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老娼婦伝説、学生らに語り継ぐ 横浜大空襲の日に重ね 五大路子さん「横浜ローザ」を5月に上演

2017/5/15

「横浜ローザ」の一場面

 横浜に実在した老娼婦をモデルにした独り芝居を演じ、戦争の理不尽さを伝え続ける女優の五大路子さん(64)。毎年、終戦記念日の前後に開催していた劇を、今年は5月29日の横浜大空襲の日をはさんで上演する。上演に合わせて小中学生を対象に横浜大空襲の被災体験をつづった本の朗読劇も続ける。「メリーさん」と呼ばれた娼婦は戦争の理不尽さを背負うかのように無言で街頭に立ち続けた。「その姿を伝え続けるために、世代を超えた交流を広げたい」。五大さんは大学や高校に呼びかけて特別講座を開いてもらい、戦争体験を語り継ぐ活動を続けている。

 「女優という私にしかできないことをやる。やらなくちゃ」。5月1日、東京・三田の慶応大学のキャンパスで、学生や講師ら17人が五大さんの話に聞き入った。講義に先立ち、昨年、上演20年を記念したニューヨーク公演についてのDVDを鑑賞。米兵に暴行される描写もあるストーリー。戦勝国での上演はバッシングも覚悟していたが、予想以上の反響やスタンディングオベーションまで起きたことへの驚きなどを語った。

戦争に翻弄された老女の劇について学生らに説明する(慶応大学三田キャンパス)

 参加者には事前に五大さんがこの老娼婦について取材したことを書いた「白い顔の伝説を求めて」を読んでもらい、この劇を20年以上にわたって演じ続ける意味を学生らに説明した。メリーさんはしわくちゃの顔に白いおしろいを塗り、白装束で横浜の馬車道や伊勢佐木町の街頭に立ち続けた。時にすれ違う人に蔑まれたその人生に五大さんは戦争の理不尽さを感じ、関係者の取材を続けて上演にたどり着いた。

 支援者や生活の糧を売春に頼らざるを得なかった別の老女らからも聞き取り取材を行った。横浜ローザは「メリーさん」をモデルにしているが、五大さんはそうした戦争に翻弄された状況を生き抜いた人たちの象徴として演じる。上演に先立ち横浜国立大学や立教大学でも同様の特別講座を開催してもらい、戦争の悲惨さを若い世代に伝える活動を続ける。

小学生を前に横浜大空襲の被災体験の朗読劇を演じる五大路子さん(横浜市磯子区)

 4月28日には横浜市の磯子区民文化センター杉田劇場で洋光台第二小学校の児童約240人を前に、横浜大空襲の被害体験をつづった「真昼の夕焼け」(筧槙二著)の朗読劇を開催。昨年の鴨居中学校(横浜市緑区)に続く試みで、劇を鑑賞した小学4~6年生の児童からは「生で体験を聞き、死んでいった怖さがわかりました。だからこそ今を一生懸命いきなくちゃと思いました」といった率直な感想も出てきたという。

 慶応大学での講座を開いた粂川麻里生教授(54、ドイツ文学)は「時代に翻弄されたメリーさんは社会のキズのようなもの。平和な社会が続き、こうしたキズが見えにくくなっている。学生たちには日本が見失ったものを感じてもらいたい」。

 講座に参加したゼミの女子学生(20)はメリーさんの存在について、「土地のにおい」と表現。メリーさんが10年ほど前にこの世を去ったことを知り「その存在がなくなることに対して寂しさを感じた。『戦争』がそこいるのと変わらないような存在のメリーさん。作品を通じて等身大の戦争を感じてみたい」と話した。

 5月29日の横浜大空襲の日をはさんで行われる「『横浜ローザ』赤い靴の娼婦の伝説」の独り芝居は26~30日、横浜赤レンガ倉庫1号館で行われる。米国のシリア空爆や北朝鮮のミサイル発射など、国際情勢に緊張が続いている。「何気ない普通の生活が徐々に奪われていく恐ろしさを劇中で伝えたい。現代の若い世代にも、その恐ろしさが別の意味で響いてくる時代になっているのかもしれません」。五大さんはそう考えている。

 独り芝居は全席指定で一般前売り5000円、学生前売り3000円など。問い合わせは横浜夢座事務局(電話045・661・0623)。

(和佐徹哉)

五大路子さん
 1952年横浜市生まれ。NHKの朝の連続テレビ小説「いちばん星」で主役デビュー。「横浜ローザ」をはじめとして横浜ゆかりの人物やできごとを題材にした演劇公演を続ける。その功績で横浜文化賞や神奈川文化賞などを受賞している。

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