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AIがシンクロ演技を判定したら 技術点は人より正確 対談・スポーツとAIの未来を探る(上)

スポーツイノベイターズOnline

2017/6/12

シンクロナイズドスイミングの演技判定にもAIが導入されるかもしれない (リオ五輪での日本チームの演技)

 今、産業界で最もホットなテーマの一つが人工知能(AI)だ。その波はスポーツ界にも押し寄せている。競技の現場でAIはどこまで活用できるのか、選手やコーチはAIとどう付き合うべきなのか。異なる専門分野を持つスポーツ界の3人が話し合った。トップアスリートの強化拠点である日本スポーツ振興センター(JSC)ハイパフォーマンスセンターの久木留毅氏、ソウル五輪のシンクロナイズドスイミング・デュエットで銅メダルを獲得し、現在はメンタルトレーニング上級指導士として活動する田中ウルヴェ京氏、そして慶応大学SDM(システムデザイン・マネジメント)研究科准教授の神武直彦氏だ。対談の模様を2回にわたって伝える。(構成は日経BP社デジタル編集部の内田泰)

慶応大学SDM研究科准教授・JSCハイパフォーマンス戦略部アドバイザーの神武直彦氏

 神武 AIの開発は、テクノロジー、そしてコンピューターを駆使して人間と同等の知能を実現する取り組みと言えます。例えば、素晴らしいコーチがいて、その人の代わりをするAIができれば多くの選手が優れた指導を受けられます。また、競技の審判に使えばミスジャッジを防げるかもしれません。

 まず、スポーツ界でのAIの活用の現状について話をしていきたいと思います。久木留さん、JSCが競技力向上のための研究・支援を目的として開設したハイパフォーマンスセンターでは、既にAIを活用しているのですか。

 久木留 具体的にAIをこう使うという計画は、まだありません。しかし、AIを活用するには、まずビッグデータの収集が必要で、そこはかなり進んでいます。ハイパフォーマンスセンターの売りは、五輪に出場するようなトップアスリートの拠点であることです。JSCの国立スポーツ科学センター(JISS)は2001年から選手のデータを蓄積していて、現在はセンサーを活用して各種のデータを取っています。

 トップアスリートのビッグデータにアプローチしたいという、大学や企業はたくさんあります。一緒に組んだパートナーが開発したAIがトレーニングやコンディショニングの情報を提供する、というような提案は実際に来ています。

 まだ具体的にお話できるものはないですが、AIの導入は、国内だけでなく海外も含めて外部のパートナーと連携して行うことになるでしょう。AIの専門家を多く抱える東京大学や大阪大学とは、連携協定を結んでいます。

日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンス戦略部長・専修大学教授の久木留毅氏

 私はハイパフォーマンスセンターを、スポーツ界における「知の集積基地」だと言っています。トップアスリート、トップレベルのコーチがいて、アスリートの膨大なデータがある。20年以降は、ここで得た知見をスポーツ界だけでなく、地域や学校、病院にも還元できるようにしたいと考えています。

 神武 スポーツ界に広く目を向けてみると、AIの活用はどの程度進んでいるのでしょうか。例えば、個々のジュニア選手のデータを集めて将来的に最も伸びそうな選手を見いだす、タレント発掘なども使えると思います。

 久木留 タレント発掘に関しては、まだAIを活用し切れていないと思います。遺伝子情報の取得・分析などを含めてAIの活用はこれからです。一方で審判においては一部の競技で導入が本格的に検討されています。例えば16年に国際体操連盟の会長に就任した渡辺守成氏は、「AIを判定に導入して体操競技をより高いレベルにする」と公約しています。

■審査員が違反見落とすことも

 神武 このようにAIが競技の判定に導入されると、技の採点基準などが変わってきますよね。

 久木留 体操の場合は、五輪の開催周期に合わせて4年ごとに採点規則が改定されるので、そのタイミングでうまくAIを導入するということだと思います。

 ただし、「今年の世界選手権からいきなり人間の審判がいなくなる」というような話ではなく、部分的にAIが判定するという使い方になるでしょう。「ミスをなくす」のが大きな目的です。

 神武 AIを導入しやすいのは、競泳や陸上など対戦相手がおらず、自分たちのパフォーマンスを最大化すればいい競技だと思います。田中さん、シンクロはいかがでしょうか。

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