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働く場所も時間も自由 ユニリーバの先進働き方改革

ユニリーバ・ジャパン「WAA」(前編)

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NIKKEI STYLE

こんにちは、ジャーナリストの白河桃子です。食品・日用品の世界大手ユニリーバの日本法人、ユニリーバ・ジャパンは、2016年7月から新しい働き方をスタートさせました。働く場所と時間を自由に選択できる制度「WAA(Work from Anywhere & Anytime)」の導入と、残業時間を月45時間以内にするという目標設定です。この2つの取り組みによって、社員たちはワークライフバランスを充実させながら、生産性の向上に成功したといいます。

「人事で世界を変える」というビジョンを掲げ、WAAの実現に尽力した、ユニリーバ・ジャパンの取締役人事総務本部長の島田由香さんに、働き方改革成功までの道筋をお聞きしました。

社員の能力を最大限に発揮できる環境づくり

──もはや有名なWAAですが、具体的にどのような改革を行ったのでしょうか。

私たちが2016年7月から始めた改革の柱は二つあります。一つは、「WAA」という制度を導入し、働く場所や時間を社員が自由に選べるようにしたことです。従来通りオフィスで仕事をしてもいいですし、自宅やカフェ、図書館など自分の好きな場所で働くこともできます。

働く時間も、平日午前6時~午後9時の間で、いつ働き、いつ休憩を取るのかを自由に決められます。1カ月単位で見た時に所定労働時間が守られていればいいというルールになっています。

もう一つは、残業時間を月45時間以下にするという目標を設定したことです。それまでも残業時間は全社平均で30時間を超えることはありませんでしたが、中には、マーケティングやサプライチェーン担当の部署などで、月80時間を超える人が何人かいました。恒常的にというよりは一時的なものでしたが。

それでもあえて「45時間以下」と定めたのは、目標値を設けることで自分の働き方を意識し、どうすればより効率的に、時間内で働けるのかを考えてもらいたいと思ったからです。

──柔軟に働けるようにしても、目標値を設けることは大事なのですね。

大切です。私が強調したいのは、この改革は問題解決のためにスタートしたわけではないということです。そもそもは、「すべての社員がよりいきいきと働き、健康で、それぞれのライフスタイルを継続して楽しみながら豊かな人生を送る」というビジョンから始まっているんです。

社員たちは皆、年齢、家族構成、目標、ビジョン、バックグラウンドも全部違います。それぞれが、結婚や出産、介護などといったライフステージの中で、どの段階でも継続して楽しく働くためにはどうしたらいいのでしょうか。

ポイントは、豊かに生きるということです。私はいつも社員に、「仕事をするために生きているのではない」と伝えています。仕事を含めた時間をどのように過ごすのか。ここに意識を向けてほしいのです。

私たちのビジョンをより正確に伝えるために、視覚的なイメージを作りました。「インスピレーションの自転車」と呼んでいるものです。

自転車には、車輪が二つあります。一つは、ワークスタイルの輪。育児休業制度や介護休業制度、WAAといった会社の制度が含まれます。もう一つは、ワークマインドセットの輪。制度をどのように使うのか、何のためにこれをやるのかという考え方ですね。実は、制度よりもこのマインドセットの方がはるかに重要です。

──例えば、時間をどう使いたいのか、ということですね。

そうです。いくら改革をしようとして制度だけ導入しても、活用されなければ意味がありません。その背景に何があるのかを理解し、制度を活用していくマインドセットがなければ、無用の長物なのです。

──二つの車輪は、そういうことを示しているのですね。なぜ、このイメージはオートバイではなく自転車なのですか。

自分の足で運転するからです。最初はよろめくかもしれませんが、だんだん慣れてくると、好きな方向に好きなスピードで行くことができます。向かう方向は、自分の成長。これが会社の成長につながるのです。

会社を強くするためには、より働きがいのある会社をつくることが必要です。働きやすさではなく、「働きがい」です。社員に働きがいを持ってもらうには、社員の能力を最大化するしかありません。

そのために会社としてできることは、働き方の選択肢の提供です。働く場所や時間の柔軟性を高めて、自分で自由に決められるようにする。そのために「WAA」の導入に踏み切りました。

導入時は、ネガティブな反応もたくさんあった

──それだけ自由にしてしまうと、見ていないところでサボるんじゃないかという心配はありませんでしたか。

導入当初、同じ質問をたくさん受けました(笑)。でも、「別にいいじゃない?」 って答えていましたね。結果さえ出してくれればいいからです。そもそも、「あの人はサボっている」と決めること自体、一方的ですよね。例えば、デスクに向かって目をつむっている人がいたとする。一見、昼寝をしているように見えるかもしれないけど、本人はマインドフルネス(瞑想、めいそう)をしている最中かもしれないじゃないですか。

人に「サボってる」と言う前に、自分はどうなのか?と思ってもらうことも大事かなと。人のことより自分のことです。

このほか、みんなが出社しなくなったらどうするんですか、チームワークができなくなってしまったらどうするんですか、という質問もありました。

──テレワークを始めるとき、必ずその2つの質問は出ますよね。コミュニケーションの問題です。

なぜ、まだ起こっていないことを心配して議論するのでしょうか。やってみなければ、どういう結果になるか分かりません。やってみて問題が起これば、その時に考えればいいじゃない、と思うんです。

結果的には、何の問題もありませんでした。生産性を落とすことなく、社員からはポジティブな意見がたくさん出ています。

──例えば、上司が「おい」って言った時に、部下がそこにいないと不安があるという話もありますよね。コミュニケーションがスムーズにいかないと、逆に労働時間が長くなるんじゃないかという不安も耳にします。

実際、「ちょっとこれを聞きたいな」と思った時に相手がいないと困るとか、仕事がやりにくいんじゃないかという声も出ていました。でも、ずっと近くにいたからといって、それだけでうまくコミュニケーションをとって、いいチームにできるかといえば、そうでもないんですよね。

WAAを導入する前は、今までにない取り組みでしたから、やはり不安や心配の声は多かったです。でも、今までと違うことをしない限り、新しい結果は得られません。

──カルビーでは、無制限テレワークを導入する前に、席をダーツで決めることで、近くに顔が見えない状況に慣れることからスタートしたといいます。こうして土壌をつくったことで、割と抵抗がなかったといわれていますよね。

つまり、テレワークなどの新しい働き方は、「慣れ」の問題だということです。

人間は生物学的に考えると、自分の安全を守ることを最も大事にします。分かっていることや知っていることは安全だと思っているから、心地いいですよね。逆に未知の場所に行くときは、不安に感じるのは当たり前です。

残業時間を「45時間以下」にという目標を定めたことにも、すごく反応があったんですよ。とうとうユニリーバもブラック企業になるのか、と(笑)。

──長時間労働をしないということなのに、なぜそんな声が出たんですか(笑)。

「45時間までしか残業代を払いませんという意味だ」と受け取った人がいたんですね。実際は、そんなこと、誰も言っていないんです。未知の制度に対して不安が先に増大してしまうから、こんな意見が出るんですよね。

会社としては、社員からの質問には一つ一つ答えて対話を繰り返し、理解してもらえるように努めました。

案ずるよりやってしまう方が早い

──WAAが始まった時、社員の皆さんはちゃんと制度を利用しましたか? 制度があっても、慣れないと結局利用せず、みんな会社に来てしまって何も変わらなかったという話も結構あるんです。例えば、マイクロソフトでテレワークを導入した時、結局なかなか利用されなかったそうです。そんな中で東日本大震災が起こり、当時の樋口泰行社長が2週間の出社停止宣言をして、「世界のどこでもいいから仕事をしてください」と表明したんです。こうして図らずも社員全員がテレワークを経験して、何も問題がないことが分かり、一気にテレワークを受け入れる風土が広がったという話があります。このように、本当に食わず嫌いをする会社が多いんですよね。実際にやってみると、「いい制度だ」と気付いてやるようになるんですけど。その点は、何か工夫されましたか。

WAAは「絶対に社外で働きなさい」というものではありません。会社で働きたい人は、従来通り会社に来てもいい。家やカフェ、図書館で働きたい人は、そうしてもいい。つまり、選択肢を広げているだけなんです。そのことは社員にもしっかり伝えています。

WAAについては、導入前から、絶対にいい制度だとリーダーシップチームとして確信していました。実際に、対外発表した直後からSNS(交流サイト)や新聞で「画期的な制度だ」「こういう企業がもっと増えるといい」という反響をたくさんいただきました。あまりにも大きな反響に驚いたと同時に、「やっぱりね」って思ったんですよね。みんな、これまで当たり前だとされていた働き方はおかしいと思っていたんじゃないかという確信を得ました。

そこで私は、当社だけではなく、この新しい働き方を世の中に伝えていこうと思いました。定期的に説明会を開いたり、会社を変えたいと思っている人を集めてディスカッションする「Team WAA!」を結成するなどといった活動を続けています。

来てくださった人たちと意識やマインドセットを地道に共有しながら、新しい働き方を導入する日本企業が増えていくといいなと思っています。少しずつですけどね。(24日公開予定の後編ではWAA導入後の反応や成果、成功した5つの要因などを伺います)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)、「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)、「進化する男子アイドル」(ヨシモトブックス)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

(ライター 森脇早絵)

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