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企業のテクノロジー対応力 20年後の自分を左右 ダイバーシティ進化論(村上由美子)

2017/5/20 日本経済新聞 朝刊

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 就職活動シーズンを迎え、リクルートスーツ姿の若者を街でよく見かけるようになった。人手不足で労働需給は逼迫しており、今年の就活は売り手市場だ。就職氷河期に卒業した先輩たちを思えば、今の就活生は運がいいのかもしれない。しかし急速に進むテクノロジー改革が、仕事の定義を根本的に変える兆候を見せている状況下での職業選択は、ある意味、より困難な決断を課されているともいえよう。

 2020年までに日本では既存の仕事の約7%が自動化により消滅し、さらに約20%の仕事の内容がテクノロジーにより大幅に変更されると、経済協力開発機構(OECD)は予測している。米国でも今後20年間で既存の職業の約半分がテクノロジーに代替されるといわれている。就活中の学生が40歳になる頃には、今ある仕事の半分が機械にバトンタッチされていることになる。やりたいと思って就いた仕事が消滅してしまうリスクも勘案しながら、就職という人生の重要な決断を迫られる。

 私が米国の投資銀行に就職したのは90年代。機関投資家に対し投資提言をする見返りに株の売買をしてもらうビジネスモデルは、テクノロジーの台頭で大きく変化した。インターネットの普及により情報の同時拡散が可能になり、取引の自動化も進み、営業やトレーダーなどの「人間による介入」の必要性が低下した。

 朗報は、テクノロジーは人間の仕事を奪うと同時に新たなビジネスチャンスももたらすこと。ビッグデータやAI(人工知能)を駆使した新たな金融商品の創出、ブロックチェーンを利用した画期的なビジネスモデルの構築など金融業界の成長分野は数多い。社員が切磋琢磨(せっさたくま)しあいながら継続的にスキルアップできる職場を選べば、どんなに技術が進化しても、人間としての付加価値を生み続けることができるはずだ。

 全産業でテクノロジー革命は起きている。社員のスキルアップに注力しているか、外部環境の変化に機敏に対応できているか、能力主義を導入しているか。これらは企業の成長を促進する条件であると同時に、これから就職する若者が20年後もビジネスの最先端で活躍できているかを左右する重要な要素でもある。そして必ずしも有名企業が、このような企業文化を持ち合わせているわけではないことに留意が必要だ。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2017年5月15日付]

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