渡部建、MCに引っ張りだこ 活躍の場が広がった理由
グルメや高校野球など、数々の得意分野を武器に、バラエティー界で独自の地位を築いているアンジャッシュの渡部建。近年は、『ヒルナンデス!』(日テレ系)や『Love music』(フジ系)など、MC業にも進出。もともとは実力派コント芸人のイメージが強かったが、何がきっかけで進行役を任されることが増えたのか。
「最初からMCを目指していたわけではないんです。児嶋(一哉)とコンビでお笑いを始めて、『夢で逢えたら』とか『ダウンタウンのごっつええ感じ』のような、何組かでユニットを組んで、コントや企画をやることが夢で。でも、10年ぐらい前にコンビでの仕事がほとんどなくなって、なりふり構っていられないぐらい苦しかったときに、自分たちの思い描く理想のメインストリームに乗ることは『どうやら無理だぞ』と。それならもう割り切って、オファーがあれば個人ででもいいから、できることをお互いに一生懸命やろうと話し合いました。その時僕は、『お笑いの才能で同世代と戦うのはやめよう。その代わり、芸人がやっていないことで攻めてみよう』と決めたんです。
僕はキャラも立っていないし、丸腰で出ていって瞬発力でトークしたりもできないタイプ。だったら、みなさんの興味のありそうな情報を持っていたほうが、重宝がられるんじゃないかなと。2007年に、たぶん芸人は誰もやっていないラジオの帯の生放送番組をやり始めたのを皮切りに、夜景鑑賞士の資格を取ったり、恋愛心理学を勉強したり。特にグルメは、ニーズもライバルも多い。中途半端は嫌だから、年間500軒食べ歩くようになりました。その延長線上で、徐々にMCのオファーが来るようになったんです」
事の重大さがじわじわと
今や、「芸人で多趣味&情報通」といえば渡部の代名詞に。現在のテレビ界の流れとも合致し、大きな強みとなった。そしてこの4月には、寺脇康文、谷原章介に続き、大型情報番組『王様のブランチ』(TBS系)の司会者に抜てき。20年以上続く番組であり、芸人からMCが選ばれたのは初となる。
「(起用を聞いたときは)信じられませんでしたね。ドッキリかなと。最初は『えーっ『ブランチ』? やったー! もちろんやらせてください』ぐらいな感覚だったんですけど、冷静に考えたら、俳優の寺脇さんと谷原さん、お2人しかやっていないぞと。しかももう22年目なんだって知って、事の重大さがじわじわ分かってきたというか。
レギュラーのお話をいただくときって、毎回すごくうれしいんですよ。その後に少しずつ不安や責任が押し寄せてくるんですが、その波が一番大きかったですね。『FNS歌謡祭』のときもだいぶプレッシャーでしたけど、今回は毎週4時間半の生放送。とんでもないことが起きたなという感じです。
方向転換が生きて、『ブランチ』のような仕事につながったことに、自分でも驚いています。芸人としてコントはずっとやっていこうという児嶋との共通認識はありますが、お役に立てるのであれば、勉強しながらいろいろなことを発信していけたらうれしいです」
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2017年5月号の記事を再構成]
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