働き方・学び方

スタンフォード 最強の授業

「想定以上」の結果を得る交渉術 スタンフォード流 スタンフォード大学経営大学院 ニール教授に聞く(1)

2017/5/14

ニール教授の授業 (C)Elena Zhukova

 世界でもトップクラスの教授陣を誇るビジネススクールの米スタンフォード大学経営大学院。この連載では、その教授たちが今何を考え、どんな教育を実践しているのか、インタビューシリーズでお届けする。今回から交渉術を教えるマーガレット・ニール教授が登場する。

 私たち日本人は、とかく交渉を避けたがる。相手を怒らせると面倒だし、欲張りな人だという目でも見られたくない。ところが、それはあまりにももったいないことだとニール教授は言う。デパートでも会社でも家庭でも交渉を使えば、「もっと」いろいろなことが手に入るのだと。スタンフォード流最強の交渉術をニール教授に伝授してもらう。(聞き手は作家・コンサルタントの佐藤智恵氏)

米国で出版された著書「Getting (More of) What You Want」

■想定以上の結果を手に入れる

佐藤:「Getting (More of) What You Want」(想定以上の結果を手に入れる)がまもなく日本で出版されます。交渉術の本といえば、「ハーバード流交渉術」が有名ですが、交渉によって「想定以上の結果を手に入れる」というのはどういう意味でしょうか。

ニール:一般的に交渉術は、商取引の場で使われるものと考えられていますが、実際にはもっと多くの場で活用できるものです。

 想定以上の結果を手に入れるとは、より多くのお金を手に入れるということだけにとどまりません。文字通り、よりよい結果を得られるという意味です。「この人ともっとよい人間関係を築きたい」「上司からもっとよい評価を得たい」「社内でもっと大きな権力を得たい」。こんなときに交渉術をうまく使えば、「もっと」を実現することができるのです。

佐藤:「ハーバード流交渉術」では、相手と自分が「イエス(はい)」と合意に至るための交渉術が書かれていますが、ニール教授の本では、合意するだけではなくて、想定以上の結果を手にいれる方法が書かれています。そこが大きな違いですね。

ニール:ロジャー・フィッシャーとウィリアム・ユーリーは、1980年代に「ハーバード流交渉術」を出版しました。当時、交渉=戦闘という考え方が一般的でしたが、彼らは「交渉は必ずしも戦いではない」という新たな見方を提示し、多くの読者に支持されました。

 ところが、この本には1つ問題がありました。彼らが「交渉の最終目標は合意に至ることだ」と強調してしまったことです。私から見ればこれは間違った考え方です。交渉の目標は、合意に至ることではなく、お互いにとって良いディールを結ぶことなのです。合意することを最優先にして、相手の要求にすべてイエスと言っていたら、最悪の結果になることもあります。あるいは、合意しない=契約しない、というのが結果的には最善策という場合もあるのです。

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