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転ばぬ先の不動産学

中古マンションのリノベ 壁・配管・階高をチェック 不動産コンサルタント 田中歩

2017/5/17

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 世の中にはたくさんの「リノベーション済みマンション(改修済みの中古マンション)」が売り出されています。一方で「立地や建物の設備のグレード、質感は良いが、内装が自分の好みではない」「業者に必要以上に作り込まれたものは嫌」「リノベーション済みの物件は、後々のトラブルが怖い」といった声も多く聞かれるようになってきました。それならば全く手が加えられていない中古マンションを見つけ、自分の好きなようにリノベーションする。最近はこう考える人が増えています。

 マンションをリノベーションする際、注意が必要なのが構造上の制限です。問題なのは、こうした制限をあまり知らない不動産業者が多いこと。せっかく気に入ったマンションを見つけても、思うようにリノベーションできないことが後になって判明することも多々あるのです。

 そこで、リノベーションするなら知っておきたい3つのポイントを紹介します。

■その1:構造壁の位置を知る

 マンションには手を加えられる部分と、そうでない部分があります。専有部分は手を加えられますが、共用部分はマンションの所有者の共有物なので勝手に手を加えることはできません。

 共用部分とは構造壁(コンクリートの壁)、玄関扉、窓、サッシ、バルコニーなどです。間取りを大きく変えたいからといって、構造壁を解体したり、穴を開けたりするのはご法度。ただ構造壁以外の壁は解体することができるので、構造壁の位置が把握できてさえいれば、どの程度、自由に間取りを変えられるかがつかめます。

■その2:配管ルートを確認

 マンションの配管は、共用部分にある「たて配管」と専有部分にある「横引き管」に分かれます。横引き管が老朽化して水漏れなどを起こすと、階下に迷惑をかけることになるので、中古マンションを購入する際は注意したい部分の一つです。

 「床上配管」は専有部分の床上に横引き管があるので、自由に交換・修繕できます。そのうえ床上でたて配管とつながっているので、メンテナンスや交換も容易。ただ配管が露出しており、見た目が気になる人がいるかもしれません。

 1990年代後半までに建築されたマンションだと、フローリングとコンクリート床との間、つまり床下部分に配管を固定してはわせる方式が主流です。専有部分の床下に配管があるので、こちらも自由に交換・修繕ができ、配管も露出していないので見た目もすっきりしますが、工事の際にはフローリングを解体せざるを得ず、コストはかさみます。

 もっと古いマンションになると、コンクリート床の中に配管が埋め込まれているものや、コンクリート床を貫通して階下の天井に配管をはわせている「スラブ貫通配管」もあります。これらは、どこまで自分で自由に手を入れられるかの判断が難しく、メンテナンスが困難です。

 一方、最近のマンションはメンテナンスがしやすい「サヤ管ヘッダー工法」が主流。サヤ状の樹脂管に配管を通している同工法では、配管を交換する際、サヤの中に入っている内管を引き抜き、新しい配管を入れ替えるだけで済むので、フローリングを壊さなくても配管工事ができるものもあります。また、もともとのフローリングをはがし、コンクリートの床面から一定の空間を確保して新しくフローリングを設置。その空間に新たに配管を通すこともできますが、床を上げた分、天井高が低くなるというデメリットがあります。

 つまり、リノベーションする際には将来のメンテナンスも視野に考える必要があるわけです。

■その3:階高は290センチ以上が望ましい

 部屋のコンクリート床面から上の階のコンクリート床面までの高さを「階高(かいだか)」と呼びます。「天井高」という言葉はよく聞くと思いますが、これは室内のフローリング面から天井面までの内側の高さです。

 古いマンションでは、コンクリート床に直接カーペットを貼る「直床(じかゆか)」、コンクリート天井に直接壁紙を貼る「直天井」が多かったのですが、最近では間取りの変更がしやすい「二重天井」「二重床」が多くなっています。二重天井ならば照明の配線が自由にでき、二重床であれば水回りの配置の自由度が高まります。

 しかし、二重にすると天井高は低くなります。一般に、二重天井は約8センチ、二重床は約12センチの厚みが必要なので、これだけで約20センチも天井高に影響を及ぼします。最近のマンションだと、コンクリート床の厚みが約20センチ。二重天井、二重床、コンクリート床のそれぞれの厚みを合計すると、約40センチです。逆算すると、天井高を250センチ以上にしたい場合の階高は最低290センチ必要、ということになります。

 階高が290センチ以上となると、2000年以前のマンションだと物件の数は少なく、リビングの一部を直天井にして高さを保つなどの工夫をする人が多いようです。

■竣工図を見て現地見学を

 では構造壁の位置や配管ルート、階高をどうやって調べればよいのでしょうか。まずは不動産業者に確認します。スムーズに答えてもらえない場合は、竣工図を見せてもらい、そのうえで現地を見学するとよいでしょう。最近では、リノベーションに詳しいホームインスペクター(住宅診断士)、設計士、工務店などの専門家が物件の見学に同行してくれるサービスもありますので、利用してみるのも一案です。

田中歩
 
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

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