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定年楽園への扉

気が付けば大きな出費に 退職後の趣味にはご用心 経済コラムニスト 大江英樹

2017/5/18

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 会社を定年退職した後、再雇用に応じず、一切働かないで趣味を楽しみながら暮らすことを夢見る人は多いと思います。私自身も50歳になるまでは、60歳で定年を迎えたら絶対に働きたくないと思っていました。

 少なくとも60歳まで勤め上げたわけですから、その後の人生はどう送ろうがその人の自由です。働くもよし、働かないもよし。しかしながら、公的年金の受給は今後65歳からになりますので、優雅な暮らしができる人は少ないはずです。最近では定年後も再雇用で働く人が多く、65歳までの間はかなりの人は何らかの仕事をすると思われます。

 働いているうちにぜひ考えてほしいことがあります。退職後の趣味の楽しみ方です。早めに考えておかないと手遅れになるかもしれないからです。

 「老後破産」とか「老後貧乏」という言葉をよく目にしますが、私は長く働いてきた普通のサラリーマンであれば、そんなに簡単に老後破産することはないといつもいっています。自営業の人にはない「厚生年金」があるうえに、会社によっては企業年金や退職金もありますから、生活するだけであれば、それほど老後資金を心配する必要はありません(詳しくは2015年5月28日付コラム「サラリーマンは『老後破産』しない」を参照)。

■退職金を手にすると冷静さを欠く

 ただ、これをやったら老後破産のリスクが一挙に増大する、ということがあります。それが「退職金で投資を始めること」と「お金のかかる趣味にはまってしまうこと」です。

 退職金というめったに手にすることのない大金が入ると、気持ちが高揚してしまいます。その結果、投資に多額のお金をつぎ込むということがあります。冷静に判断して投資すれば問題ないのですが、金融機関にいわれるままに何も考えないで投資すると、おうおうにして損するリスクが高まります。これはとても危なっかしい行動です。

 それと同じぐらい危ないのが趣味にお金を使い過ぎることです。こちらは投資と違って、相場の暴落で一挙にお金を失うようなリスクではないものの、知らないうちにお金を注ぎ込み、気が付けばお金が相当減っていたということになりがちです。

 例えば、よくあるのは若い頃に好きだったけれどお金がなかったために買えなかったモノを退職後にあれもこれもと買ってしまうということです。高価な楽器を買ったり、外国製のバイクを買ったりするのがその一例です。それでも一過性の買い物なら、さほど問題はないでしょう。

 でも、継続性がある場合は問題です。何しろ退職者には時間がたっぷりあります。現役時代であればいくら遊びたくても仕事があるのでおのずと時間は限られますが、退職して何も仕事をしていない場合にはいくらでも遊ぶことができます。お金のかかる趣味についついはまってしまい、気が付けば大きな出費に、ということが起こり得るのです。例えば、外国製バイクを買うのはいいとしても、年中ツーリングに出かけていたのではお金はいくらあっても足りないということになりかねません。

■計画的な使い方をあらかじめ考える

これを避けるためには、

(1)お金のかかる趣味とかからない趣味をバランスよく持つこと

(2)趣味に関する年間の予算を考えておくこと――が大切です。

 また退職者の特権を利用することも一案です。現役時代は仕事が忙しくて時間がありませんから、「時間をお金で買う」ことによって趣味を楽しむという一面がありました。現役時代は旅行もゴールデンウイークやお盆といった繁忙期にしか休みを取れず、割高な料金で旅に出ることが多かったかもしれません。

 ところが、定年後は時間があるので、旅行を繁忙期からずらすことでお得な旅行に行くことができます。つまり、「お金を時間で買う」とでもいいましょうか。私自身も土日や連休には絶対に旅行に行かないようにしています。それだけで宿泊費を繁忙期より2~3割は安くあげることができます。

 こうしたことは現役時代から考えておくべきだと思います。前述したとおり、退職金が手に入ると気が大きくなってしまい、冷静な判断ができなくなる可能性があるからです。時間があるということはリスクにもなるのだという意識を持っておきましょう。趣味で老後資金を食いつぶさないためにも計画的な使い方が重要です。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は6月1日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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