バッグを着る? 両手を解放する新発想ファッション
宮田理江のおしゃれレッスン
バッグはファッションの大事なパーツですが、最近は「持たないバッグ」が脚光を浴びています。着脱できるバッグを服に外付けしたり、ベルトにミニバッグを組み込んだりと、目新しい「着るバッグ」が登場。女性の両手を荷物から解き放つハンズフリーのおしゃれは気持ちまで軽やかにしてくれそうです。
男性は意外に知らないことですが、女性用の服はポケットのないデザインが一般的です。男性用はジャケットやパンツにポケットが付いています。でも、女性用ウエアは物をしまうスペースが省かれていて、バッグに収めるか、手でつかむ以外に選択肢がなかったのです。オフィス街のランチどきに、女性が小ぶりのバッグを提げたり、財布を素手で持っていたりするのは、それが理由です。
ところが、近ごろはスマートフォンをはじめ、ポイントカードや入館証など常に持ち歩くものが増える傾向にあり、収納スペースを服に求めるニーズが強まってきました。春から夏にかけてはハンカチで汗をふいたり、日傘をさしたりする機会も多くなり、ますます両手を荷物から解放したくなります。
そういった気分にこたえるかのように、大ぶりのポケットを備えた服や、まるで着るように斜め掛けできるミニバッグが世界の主要ブランドから相次いで提案されています。両手が空くと、腕を振って伸びやかな気持ちで歩けるのに加え、ビッグポケットやミニバッグは着こなしのアクセントにもなってくれます。
MARNI(マルニ)
ミラノモードの有力ブランド「MARNI(マルニ)」は、服と一体化したバッグをウエストのあたりにあしらいました。トレンチコートをコンパクトにアレンジしたようなジャケットでは、両胸に付けた蓋付きポケットのほかに、小型ノートパソコンが入りそうなバッグを特大ポケットのような見栄えで腰の近くに張り出させています。朗らかなふくらみを帯びたバッグはジャケットと同じ布地で仕立ててあるので、服の一部に見えつつも、意外感の高いボリュームが装いを立体的に演出。しかもこのバッグは取り外しが利くので、着ていくシーンに合わせて着脱をチョイスできます。
上下を同じ生地でそろえた「セットアップ」にも、ウエストに張り出しバッグをオン。左右でバッグのサイズが異なるので、着姿にユーモラスなリズムが生まれています。過剰なまでにボリューミーなふくらみ具合だから、ウエストがほっそり映る効果も期待できます。
バッグをベルトに取り付けるアレンジもサプライズな印象をもたらします。かつて流行したカジュアルなウエストバッグとは違って、こちらは人工レザーの質感がシックなたたずまい。レッド主体のたおやかなワンピースに黒のベルトとバッグが大人っぽいムードを寄り添わせています。
[画像協力]MARNI http://www.marni.com/jp
N°21(ヌメロ ヴェントゥーノ)
ミラノコレクションに参加している「N°21(ヌメロ ヴェントゥーノ)」はトレンドを引っ張る提案力の高さで人気があります。17年春夏シーズン向けのコレクションでは小ぶりのバッグをベルトに組み込むという斬新なアイデアを披露しました。
レースをふんだんに配したエレガントなワンピースに、あえてスポーティーな表情のベルトを巻いています。そのベルトに金具でつなぐようにして、スモールサイズのバッグをオン。バッグを取り付けたポジションは真正面から少し右側にずらした位置で動きを出しました。白いレース生地とブルー系のつやめいたバッグが互いを引き立て合っています。
まばゆいゴールドのバッグは着姿にゴージャス感を漂わせます。ポシェットのような小型バッグは肩から斜め掛けにするのが普通ですが、子どもっぽく見えがちなところが難点。でも、このバッグはウエストに添えるうえ、リッチな風合いだから、幼く見えません。装いにスパイスを加えるつもりでアクセサリーのように使えます。
[画像協力]N°21 http://www.numeroventuno.com/
バッグやポケットを服に融け合わせる工夫はほかの形でも相次いでいます。メンズのサファリジャケットのようにたくさんの蓋付き張り出しポケットを用意したアウターや、軍服の弾薬ポケットを思わせる大小さまざまな収納スペースを配したワンピースなどが現れました。ミニバッグをネックレスのように首から垂らす工夫は、バッグのアクセサリー化を象徴するかのよう。いずれもおしゃれを陽気に楽しむポジティブ気分の表れ。服が薄着になっていく夏に向かって、実用性も高い「着るバッグ」はファンを増やしていきそうです。
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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