勤中など、逃げ場のない場面に限って強烈な下痢に襲われるのがつらい病気だ。軽症の人が大半であるため、医療機関を受診していない予備軍も多いと推測されている。長年にわたり心療内科で過敏性腸症候群を診てきた東急病院心療内科医長の伊藤克人氏に、ストレスと腸の関係や、対処の仕方を具体的に聞いた。

検査で異常がないのに下痢や便秘を繰り返す

――過敏性腸症候群とは、どのような症状が出る病気なのでしょうか。

過敏性腸症候群は、下痢、便秘、腹痛など、おなかのさまざまな症状によって、日常生活に支障をきたす病気です(図1)。X線検査や内視鏡検査を行っても、消化管に明らかな異常(器質的異常)が見つからないにもかかわらず、働きの異常(機能的異常)が生じているのが特徴で、全体の8~9割を占める下痢型のほか、便秘型や、両方を繰り返す混合型もあります。

よくあるのは、通勤中の電車内で腹痛が生じ、トイレを求めて何度も途中下車せざるを得なくなるケース。通勤経路の各駅のどこにトイレがあるかを熟知する人もいるほどです。女性ホルモンが腸管の知覚や運動に影響するため、全体的に女性に多い傾向があります。年齢はさまざまで、若い人にも見られます。

――こうした症状は、何が原因で起こるのですか。

主な原因はストレスで、緊張や不安の強い人、神経質、完璧主義、過剰適応[注2]などの性格の人に多い傾向があります。職業で言えば、一定時間、行動を制限されやすい職種の人に起きやすく、例えば電車の運転士にも過敏性腸症候群の人がいます。私の経験上、重症の人は2~3割と少なく、全体の約7割は軽症です。

[注2]過剰適応:いわゆる頑張り屋のこと。頼まれた仕事を一生懸命こなすうち、知らず知らずにストレスがたまり、おなかの症状が表れて初めて頑張り過ぎていると気づくことが多い。

――なぜストレスがおなかに影響を及ぼすのでしょうか。

ストレスは脳で感知されます(図2)。例えば、会議で急に発言を促された時に、「どうしよう、何を話そうか」と考えるのが脳の表面にある大脳皮質で、大変だと思う信号が大脳辺縁系に伝わり、不安・緊張という感情が起こります。さらに神経の中枢である視床下部に伝わって交感神経と副交感神経が働き、ドキドキしたり汗が出たりします。

緊張が終わればいったんストレスが薄れますが、大変な状況が続くと、緊張信号が出しっぱなしになります。そうすると視床下部がオーバーワークになってバランスが崩れ、本来は交感神経が働く時に副交感神経が働いたりします。交感神経が緊張すると腸はあまり動かないので症状は出ませんが、副交感神経が働くと腹痛や下痢を起こします。

――軽症の人が多いと、ただの下痢だと思って放置する可能性もあるのではないでしょうか。

下痢や便秘の市販薬を使って症状がおさまれば、それに越したことはありません。市販薬で治らないなら、かかりつけ医に相談するか、ストレスの自覚があるなら心療内科にかかることをお勧めします。

大切なのは、過敏性腸症候群では、ほかの重大な病気と同じような症状が出ることです。潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんなどの初期症状は、過敏性腸症候群とほとんど変わりません。特に50歳を超えるとがんのリスクがあり、近年増えている大腸がんを見過ごさないことが大切です。たかが腹痛だと軽視せず、内視鏡検査か、せめて便潜血検査くらいは受ける必要があるでしょう。

タイプや症状によって治療薬を使い分ける

――治療にはどのような薬を使うのですか。

薬は症状に応じて使い分けます(表1)。頻度の高い下痢型に対してよく用いるのは、腸管運動調整薬のラモセトロン(商品名イリボーほか)です。腸管の運動を安定させる薬で、以前から男性の下痢型に使われていましたが、2015年から女性への使用も認められました。

便秘型に対しては、2017年3月、初めての治療薬であるリナクロチド(商品名リンゼス)が発売されたばかりです。便秘型は下痢型より患者数が少なく、まだ発売から間がないので、効果のほどは今後分かってくるだろうと思います。

――抗うつ薬を使うのに抵抗のある人もいると思います。副作用がないか、やめたら悪化しないかも心配です。

抗うつ薬は、症状が強い過敏性腸症候群に用います。便が一定量たまって便意が起きると、大腸が動くと同時におなかの痛みが生じます。便が少したまっただけで痛む人もいれば、たくさんたまってから痛くなる人もいます。少量で便意が生じるのは知覚の閾値(いきち)が低い、つまり少しの刺激で感覚が生じる状態です。抗うつ薬は、その閾値のラインを高めることで便意を感じにくくする作用があります。

抗うつ薬の副作用で便秘になることもありますが、過敏性腸症候群に対してそこまでの量は使いません。本当に必要な場合は量を調整しますし、あくまでも患者さんと相談の上で治療方針を決めていきます。

なお、過敏性腸症候群の人はおなかの痛みに過敏です。また痛くならないかと不安になるので、落ち着くまで長期にわたって薬を飲むこともあります。かといって永久に飲み続けるとは限りません。薬を徐々に減らしてやめる人も少なくないので、そこは安心してください。

「心の持ちよう」をコントロールすることが大切

――日常生活上の注意事項を教えてください。

症状を緩和する食べ物はないかとよく聞かれますが、残念ながら特にありません。バランスのとれた食事や十分な睡眠など、やはり規則正しい生活が大切です(表2)。

特に大切なのは「心構え」のようなものです。慢性的なストレスで緊張しっぱなしの人は、積極的にリラックスする時間を作って、緊張信号を抑えることが肝要です。視床下部の働きが混乱しなくなれば、おなかの症状も落ち着くようになります。

――心構えを変えるのは簡単ではありませんが、どのようにしてコントロールするのですか。

無理なことは「あるがまま」にして、放っておく感覚を身に付けると効果的です。さまざまな方法がありますが、例えば私が専門とする森田療法では、まず治療の仕組みを説明して本を読んでもらい、きちんと理解した上で日記を書いていただきます。日記を基に、日常のさまざまな体験をどう考えるかを、医師と一緒に軌道修正していきます。そこまで踏み込まなくても、森田療法の考え方を理解すれば、過敏性腸症候群による腹痛や下痢に対応できることもあります。

自分で行う自律訓練法も有効です。自律訓練法とは、リラックスした姿勢で「重い」「温かい」などの言葉を唱え、自己催眠状態を体験する方法。おなかの痛みや違和感がある感覚を「あるがまま」「感じたまま」に放っておくことで、不安や焦りで症状が悪化するのを防ぐ効果があります。1回3~5分程度でよいので、1日2~3回、自宅で続けます。

――最近、長時間残業によるストレスや自殺が問題になっています。産業医のお立場からどのように見ていますか。

私が気になるのは、残業の時間数ばかりがクローズアップされている点です。残業が少なくても、ストレスで身体症状が出る人もいます。

企業が担う安全配慮義務の中には、普段から職場の状況を把握して災害や健康障害が起こる可能性をチェックする「予見義務」があります。部下が「調子が悪い」と言えば、管理職は面談して状況を把握しなければなりません。でも、残業が月間100時間を超える人が1人いる職場には、それに準じる人がたくさんいます。全員が疲弊しているとみんな同じに見えて、本当に具合の悪い人を見過ごしてしまいます。残業が多いかどうかより、管理職が敏感に反応して予見できるかどうか。こちらのほうが大きな問題ですね。

◇  ◇  ◇

国内初、便秘型に対する治療薬「リナクロチド」とは?

2017年3月、便秘型過敏性腸症候群の治療薬、リナクロチド(商品名リンゼス)が発売された。下痢型にはすでに治療薬が存在するが、便秘型に対する国内初の薬として注目されている。

この薬は、腸粘膜の上皮細胞に発現する受容体(グアニル酸シクラーゼC〔GC-C〕)を活性化させることで、腸管内の水分分泌を促して便を軟らかくさせ、排便しやすくする。さらに、腸管の痛覚神経が過敏にならないよう抑制し、腹痛を改善する作用もあるという。従来の機能性便秘の治療薬で見られた、下痢・むかつきなどの副作用は少ないとされる。

成人の用量は1日1回0.5mgだが、0.5mg錠はなく、0.25mg錠を2錠服用する。その理由は、薬が効き過ぎると、頻度は高くないが軽度~中等度の下痢を起こす可能性があるため。おなかがゆるくなる場合は、医師と相談しながら減薬する。

伊藤克人さん
 東急病院心療内科医長/東急電鉄健康管理センター所長。1980年筑波大学医学専門学群卒業、1986年に東急病院および東急健康管理センター着任。2003年より現職。専門は心身医学、産業医学、森田療法など。内科系心療内科医としての診療活動、東急電鉄などでの産業医業務とともに、働く人のメンタルヘルス対策に関わる活動を行う。著書に『最新版 過敏性腸症候群の治し方がわかる本』(主婦と生活社)など。

(ライター 田中美香)

[日経Gooday 2017年4月28日付記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_