ライフコラム

立川談笑、らくご「虎の穴」

ペット禁止マンションのケンタウロス 人として扱う 立川吉笑

2017/5/7

PIXTA

 毎週日曜更新、談笑一門でのまくら投げ。今回のお題は「犬・猫、ペット」ということで、笑二からの遠投を受け取って、今週も次の師匠まで、無事にまくらを届けたい。

 多くの子供たちが1度は両親におねだりするように、僕も小学生の頃「ペットを飼いたい」と親に言ったことがある。そして多くの子供たちがそう言われるように、僕も両親から「ダメだ」と言われた。

 何度お願いしてもいつもダメで、結果的には小学2年生から5年生まで3年間毎日、朝・昼・晩に必ずお願いしたけど、ダメだと言われ続けた。

 クリスマスになるとサンタさんに、「プレゼントはいらないのでトナカイを1頭だけ置いて帰ってください」と手紙を出したけど、朝起きるとトナカイが玄関先にいることはなく、枕元に発売されたばかりのゲームソフトやマンガが置かれているだけだった。

高座に上がる立川吉笑さん(東京都武蔵野市)

 当時の僕は、いつもは少しおねだりしたら大抵のものは買ってくれる優しい両親がなぜ、ペットだけは買ってくれないのか不思議でならなかったし、その姿勢に憤りを覚えてすらいたけど、今から思えば理由は明白だ。家のマンションはペット禁止のマンションだったのだ。

 それでも僕が3年間毎日、朝・昼・晩にペットを買ってとお願いし続けるものだから、ついに両親が折れてくれて、僕にケンタウロスを買ってくれた。

 なぜケンタウロスかと言うと、ペット禁止のマンションだけど「ケンタウロスだったらペット扱いじゃなくて同居人扱いにできるのではないか」と、父ちゃんが考えたからだ。

 父ちゃんの会社の部長さんが飼っていたケンタウロスが子供を生んだらしく、何頭か産まれたうちの1頭を我が家に譲ってくださることになったのだ。

 初めて父ちゃんがケンタウロスを連れて帰ってきてくれた日のことは、今でも鮮明に思い出せる。

 まだ生まれて3日目だったから、今から思うとものすごく小さかった。それでもケンタウロスの赤ちゃんは、馬の赤ちゃんがそうであるように生まれてすぐに歩けるようになるから、家に入るとすぐに家中をトコトコ歩き回った。

 ただ、人間の赤ちゃんがそうであるようにケンタウロスの赤ちゃんは3カ月ほどたたないと首が座らないから、家にやってきた当初はケンタウロスから目が離せなかった。首をガクンガクンさせながら歩き回るから、いつか首がもげるんじゃないかとヒヤヒヤした。

 父ちゃんに何度教わっても「ケンタウロス」じゃなく「ケンタロウス」と呼んでしまう僕は、そのたびに家族から笑われた。それが嫌で、ある時から「ケンタ」と呼ぶようにしたら、いつしか皆もケンタと呼ぶようになり、それが名前になった。

 ケンタウロスは馬と同じような早さで成長するから、家にきて1年がたったころには、気付けばケンタは僕と同じくらいの大きさになっていた。

 僕は毎日ケンタを散歩に連れていった。最初はケンタにまたがって町内を回ろうと思ったけど、ケンタの馬的な部分にフォーカスしている瞬間を管理人さんに見つかると、ペットを飼っていると見なされて怒られるから、あくまでもケンタの人的な部分にフォーカスするように心がけていた。だから散歩も手をつないで町内を歩き回るようにしていた。

ライフコラム