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世界と日本の文学の今、どう映る 沼野充義氏に聞く

異なる文明 翻訳がつなぐ

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NIKKEI STYLE

国内外の作家らと対話する連続講義に取り組んできたスラブ文学者の沼野充義氏。古今東西の作品を縦横に論じてきた同氏の目に、世界と日本の文学の今はどう映っているのか聞いた。

 ◇   ◇   ◇

講義は2009年に始めた。世界の視点から文学を考えたいと思い、リービ英雄さんや小野正嗣さん、綿矢りささんといった作家だけでなく、文学研究者や翻訳家も招いて様々な議論をした。

そのさなかに東日本大震災が起きた。文学作品の見方を大きく変える出来事だった。震災によって新たな力を得た作品と、その反対の作品があった。

ポーランドの詩人シンボルスカに「眺めとの別れ」という詩がある。〈またやってきたからといって/春を恨んだりはしない〉。この一節は、夫を亡くした女性が、これまでと変わらず巡ってきた春を迎える気持ちを書いたものだ。個人的な喪失感を書いている詩だが、私たちはこれを震災と結びつけ、心動かされる。

個別の状況を超えて普遍的に人間を揺さぶるのが優れた文学作品だ。ドストエフスキーは今も日本で読まれているが、この作家が考えた「神は存在するのか」という主題は我々には理解しがたい。むしろ極限状態に置かれた人間の姿や児童虐待、テロを描いているからこそ私たちに迫ってくる。

 価値観が多様化し、「世界文学」のイメージが大きく変わってきた。

かつて世界文学のカノン(正典)とされた作品は、西欧中心主義・男性中心主義・ネーション(国家)中心主義にもとづいて選ばれていた。だが今や状況は大きく変わった。これまで抑圧されてきた人々、下に見られてきた人々の言葉が書き表されるようになったからだ。古い"傑作目録"だけで世界を理解することは難しくなっている。

同語反復的だが、「世界文学とは何かと考えることが世界文学である」というのが今の状況だ。文学の道を極めた偉い先生が「これを読めば大事なことは大体わかるから読んでおきなさい」というものをありがたがるのではなく、読み手一人ひとりが自分にとって切実な作品を手にしながら、自分だけの地図を作っていくことが大切だと思う。

世界文学について考える際に大きな問題となるのが翻訳だ。翻訳という営為の本質は、容易にはわかり合えない二つの文明圏をつなぐこと。「うまいか下手か」という技術の話ではない。

仮にテロリストと呼ばれる人間の気持ちを我々が理解するためには、翻訳が必要だ。だがそれがないままに「あいつらは敵」というプロパガンダばかりが声高に叫ばれ、世界各地で血が流れている。「文明の衝突」とは翻訳の拒否、あるいは巨大な誤訳によって生じる事態なのではないか。

連続講義をまとめたシリーズ(全5巻、光文社刊)の最終巻を「つまり、読書は冒険だ」と題した。

文学作品を読むとは、冒険のような具体的な「経験」だと私は考えている。読み終えて、内容をすっかり忘れてしまったとしても、その経験は必ず心に痕跡を残す。そして読む前と読んだ後とで、自分の中の何かが確かに変わっている。

文学は旅に似ている。目的地へ急ぐより、ゆっくり行く方が面白い。だから文学作品もできるだけゆっくり読んで、細部を楽しむべきだ。およそ功利的ではなく、この現代において全く反時代的なことだけれども。

(聞き手=文化部 干場達矢)

[日本経済新聞夕刊2017年5月2日付]

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