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『捨てられる銀行』第2弾 大手町で瞬速の売れ行き 紀伊国屋書店大手町ビル店

2017/5/12

『捨てられる銀行2 非産運用』が売り切れ、前著の『捨てられる銀行』が目立つように並べられていた

 ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。大型連休明けのせいか、新刊が店頭をにぎわすわけでもなく、フィンテック関連の法務を扱う実務書やM&A(買収・合併)関連の手続きに関する本など、目の前の業務に直結する本が満遍なく売れているという。そんな中、ものすごい勢いで売れていたのは、ベストセラー『捨てられる銀行』を世に問うた経済記者による、資産運用をテーマにした続編だった。

■初回入荷は2週間余で完売

『捨てられる銀行2 非産運用』が新書でトップの販売数に

 その本は橋本卓典『捨てられる銀行2 非産運用』(講談社現代新書)。訪れた週初の月曜日、店頭から本が消えていた。この日の段階で残っていたのは3冊。それが夕方までには売れてしまったという。「かなり大量に入荷したのに、2週間あまりで本がなくなるのは異例の売れ行き。ゴールデンウイークもはさんだのに」と、ビジネス書を担当する西山崇之さんも驚く。ベストセラーを紹介する棚でも2~5位の本が並んでいるのに1位のところに本はない。新書コーナーの平台も、冒頭の写真のように前著の『捨てられる銀行』を並べて埋めてあった。「次の入荷は週明けになりそう」と言い、一番売れる本がない状態で1週間過ごさなくてはならないようだ。

 著者の橋本氏は共同通信経済部の記者。2015年から2度目の金融庁担当になり、金融庁の森信親長官が進める金融行政改革をつぶさに取材してきた。前著が地方銀行の新たなビジネスモデル改革に焦点を当てたとすれば、本書のテーマは資産運用改革だ。15年に金融庁が掲げた「金融行政方針」の2つの最重要テーマをこの2冊でそれぞれ扱う構成になっている。

■広がらぬ資産運用、その改革がテーマ

 資産運用も資産運用改革も素人にはなかなか理解しにくい分野だ。そこに著者は「顧客本位という価値観を軸に資産運用を考える」という補助線を引き、これまでの資産運用業界の実情に迫り、金融庁が打ち出す改革の方向性を位置づけていく。見えてくるのは真に顧客本位の業務運営ができていないため、資産運用がなかなか広がらず、国民の資産形成という大きな目的が達成できていない日本の資産運用の姿だ。

 冒頭にグラフが掲げられている。1995年から2015年までの日英米の家計金融資産の推移のグラフで、日本が1.47倍なのに対して、英国は2.27倍、米国は3.11倍になっている。この違いが何から生まれたのか、どうすれば改革できるのか。その疑問に迫っていく筆致は記者らしく論に傾かず、銀行窓口のセラーの女性の苦悩に始まり、改革を主導する森長官らの行動やエピソードに焦点を当てながら語られる。運用会社や販売会社、銀行などに詳しくない人にもわかりやすい書きぶりだ。多くの金融機関の人でもことの本質をつかまえ切れていない様子も描かれ、金融の街、大手町で売れる理由もよくわかる。

■第1作も上位に

 それでは先週のベストセラーを見ておこう。今回はこの『捨てられる銀行2 非産運用』が堂々の1位に入った新書のランキングを紹介する。

(1)捨てられる銀行2 非産運用橋本卓典著(講談社現代新書)
(2)あの会社はこうして潰れた藤森徹著(日経プレミアシリーズ)
(3)捨てられる銀行橋本卓典著(講談社現代新書)
(4)応仁の乱呉座勇一著(中公新書)
(5)人工知能と経済の未来井上智洋著(文春新書)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2017年5月1日~5月7日)

 経済・ビジネス書がよく売れる書店だけに、全ジャンル対象の新書ランキングでも上位5冊のうち、4冊を経済・ビジネス関連が占める。そのうち1位と3位が『捨てられる銀行』だ。ほぼ1年前に刊行された第1作も続編につられて大きく販売を伸ばした。2位は帝国データバンク東京支社情報部長が執筆した日経電子版の人気コラムを元にまとめた1冊。信用調査マンの眼から見た企業倒産の実態が個別の事例ごとに生々しく描かれる。4位にロングセラーになりつつある歴史の本が入り、5位は人工知能(AI)と経済学の関係を研究する著者が労働の未来、社会保障の未来に焦点を当てて書いた経済未来図が入った。こちらの刊行も2016年7月だから、息が長い売れ筋だ。

(水柿武志)

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