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「REIT」か「大家さん」か 利回りなど丸ごと比較 QUICK資産運用研究所 清家武

2017/5/10

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 低金利が続く中で、マンションやアパート経営に関心のある投資家は多い。ただ、マンションやアパートの大家さんになる場合、入居者探しや家賃の集金、建物の修繕などの管理・運営(外部に委託する場合は費用)が必要になる。手間もお金もかかる大家さんになるより、簡便に不動産の家賃収入を得たいという投資家には「REIT」が向いている。

■金融緩和策がJ-REITの価格を押し上げ

 REIT(リート)とは「Real Estate Investment Trust」の略で、不動産投資信託のこと。多くの投資家の資金を集めて、オフィスビルや商業施設、住宅などの不動産で運用し、そこから生じる家賃収入などの収益を分配する金融商品だ。国内の証券取引所で上場する不動産投信は「J-REIT」と呼ばれている。

 J-REITは2001年9月に第1号が上場し、J-REIT市場全体の時価総額は約12兆円と米国REITに次ぐ世界第2位の市場規模に成長した。J-REIT相場全体の値動きを示す「QUICK REITインデックス(配当込み)」の価格は大幅に上昇し、01年9月からの15年半で3.7倍になった。

 07年から08年にかけて、米国のサブプライムローン問題、リーマン・ショックの影響を受けてJ-REITが大きく売られる場面もあったが、「アベノミクス」による日銀の大胆な金融緩和への取り組みにより、J-REITは大きく買われた(図表1参照)。

 金融緩和はREITにとってプラス要因だ。金融緩和で余剰資金が不動産市場に流入し、REITの投資対象である不動産価格の上昇要因になる。また、REITは金融機関からの借り入れや債券の発行によって資金を調達し、不動産を取得するため、金利が低下すると支払利息の負担が減少する。

 金融緩和で債券の利回りが低下することで、REITの配当利回りの高さが投資家の注目を集めやすいという面もある。現状、日銀は金融緩和策を維持しているが、今後は政策転換のタイミングが焦点となる。

■REITは少額で大規模物件に間接投資できる

 それでは「REIT投資」と「アパート・マンション経営の大家さん」のメリット、デメリットを比較してみよう(図表2参照)。投資対象の面では、小規模物件も多いアパート・マンション経営に比べると、J-REITはオフィスビルやショッピングセンターなど大規模な不動産物件に投資するものが多い。個人投資家にとって縁遠い高額な不動産にも間接的に投資できる。

 必要となる資金や流動性の面では、J-REITは株式と同じように証券取引所で売買ができ、数十万円程度で買える銘柄が多く流動性も高い。一方、アパート・マンション経営は数千万円から数億円の資金が必要であり流動性も低い。

 物件の維持管理の面では、アパート・マンション経営は大家さん自身が行うか、費用を払って外部に委託する必要がある。例えば、空室になると賃料が入ってこないため、入居者を探さなければならない。時間が経過するにつれ、建物は老朽化するため、修繕も必要だ。その点、J-REITは投資法人を運営する専門家が物件を管理するため手間がかからない。ただし、アパート・マンション経営にはJ-REITにはないメリットもある。昨今の土地オーナーによる賃貸アパート建設ブームに見られるように、相続税などの節税効果が期待できる点だ。

 利回りの面では、J-REITの配当利回りは平均3.8%程度だ。アパート・マンションの投資利回りは東京23区では5~6%程度の物件が多い。もっとも、新築・中古や立地、構造など物件によって条件は様々であり、マンション投資はすべて好条件とは限らない。

 ちなみに、J-REITの配当利回りは東証1部上場銘柄の配当利回り(平均2%程度)よりは高い。REITは不動産投資に限定した特別な投資法人であり、収益の90%以上を投資家に配当する。しかも、法人税がかからないので、一般の事業会社より配当が高い傾向がある(時価総額が大きいJ-REITの利回りは図表3参照)。

■レバレッジを効かせることもできる

 不動産を購入する際はすべて自己資金で賄うのではなく、借り入れなどの負債によって調達した資金も充てることで、自己資金に対する利回りを高くすることができる。これを「レバレッジ(てこ)効果」という。アパート・マンションに投資する場合、銀行などでローンを組むことにより、レバレッジを効かせることが可能だ。

 J-REITの場合も信用取引によりレバレッジを効かせることができる。株式を頻繁に売買する投資家が使う決済期限が6カ月の制度信用でなく、返済期限がない「無期限信用」を使うことにより長期的な信用取引が可能になる。ただし、期限がない分、金利は制度信用よりも高めになる。信用取引はレバレッジが効いているだけに、相場が予想と逆の方向に動いたときは損失が膨らむので注意が必要だ。

■不動産市況の悪化は共通リスク

 REITとアパート・マンション経営の共通のリスクは、不動産市況の悪化だ。具体的には、不動産物件の価格下落、賃料相場の下落、空室リスクの上昇などが挙げられる。また、金利上昇もリスク要因だ。不動産物件購入で使った借入金の支払金利の負担が増加する恐れがある。

 また、REITやアパートが保有する不動産物件は、地震や火災など予測不可能な災害によって毀損する可能性もある。

 冒頭で述べたように、アパート・マンション経営の大家さんは手間も資金もかかるため、お金と時間に余裕がある人に向いている。それ以外の方はREITで手軽に投資というのが一般的ではないだろうか。それぞれの状況に応じて投資を検討するといいだろう。

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